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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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81.虫壺

 しかし虫ゆえなのか、キングサイズのムカデは氷を嫌い、アイスウォールに近付こうともしなかった。ならば、上位氷魔法で全てに影響を与えれば、もしかしたら仕留められるかもしれない。


「山と氷の女神 スカディ様。 氷の女王と詠われるその御力を今、我が敵を滅する為にお貸しください。 我は傷付けるもの、奪うもの、死を与えるもの、汝の眷属に類するシモベ、《ヴェタァラ》」


 詠唱が終ると同時に、両腕が凍り付き激痛がはしる。そのまま片膝を地面に付き、両手を地面に触れると全ての氷が床に広まり急激に温度が下がっていく。凍り付いていた腕が戻る頃には、小型のムカデは凍りつき、キング級は動きが極端に鈍っている。やはり虫型だけあって温度変化には敏感のようだ。


「長くは持たないでしょうから、お早めに」


 今は凍り付いているといっても地中深く、地熱の影響もあって長く凍り付かせていられるとは思えない。


「坊主、やるではないか。 よし、お前ら一気に殲滅するぞ!」


 ドワーフは火や熱の神に熱心に信仰を捧げるため、氷の神とは非常に相性が悪い。はっきり言えば全く使えないといえる。真逆の魔法を使えるグレンは物珍しい。

 一方でグレンは火や熱はあまり得意とはしていない。ある程度は使えるが、威力が高すぎて無差別になりやすく、相手を生きたまま制する戦いには向かない。

 何より氷の上位神に魔力を捧げる事が多く、攻防から足止めまで自在に対応できるので戦い方に合っていた。

 こちらに気付いたキングサイズのムカデが向ってくるが、やはり動きは非常に鈍い。ようやく縦穴から上がってきたムカデも、一撃の下に頭を叩き割られ再び縦穴に落ちていく。


「まだ一匹キングが残っているぞ!」


 余りにもでかい一匹がいまだに残っていた。動きこそ鈍いものの、体長ざっとみて15m、太さも40cmはありそうだ。こちらを警戒しているのか縦穴の底から登らず、じっとこちらを見上げている。


「《アイスジャベリン》」


 氷の槍を放つも、やはり丈夫な甲殻に阻まれ砕け散ってしまう。しかし砕け散った氷の破片から離れ、体温が下がることを極端に嫌がっているようだ。


「《アヴァランチ:ヒューレル》」


 8mはある雪崩を作り出し、縦穴に一気に流し込む。一時的に縦穴が雪で埋まると、ムカデは急いで縦穴を上ってくる。

 しかし体温が下がった体では動きが非常に鈍く、頭部と体を繋ぐ関節部に複数の斧が叩き込まれ、引き千切れた頭部だけが


 残った超キングサイズのムカデの甲殻をドワーフ達はじっと眺め、持ち上げたり斧の柄の部分で叩いたりし始める。


「これだけ分厚い甲殻、何かと使えそうじゃな」


「持ち帰ってみるか」


「このでかさ、最低でも門や装飾品の代わりくらいにはなるじゃろ」


「いや、丸みを利用して円盾になるかもしれんぞ」


 頭の中はすでに武具作りに切り替わっているのか、何人かで手分けして引き摺って村に運び始めている。なんとも逞しいというか、頭の中は鍛冶と酒と工作と言われるゆえんを見たような気がしていた。


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