十七.
大学院へ進んだ僕の元に、中学の同窓会の通知が届いた。実家から転送されたものだ。友達の少ない僕は、小中学生時代の同級生の誰にも、大学に進学した時の引越先を連絡していなかったから、実家に届いたようだ。
・・・いや、一人だけ、ここの住所を知っている。幼馴染の夢ちゃん。彼女には、ここの住所を教えた、気がする。いつ、どこで教えたのか、記憶は定かではないが。もしかすると、夢の中のできごとだったかもしれない。
それにしても、僕のような、ほとんど空気だった生徒にまでこんな通知が届くとは思ってもいなかった。どうしようかな。小中学生時代には、あまり良い思い出がない。かと言って、悪い思い出があるわけでもない。学校の中で空気のようだった僕にとっては、外の世界が空気のようだった。
・・・いや、自分に嘘を吐くのはやめよう。僕も、周りの同級生たちの輪に入って他愛の無い話にうつつを抜かしたかった。けれど、小学校に上がる前から他人との関わり合い方が判らなくなり、他人との距離をとってしまうようになった僕は、歳を重ねるごとにますます他人との関わり方が判らなくなり、結果、空気のような存在に成り下がってしまっただけだ。
小中学生時代の旧友の集まる同窓会に参加したところで、今更過去の関係が変わることも無いだろう。そもそも、僕を覚えている同級生がどれだけいるかも怪しいものだ。それは僕の方も同じだから、覚えられていなかったとしてもとやかく言うつもりは微塵もないが。
それにしても、思い返すとなんとつまらない小学生時代、中学生時代を送ってきたのだろう。それだけではない。高校生時代、大学生時代も大して変わらない。本を読んできただけのような気がする。それはそれで充実していたとも言えるのだが、少しくらいは人脈を広げることに費やせば良かった。少なくとも、周りの人間構成が激変する高校進学と大学進学の時に、そのチャンスはあった。けれど、結局僕は、その機会を活かせなかった。他人に煙たがれることを怖れて最初の一歩すら踏み込めずにいた。
就職せずに大学院に進んだのも、新しい人間集団の中で人間関係を作れずに落胆することを怖れて、それを先延ばししたに過ぎない。要するに、社会に出ることを拒み、そこから逃げただけだ。これだから人間関係が上手くいかないんだよな。それは解っている、解っているが、ずっと付き合ってきたこの性格を、早々変えられるものではない。先延ばしにしたこの二年で、少しでも変えておこうと、そう思っている。逃げた先でそれができるかは怪しいが。
それより今は、同窓会だった。出席したところで、会場の隅で一人酒を呑んだり肴を突ついたりしているだけになりそうな気がする。ここはやはり、欠席しようかな。




