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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
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94.ジノとの戦い

 王都への道を急いでる最中、夜を満月が照らす中森を駆け抜けていく。このまま走り続ければ夜が明けるくらいには屋敷に戻れるはず。

 広大な森の中間くらいに差し掛かったとき、突然暗い森の影から飛び出してきた黒い影に、反応が遅れ右腕が噛み千切られる。

 立ち止まり身構えながら相手の存在を確認すると、月明かりに照らし出されたのは3m近い体躯を持つ黒い毛並みの狼、ルーンウルフのジノの姿があった。

 

「ここでか。 もう準備は出来たのか?」


 毛を逆立て唸り声を上げるジノはすでに戦闘態勢に入っている。

 仲間でもあるのだが、誇り高いルーンウルフであるため、このタイミングで下克上をしかけてきたようだ。いずれは仕掛けてくるとは思っていたが、油断していたとはいえ腕を持っていかれるとは、やはりBランク指定危険魔物 ルーンウルフ、その強さは王都ダンジョン下層に属する魔物に勝る。

 腕を細胞増殖の魔法で元に戻し戦いに備える。


「《アイスツーハンデットソード》」


 氷の大剣を両手に握り、周囲に気を張る。

 暗い森の中にジノは姿を消した。愚かな獣とは異なり、音を殆ど出さずに高速で走り回るためどこにいるか位置が分からない。ジノも自分もお互いの手の内も実力も理解しているため長い闘いにはならない。せいぜい二手か三手で勝負がつく。


「ウォォォォ!!」


 大きな遠吠えが聞こえ、今度は消えていたジノの気配が複数に増える。前に見せた分身の力だろうか。周囲を駆け回る複数の気配に本体が読めなくなる。

 唸り声も上げずに正面の森から飛び出してきたジノを横薙ぎに切り捨て分身体が消滅、1体目。しゃがみながら後方から飛び掛ってきた突き上げで仕留める。これで2体目。

 そして3体目と4体目が左右から同時に襲い掛かってくる。

 

「《アイスウォール》」

 

 左側を氷の壁で一旦防ぐが体の半分近くまで貫通している。長くは持たないため急ぎ右側の分身を横薙ぎに切り倒し、左側の1体を頭部目掛け剣を振り下ろす。分身体だが3体目4体目は倒した。

 唸り声も音も無く背後から迫る本命、体長5m近くまで巨体化した質量と、そして開かれた大口の牙。振り返りながら剣を振り上げ顎の下から全力で切り上げる。

 顎に食い込んだアイスツーハンデットソードは、大口の半分ほどまで切り裂いた所でへしおれてしまうが、顎を切り裂かれジノは地面に倒れた。柄だけとなったアイスツーハンデットソードを投げ捨て方膝を地面につけ右腕を振り上げる。


「《アイスゲイザー》」


 凍りついた右腕を地面に叩き付け、地面から氷の刃がジノの下から噴出し体を貫く。だが、ジノの体が霧散しこれも囮の分身体だった。

 最初から分身したのも、5体目を巨体化させたのも、しゃがんだ状態で魔法を使ったこの決定的な隙を作るため、ジノが考えた事だ。

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