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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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75.ミリシア帝国

 ミリシア帝国は人類至上主義だが、それは獣人族を嫌っているだけであり、ドワーフ・エルフは人類として認めていた。

 近年のドワーフ国との争いは、単に国境を跨ぐ鉱山資源の配分の争いで、オーディン王国よりも嫌悪感はない。


 オーディン王国は元はミリシア帝国の前進、ミリシア共和国を始まりとする兄弟国家。

 何代も前に継承者争いを拒んだ初代王が、魔物が闊歩する荒地を開拓し、竜と契約を行って生まれたのがオーディン王国。初代王から延々と血統が受け継がれている。

 一方でミリシア帝国では内乱と暗殺によって血筋が絶えた。

 その為どうしても国家間で折り合いがつかず、さらにオーディン王国では獣人や亜人に対する差別がなく、少数ながら領地持ち貴族にも獣人や亜人が居る事がミリシア帝国には許せぬ事、オーディン王国を下に見ている為、国境は絶えず交戦が続いている。

 しかし、正当性はオーディン王国にあると認めている節もあり、国交が全くないわけではない。一部の貴族領と国交が開かれており、少数ながら人や交易品の行き来がある。


 エルとリーアナは目深くかぶったローブの内側で、姿を見せないように気をつけている。

 ミリシア帝国はなぜか精霊との対話が難しく、その姿を滅多に見かけることはない。注目される事を避けるには、二人には隠れていてもらった方がよかった。


「それで、どうやって戻る?」


「えぇ、この様子では戻るには随分時間が掛かってしまいそうです」


「ドワーフ国を経由する。 あそこならオーディン王国行きの列車もある」


 オーディン王国とドワーフ国には列車が通っている。それを利用すれば問題なく王都に戻れるのだが、知っている限りの情報では、ミリシア帝国からドワーフの国に行くには、長い地下洞窟を通り抜けるしかない。

 他にもドワーフ国に入るには許可が要るのだが、B級ライセンスとはいえ国境で数日待たされる可能性があるが、それだけで済む。ミリシア帝国からオーディン王国に行くために、複数の貴族の許可や、越境時の確認など何ヶ月掛かる分かったものではない。

 酒場に向い目的とする人物を探すと、店の隅のテーブルにいた。

 ドワーフ。数年ぶりに見ると戦士への適正が高い理由も良くわかる。鍛え込んだ人間の重装騎士よりも腕や脚は太く、胴体も分厚い筋肉質。酒場の椅子に座り、不機嫌な顔をして酒を飲んでいる。

 カウンターの店員に頼み、中々値の張る酒樽をドワーフのテーブルにオーダーしてから向う。


「すみません」


「なんじゃい!」


 ドワーフは堅苦しい話よりも単刀直入に行ったほうが良い。まどろっこしいものは非常に嫌われてしまう。


「話があるので、酒を奢らせてください」


 機嫌が悪そうな表情だが眉が僅かに上がる。酒で話を聞いてはくれそうだ。豊富な髭を触りながらこちらを空になったジョッキを片手でひっくり返してみせる。


「一杯や二杯なら断るぞ」


 ドワーフと話しをしたければ良い武具か酒を用意しろ。それは冒険者だろうと貴族だろうとみな知っている事。


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