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「はは、いい返事だね。申し訳ないんだけど、僕は外で仕事があってね。ここを離れるから、わからないこととか用件は彼に言ってもらえるかい?」

「あっ、ハイ!」

「じゃあ頼んだよ、シン!」

「ああ。無茶はするなよ、リツ」


 軽く手を振って出て行ってしまった柚木と、見送る少年と、状況に置いていかれた由紀。柚木が出てから一分経ってもぽかんとしたままの由紀に、少年が痺れを切らして話しかける。


「田村さん?」

「あ、ゴメンナサイついぼーっとしちゃって」

「いえ、お気になさらず。客室までご案内します」

「あっ、うん、はい」


 歩き出した少年の背を、由紀はぽけっと眺める。


 小さい。


 恐らく男ではあると思うが、クラスの女子の中でも中くらいの背丈である由紀と同じ程度の身長しかない。中一の男子がこのくらいの身長ではないだろうか。そんな少年がどうしてここにいるのか。


 それに、由紀にとってはもう一つ、気になることがある。


(丁寧ッ……! 今時の若者とは思えないくらい丁寧な対応! 敬語を使いこなしているッ……!)


「……あの、田村さん。ご案内しますので、こちらへ」

「あっごめんなさい今行きますハイ!」


 丁寧な敬語の割に、どことなく威圧的というか、プレッシャーのようなものを感じる。さっきの柚木もそうだったが、少年も独特の空気感を持っているように思えた。


 一方の少年は、背を向けて由紀に表情が読まれないのをいいことに、わずかに眉をひそめている。


「…………面倒を押しつけていったな、あいつ……」


 少年がぼそりとこぼした小言は、由紀の耳には入らなかった。





 少年に客室まで案内された由紀は、そわそわしながら座って黙っていた。質素な部屋、見知らぬ寡黙な少年と二人きり、さすがの由紀も全く落ち着かない様子である。


「……」

「…………」

「………………」

「……緑茶でよろしいですか?」

「あっ、はい! 緑茶大好きです、うん」

「……そうですか」


 突然話しかけられてよくわからない返事をした由紀に、少年は適当に相槌を打つ。それから用意されていた急須に茶葉を入れ、ポットから湯を注いで淡々と準備を進めていく。


(無口な敬語メカクレショタにお茶淹れてもらうってどういう状況? なんだろうこの……なんか居心地わるく……)

「どうぞ」

「ファッ」


 思考中に、ことん、と湯呑みを出されて肩を跳ねさせる由紀。ここまで驚くとは思わなかったらしく、少年は隠れていない左目を少し見開く。


「……そんなに緊張なされなくても、大丈夫ですよ」

「えっ、き緊張なんてしてないですってーやだなぁー、あーお茶美味しーッ‼︎……えっなにこれホントに美味しい超美味しい」


 感動のあまり涙目になりながら由紀は茶を啜っている。余程美味い茶だったようだ。


「いつもこんな美味しいお茶淹れてるんです? えーっすごい……美味しい」

「お口にあったならよかったです。……それで、ご用件は」

「ヨウケン?……あっ、用件ね! はい!」


 少年はさらっと受け流しつつ本題を急かす。少々強引だが、話を進めるのが上手い人だと思いながら、由紀は事の経緯を語り始める。

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