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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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74.ラクシャの戦い 殲滅

 今回はリーゼハルト公爵から直々に命じられた任務。

 <魔物の村を殲滅を試みる神聖教国使節団を殲滅せよ>

 ソフィール神聖教国はオーディン王国北西に位置海に面する小国、絶対の教義によって成り立つ教皇制の国家、絶対の教義によって成り立ち、亜人を穢れた存在として絶滅を教義に加えられている。

 一方で、オーディン王国では建国時から、亜人だろうと獣人だろうと民と認め、知的で温厚なゴブリンの少数民族も、森の楽隊として民と認めている。

 つまりソフィール神聖教国とは教義や国家方針で相容れる事がなく、国境線で交戦状態にある。しかし宣戦布告がされているわけではないため、形上の交流をかねてオーディン王国に入国が許可されている。

 今回はその許可の悪用し、魔物の村を襲撃する情報が入ったとしても、王国の正当な騎士団が使節団の排除に動けば問題だ、しかし冒険者が詳細を知らず、村を襲おうとしている使節団を 盗賊と断定 して排除したのなら、国家間問題にはならない。例えそれが作為的だったとしても。

 ソフィール神聖教団も裏があって使節団送り込み、魔物が多い事を理由に、小規模とはいえ兵団を護衛として正式に申し入れている。魔物の襲撃によって壊滅したと説明されても抗議をする事しか出来ない。



 ラクシャと一緒にヤグラで遠くを見ていると、ソフィール神聖教が崇めるソルス神の装飾が大量に施された馬車を囲う様に、馬に乗った騎士達がこちらに向ってきている。

 金銀で装飾された馬車、煌びやかな武具をまとう騎士達、オーディン王国の騎士団のように質実剛健とは程遠く、過剰に装飾され戦う者とは思えない。

 

「悪趣味ねぇ」


 そう呟きながら遠めに見ていると、白と銀色の神官服を纏った神官が馬車から降りてくる。


「不浄なるもの全てを滅せよ!」


 ヤグラからでも聞こえる敵意もった声をあげ、兵士達は武器を取り魔物の村レストンの入り口目掛けて走り出した。


「ラクシャ、あの重装備の騎士を御願い」


 神聖教団は騎士が4人に兵士が10人、神官と従者が3人、少しは楽しめるかしら。

 ヤグラを飛び降りると村の門の前に降り立つ。


「異端者共め! 改宗せぬ奴らに神罰を!!」


 わめき散らす神官を横目に見ながら、サーシャは冷め切った思考の中、向ってきた兵士の首に短剣を突き刺す。噴出す血が短剣に宿るとその刃が延長され、なぎ払うように振るお兵士達は血溜りに転がった。

 兵士達が何も出来ず血溜まりに沈む中、騎士達は盾を構え血の刃を防いでいる。


「あら、思ったよりはできるのね」


 表面の装飾が破損し、銀で出来た内部が見えている。銀ならば魔力に対して耐性がある。それが例え魔力を流す事で作られて血液の刃とて同じ事。

 

「穢れしあの邪悪な者を滅せよ! 夜の眷属など火で焼いてしまえ!!」


 神官は怒鳴り声を上げ、騎士達に命じこちらに向ってくる。

 本当に面倒な教義、命なんて絶ってしまえば人も獣人も亜人も、みな同じ死体になるのに。それとも教皇は人殺しが大好きなの? それにまだ吸血鬼の力は使ってないのに、何を見て判断しているのかしら。



 ラクシャは崇める神の加護を得た聖騎士と激しい剣撃に入っていた。剣と鉈がぶつかり合い、連続した甲高い音が周囲に鳴り響いている。

 

「くそっ!」


 押し切れない。鉈と剣がぶつかり合うたび、嫌な感触が手に伝わり、武器が悲鳴を上げている。首から肩口にかけて振り下ろすが、剣で受け止められると刃が砕ける感触があり、力を込めて打ち込む事が出来ずにいた。

 聖騎士が刃を滑らせ、腹部目掛けた胴狙いの払い切りを鋼鉄の義手ガントレッドで受け流す。

 大鉈で力任せに押し返し、聖騎士を数メートル弾き飛ばし一旦仕切りなおす。

 分厚い鋼鉄で出来ているガントレッドの半分まで切り裂かれている。もう一度受け流すことは出来ない。

 肩で息をしながらラクシャは竜の大鋸鉈を確認するが刃が欠け始めてる。このまま長く打ち合っているといずれ折れてしまうかもしれない。


「教皇様より賜りし聖剣に抗うなぞ おぞましき魔剣よ!」


 フルフェイスヘルムで表情は伺えないが、聖騎士の声は怒りに満ちている。

 自らが信仰を捧げている教皇より与えられた聖なる剣、それが戦う為作られた武器に怒りを覚えているようだ。


「あたしには、その剣の方が異形に見えるがね」


 血の匂いだけがする聖なる剣、正義や教義の元にどれだけの命を奪ってきたのか。教義の元に弱者まで切り殺してきた聖なる剣より、まだ糧を得るための武器として、当然のように命を奪ってきた鉈の方がましだ。

