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とある勇者パーティーの剣士の話  作者: 邪眼
第一章、黒い森の少女
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冗談だ

 早朝、森の木々の間には朝日が差し込み歯の先にちょこんと乗っている露がキラキラと輝く。


 トラヴィスはそんな森を眺め、ため息をついた。


 以前ならばこんな朝には精霊達が楽しそうに遊び、飛び回っていたものだが、ここ最近はとんと姿を見なくなってしまっていた。

 気配は時々感じられるし、精霊魔法の類も問題なく使えているので近くに居るには居るのだろうが、何処かに隠れてしまっているらしくとにかく姿が見えない。


 精霊達が姿を見せないのはきっと連日の事件に怯えているからだろう。

 一刻も早く犯人を捕まえて元のように精霊達がのびのびと飛び回る森を取り戻したいものだとつくづく思う。


 昔、一部の例外を除いた人間には精霊は見えないらしいと言う話を聞いたことがあったが、エルフであるトラヴィスにとっては精霊の姿が見えないという事はとてつもない違和感を感じさせることだった。


「おっ、トラヴィス。今日もお早いお目覚めで」

「……何の用だ」


 ……この男(確かウィルコックスとか言う名前だったはず)はどうしてこうも馴れ馴れしいのか。

 おまけに常日頃から気配を消しているのか気を張り詰めている時でもないと接近に気付けないのでいきなり声をかけられると非常に心臓に悪い。


「いや、別に用事はねえなぁ。

 強いていうならたまたま見つけたから?」


 ニヤッと笑ってそう言うとウィンはトラヴィスの眺めていた方を見てわずかに目を細める。


「大方精霊が隠れちまったもんだから落ち着かない、ってとこか」

「……見えるのか?」

「いや、うーん、見えるというか何というか。

 ほら、俺って身体強化とか自己再生は出来ても普通の魔法は使えないだろう?

 それってつまり体内魔力の操作は出来ても体外に出た魔力を操る事が出来ないって訳で、感知なんかも当然苦手なわけだ」

「貴様に出来ることなんかは知らん……。

 ん? いや、そうか、……確かお前は魂に後天的な欠損があったな。

 つまり元々魔術師としての才はあったが魂になんらかの傷を負った際に体外魔力とのつながりを断たれ、そのせいで精霊との交感能力はあっても精霊の姿が見えない、と。

 こんな所か?」

「……流石エルフ、魔法関連については理解が早くて助かる」

「……他の事に関する物分かりは悪いと言いたいのか貴様」

「冗談だって、怒るなよ。

 そういう所が頭固いって言われるんだぞ」

「冗談だ」

「お、おう」


 それからしばらく沈黙が続き、重たい空気に耐えかねたトラヴィスが口を開こうとしたが、先に言葉を発したのはウィンだった。


「精霊って魂無かったよな?」


 唐突な質問に、何を言っているのだこいつはと少し面食らったトラヴィスだったが、しばらく考えてからそれに応える。


「……ああ、基本的には無いな。

 上位精霊は擬魂と呼ばれる魂の様なものを持っているからしっかりした意思を持っていたりするが、下位精霊となると赤児のように曖昧な自我のようなものがあるだけだ。

 ……強い意志を持ったまま死んだ者の魂が精霊と混ざり合った、なんて話もあるから精霊というものは魂に近しい存在なのだろうというのが通説だな」


 トラヴィスが言い終えると、ウィンはただ一言。


「……やっぱソレだよなぁ」


 とだけ呟いた。


「……何がソレなんだ?」

「最後の話だ。 強い意志を持ったまま死んだ者の魂が精霊と混ざり合うってヤツ」

「まさか!?……彼女がそうだと?」

「……そりゃ死んだはずのヤツがアンデットでもない癖に普通にウロついてる上に木の精霊の力借りた魔法が効かないとなっちゃそれ位しか思いつかないしよ。

 木の精霊の力で木の精霊に攻撃なんて出来るわけねえもんな。

 ……まあ、これは単なる憶測っつうか勘みたいなもんだから取り敢えず頭の片隅にでも置いといてくれればいいさ」


 カラカラとウィンは笑うと、じゃあなとだけ言い残してその場から立ち去ったが、トラヴィスの頭の中は今のウィンの言葉に埋め尽くされていたためにトラヴィスはそれに気が付かず、その場に立ち尽くしたままぐるぐると考え込んでいた。



◆◇◆◇◆



「魂について知りたい?」


 ベットに女の子座りをして自分の背丈ほどもありそうな杖を整備していたらしいアリスが顔を上げて怪訝な顔をする。


「そう、だって前にアリス、魂の事をもっとよく知ればもっと魔力をうまく使えるようになる、みたいな事言ってたじゃない?

 私はまだ身体も小さいし剣もまともに振り回せないような状態なんだもの、足手まといにならないようにせめて魔法をもっと上手く使えるようにならないといけないと思って……」


 真剣な双眸にじっと見つめられては堪らない。

 元々乗り気でないという訳でもなく、そもそも魔法を教える事も仕事の内であるアリスはあっという間に杖を亜空間にしまい込むとその豊かな赤毛を手早く一つにまとめてお団子にし、どこから出したのか伊達眼鏡を付けるとそれをクイっと指先で持ち上げながらこう言った。


「そこまで言うなら仕方がないわね!!

 不肖ながらこのアリス、全身全霊を持って叩き込んであげますから覚悟はいいかしら?」

「えっ、いやそこまで、っていうか叩き込むの!?」


 ナタリーはアリスの危ないスイッチを入れてまったことに今更ながら気がつくと顔を引きつらせた。


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