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第9話・これからもずっと

「翼君はどうなんですか?」

「って言われても……」

「……急には無理ですよね」


 美羽は何かを(さと)ったかのような感じだった。


「ごめん。少し時間もらえるかな?」

「それじゃ今晩いつもの公園で待って居ますね」

「分かった」


 僕はモヤモヤした気持ちで家に帰った。

 なんだろうこの気持ち……

 初めての気持ちのはずなのになぜか懐かしい気持ちになる。

 ベッドの上で横になって居ると頭の中に何か懐かしい記憶が蘇ってきた。

 小学生の頃も中学生の頃も僕は毎年夏休み前に美羽と出会ってそのまま夏休みを過ごしていたんだ。

 でも最後の日に何かがあったはずだ。

 厳重に仕舞われている記憶を何とか開けようとしたがその鍵が見つからない。

 美羽と出会って僕は一体……

 気が付いたら寝てしまっていたみたいだ。

 窓からは月明かりが差し込んでいた。


「(確か毎年この月明かりを見ながら……そうだ!)」


 記憶の鍵が見つかり一気に記憶が解放された。

 この月明かりの下で毎年言っていたんだ。

 すぐにいつもの公園へ自転車を走らせた。

 公園に着き奥にあるベンチに行くとすでに美羽が待って居た。


「美羽、お待たせ」

「私もちょうどさっき来たところです。……それで答え聞かせてもらいますか?」

「答えは去年と同じだよ」

「それって……」

「美羽はもう知っているはず。僕が毎年言っていた言葉を」

「……はい、知って……います」


 美羽の眼からは涙が零れた。

 僕が美羽のことを忘れてしまっていたときも美羽は僕の事を覚えて居てくれたわけだ。

 そう考えると美羽はどれだけ辛かったのだろう。

 再会する度に僕は美羽を好きになっていたんだ。

 すると流した涙が突然美羽の胸元で光り桃色の光に包まれた羽根が出てきた。


「羽根……?」

「はい、これが最後の羽根〝恋〟です。この羽根は特別で心の底から好きにならないとなので仮の好きな気持ちはダメなんです」

「仮ってことは誰でもいいってことじゃないのか」

「はい。そして相手も同じく心の底から好きにならないとダメなんです。そして相手にこの条件を知られてもダメなんです」

「だから最初羽根を集めるとき何も言わなかったのか」

「黙っていてごめんなさい」

「しょうがないよ。でもこれで羽根が全部集まったってことか」

「はい、この7枚の羽根を向こうの世界に送れば完了です。報告もあるのでまた数日こっちの世界から離れますけど」

「あっという間だったな。そうだ何かご褒美的な物はない?」

「ご褒美ですか?」

「何でもいいよ。例えば飲み物を買ってくれるとか――――!」


 突然美羽は唇にキスをしてきた。

 とても柔らかくて不思議な気分だ。


「天使からのご褒美ですっ」


 美羽は頬を赤くして言った。


「……ありがとう」

「急にどうしたんですか」


 美羽の顔がさらに赤くなっていた。


「今後美羽のことを守っていくよ。これからもずっと」

「はい、約束ですよ」


 これからも何かあるかもしれないけど美羽とならまだまだ乗り越えて行ける気がする。



――――告白から数日が経った。

 2学期も始まり僕たちはいつものように毎日を送って居た。

 みんなでいろいろなところに行ったり、涼やしのぶちゃんに振り回されたり、青葉さんに勉強を教えて もらったり。

 このままみんなで今までのように笑いの絶えない毎日が待って居る。

 冬には毎年恒例のスキーに行ったりするだろう。

 ただ違うことは美羽と初めて過ごす冬が来ることだ。


今まで応援してくれてありがとうございました。

長かったこの作品も今回で最終回となりました!

……うん、本当に長かった


では別の作品でお会いしましょう


Twitter

@huzizakura

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