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夢の、書店。  作者: 夢乃
幼馴染の女の子
9/22

九.

 中学生の頃もだったが、高校生にもなると色恋話が耳に入ってくる。単なる噂話や自慢話、誰それが可愛いの格好良いの、いろいろ。けれど、ぼくはそういう会話の外にいた。そもそも、小学生の頃から人付き合いを苦手にしてしまった僕には、親しく話をする女の子はおろか、男子の友人すらほとんどいない。幼稚園の頃には仲の良かった(と僕が思い込んでいた)友達──その中には女の子も混じっていた──とも、中学を卒業してからほとんど逢わなくなった。

 高校でも、挨拶以外の会話を交わす友人は二、三人しかいない。彼らにしても“友人”と言えるほどの関係を結べているかと言えばそうは思えず、高校生活で友人が一人もいないのは流石に寂しいと思った僕の心が、無理にでも彼らを友人と思い込もうとしているだけだろう。


 休み時間のほとんどを、自分の席で読書に費やしている僕は、他人にも異性にも興味の無い奴と思われたことだろう。女子の話題を振ってくる級友は誰もいなかった。そもそも、普通の会話すらほとんど無かったが。


 けれど、僕が異性に興味がないかと言えばそんなことはあるはずもなく、寧ろ人一倍女の子に興味を持っていた。男子たちのそういう会話に耳を(そばだ)て、女子たちの姿を気付かれないように目で追った。僕にとって、ほとんどの女の子は可愛らしく魅力的だった。ストライクゾーンが広い、と言えば良いのだろうか。学校でも噂になるような美少女はもちろんのこと、大人しくて翳のある一見陰気に見える女の子も、その容姿を見るだけで心が騒めいた。

 特別、好きな女の子がいたわけではないし、心が騒いだからといって恋愛感情を持ったわけでもない。けれど、だからこそ、どんな女の子も等しく魅力的に映ったのだと思う。


 教室の隅で本を開き、しかし耳はしっかりと級友たちの色恋話に耳を傾けて、男子には羨望の眼差しを、女子には情愛の視線を送る、そんな日が続いた。

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