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一花繚乱  作者: 渡里あずま


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選別【一】

 かつて、信長(実際は濃が赴いた)が謁見した十三代将軍・足利義輝が三好三人衆と松永久秀により殺された。

 これは三好が義輝に利用された背景があるので、一概にどちらが悪いと言う話ではなく。義輝の従弟である義栄が将軍となった為、一応は収まったかに見えた。

 ……幽閉されていた義輝の弟・義昭が逃げ出さなければ。

 そして出家していた彼が還俗し、己を将軍とするよう朝倉義景を頼らなければ。



 濃が生まれ、信長に嫁ぐまで育った稲葉山城。

 城主であった父・道三を殺され、義母兄・義龍に奪われたこの城を取り戻してくれたのは、傍らにいる信長だ。


「すまないな」

「いえ……いいえ」


 かつての我が家を眺めていた濃は、そんな信長の言葉に振り向き、慌てて首を横に振った。

 美濃攻略の為、信長は小牧山に城まで建ててくれた。こちらから感謝こそすれ、謝られることなど何もない。

 しかし、濃の言葉に信長は城を見上げたまま言葉を続けた。


「この城を、わしのものにする。名を変え、ここから天下に打って出る」

「……信長」


 すまない、ともう一度言った信長に濃は微笑んで見せた。


「奇妙丸みたいに、それこそ奇妙な名をつけなければ良いですよ?」

「お濃!?」

「天下取りは、父の望みでもありましたから」


 悪戯っぽい台詞に、思わず声を荒げた信長だったが――いつものように、笑って背中を押してくれる濃に口を閉じ、その端をくっと上げた。


「で、あるか」


 ……その後、稲葉山城は地名と共に『岐阜城』と名を改める。

 その名についてはいくつか由来があるが、信長自身が名づけたのではなく、僧侶の間での呼び名を採用したという説がある。



 信長も背は高く、一見すると男性だが――それでも他国の者とは彼女ではなく、濃が『信長』として対峙している。

 だが、ここで思いがけない相手が岐阜にやって来た。


「明智十兵衛光秀でございます」


 現在は朝倉義景に仕えている、正室・お濃の従兄。

 そんな彼が――いや、むしろその伝手があるからこそ光秀は義昭からの使者を任せられ、こうして『信長』の元へとやって来たのである。

 光秀の、いや、義昭からの申し出を濃は、いや『信長』は断った。

 しかし一旦、退出した光秀を「お濃が会いたがっている」と言う理由で非公式に招いた――我ながらややこしいと言うか、面倒臭いと思うが仕方ない。


「まあ、あえてつき合ってくれた十兵衛どのに感謝ですね」

「……お前が『お濃』だと、気づかれていると?」

「周りの目を考えて、顔には出さずにいてくれましたけどね」


 光秀が知っているのは、女として育てられていた濃である。

 ……だが、濃が男だと言うこともまた知っているし。それに、何より。


「十兵衛どのは、父に目をかけられていましたから」

「道三どのに?」

「ええ。賢く、武芸にも優れ……私が真の女子おなごなら、婿にしたかったとまで言っていました」

「まあ、会った頃のぬしとならお似合いだったろうな」


 率直な感想に、濃は微苦笑した。

 どうやら信長は、こっそり光秀を盗み見していたらしい。七歳年上の従兄は確かに目元が涼しく、月代の映える美丈夫だ――けれど、あの従兄は。


「父亡き後、義兄に攻められて城を落とされなくても……十兵衛どのはいずれ、父の元を離れていたでしょう」

「……お濃?」

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