王太子ネブガドネザルの更なる要求
「…バビロンの現人口は10万弱、これを増やし商業都市化を図るには、アッシリア地方を安定化する必要があります」
「上出来だ、実は私もそう思っていたのだ」
「つまり、国力を強めねばならない」
「つまり、アッシリア国都ニネヴェを陥とすと?」
群臣らが騒ぎ始める。
「そこで、この異邦人を司令官に、対埃戦争を始める!」
「!?」
その場にいた全員が驚愕した。私にも聞かされていない。大国エジプトの領土シリアを奪う作戦なのだから、有能な将軍に任せるものだと皆が思っていた。
「私は将軍ではありませんが」
そう言うと王太子は、
「知っておる。秘書から聞いたぞ。都市に関しても全くの素人なのだろう?」
そんなこと話した記憶はないのだが。
「それなのに都市計画家どもを上回るとは。その才を見込んで、今度は司令官に任じると言っておるのだ」
つまり独学で習得しろということか。しかしこの計画の半分は時空転移セットにあった万能電子辞書、残り半分はバビロニア一般常識に通じたニトクリスのお陰。1mmも私は働いていない。
「ファラオ・ネコウからシリアをもぎ取る作戦を立てるのだ!」
王はそんなこと気にも留めていない模様。正直言ってかなりマズイ。
するとニトクリスが笑顔で言った。
「私も補佐しますから、ね!」
グッドポーズがこの時代にあるのかと驚く以上に、胃が痛くなる案件であった。
兵法なんてこの時代にあると思えないのですが。
そんなことを考えていると、ニトクリスが何か重たそうなものを持ってきて言った。
「ニネヴェの図書館からです」
どうやらスパイがアッシュール=バニパルの図書館からパクって来たものらしい。というかそれでいいのかアッシリア。
「兵法書を用意しました」
現代で学ぶことのなかった兵法をまさか古代で学ぶことになろうとは。しかし到底1人で読み切れる量ではなかった。
「手伝ってくれる?」
すぐに音を上げた私は、ニトクリスに助けを求めた。ニトクリスは快諾してくれた。