 

「きさまぁぁぁ!」


 突きを受け流し、深く切り込んだ聖騎士の頭部に頭突きを見まう。聖騎士のフルフェイスヘルムは僅かに歪み、衝撃で僅かに目眩に襲われたのか聖騎士の動きが鈍る。

 正当な剣技慣れし過ぎていると判断し荒っぽい方法に出たが、思ったよりも効果が大きい。

 ダメージを受けた右腕のガントレットはもはや柄を握る事は出来ず、即座に担ぎ上げるよう竜の大鉈構える。

 踏み込みながら全体重を乗せ、最大の力がかかるよう叩き込む。

 聖騎士は大鉈を切断するよう聖剣を鉈の目掛け横薙ぎに振るった。

 剣と鉈がぶつかり合い、凄まじい接触音と砕け散る音が鳴り響き、聖騎士は体を抉られるように切り裂かれ絶命した。

 大きく息を吐くと血で汚れた鉈を振り払い刃についた血と肉を飛ばす。

 合金の刃部分は聖剣との打ち合いで酷く欠けていたが、アースドラゴンの骨格や牙に傷一つない。

 折れた聖剣を持ち上げてみると、装飾こそ銀でされていたが、刀身はなんの変哲もない鋼鉄造り、それが同材質で分厚い鉈の刀身を一方的に破壊していた。竜の材質でなければこちらが首を落とされていたかもしれない。


「またグレンに鉈を直してもらわないと。 それにしても聖剣って奴はやっかいだ」


 竜の骨はそれほど硬く、ミスリル合金で出来た武器、もしくは同じく竜の素材が元の武器でなければ効果はない。それほど竜種とは上位の存在なのだから。

 砕けた聖剣を倉庫にしまい、今度グレンの奴にみてもらうとしよう。



「なぜだ! あたらぬ!」


 3人の神殿騎士はサーシャを囲み、三方向から槍や剣を振るっているが、ゆらりゆらりと優雅に舞う動きを捕らえられず、繰り出される剣と槍はむなしく空を斬る。


「そうねぇ。 王国の騎士達より弱いからかしら」


 血の刃を纏う短剣を神殿騎士の腕に滑らせ、鎧ごとその腕を切断。

 神殿騎士は絶叫を上げ、腕を押さえているが、動きが鈍った所を今度は首を切り落された。

 

「腕が落ちた位で動きを止めちゃだめよ?」


 退屈そうな表情のままサーシャは無造作に右手の平を上にむける。

 死体から流れ出た血によって出来た池が反応し、無数の血の刃が噴出し神殿騎士達を串刺しにしてしまう。


「……だめね。 この程度じゃ楽しめないわ」


 盗賊達と同じ、血を見る程度のことは出来てもそれ以上の快楽は得られない。命のやり取りまで関わる危険な快楽は、グレンとしか味わえていない。

 戻ってきたらあれと一度殺し合おうかしら。満足させる約束をしているし。


 短剣に血刃を宿らせたまま、一人となった神官の向い歩いていく。

 神官は恐怖の表情を浮かべその場に固まり動けずにいたが、腰を抜かして這いずる様に後ろに下がる。


「わっ、私は 神官なるぞ! 私に害をなせば神罰が」


「それなら、神の御許に行きなさいな」


 地面から噴出した無数の氷の刃によって貫かれ、神官は息絶える。

 神官なら神技の一つでもするかと思ったのだけれど、怠惰に肥え太っただけでなんということはなかった。

 振り払うように手を動かし、身に少し着いていた血が全て落ちる。


「さぁ、後片付けそこにいる専門家に任せて帰りましょう。 リーゼハルト公爵様に報告しないといけませんから」

 

 行方不明にするためには身元が分かる物を全て奪い、適切に死体と物資を処理する必要がある。それが出来る人員をリーゼハルト公爵は派遣していた。顔まで隠した黒いローブを着た者達がどこからともなく表れ、馬車から装備まですべてを回収し、死体を焼き尽くして灰にしていく。



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