73.ラクシャの戦い 魔物の村
オーディン王国 北端、 リーゼルネシア公爵直轄地
魔物の村レストン、リーゼルネシア公爵直轄地の中に作られ、人間と敵対しない事を条件に食料の供給や交流が行われていた。
ここでしか作れない貴重な魔物由来の製品がある。ゴブリン族の骨加古品やオーク族の皮製品、リザードマン族の脱皮した抜け殻、魔法や錬金術の素材、需要がありながら、希少過ぎて高値がついているラミア族の薬などは、オーディン王国でのみ入手でき、他国の交易品にもなっている。
ラクシャはサーシャの手伝いで共に、魔物の村レストンを訪れ、取引の為に用意された品物を運び込み、サーシャは村長の家でラミアと交渉をしていた。
領地はないが、金銭を稼ぐ方法をサーシャなりに考え、他の貴族とは交流が少ない魔物の村と取引を考えつき、その為今回交易可能な品物と、ラミアと話し合いをかねて直接出向いていた。
「本当に魔物だらけだ」
酒樽片手に村を歩き回り、それぞれ特徴的な家々にすみ、農作業や動物の世話を行っている姿を眺めていた。魔物が農作業をしている姿に違和感を覚え、武器を取りたくなるのを我慢していた。
「私達は、本能の囁きに抗ってまで、集まってきました」
少し離れた所からソルジャベア、熊型の魔獣が魚の詰まった籠を背負って歩いてくる。魔獣だというのに温厚な落ち着いた表情をしている。
「ほう、では今も本能に抗っているのか」
「一度抗う事に成功できればもう大丈夫です。 お近づきのしるしにこれをどうぞ」
大振りな魚を一匹差し出すとワイルドベアはまた歩いていった。
「……まぁいいか」
渡された魚を亜空間倉庫に片付け、村長の家に向かう。余り歩き回っていると、武器をとってしまいそうで落ち着かなかったからだ。
「では、今後は私とも取引をすることで」
どうやら話がまとまったようだけど、この女はいったいなんなのだろうか。貴族の都合でグレンと婚約したようだが、時折酷く濃厚な血の匂いを感じる。
「終ったのか?」
「えぇ、あとは商家とも話をまとめるだけで終わりね。 これで最低限の財政問題も解決かしら」
貴族というのは何故こう金がかかるのか。貴族が見得だけとは言わないが、1億ほどグレンが稼いでもまだ足りないという。奴なら定期的にアースドラゴンを狩り稼ぐ事も出来るだろうに。
「少し村を見回りましょう。 まだ時間がかかりそうですからね」
そう言うとサーシャは一人で歩いていく。
グレンが居なくなってからも盗賊狩りに付き合っていたけど、余ほどの事がない限り身の心配をする必要性がないほどに強い。
グレンとサーシャから説明された限りでは、領地で魔物との戦いを生業とするソーディアン家と違って、領地を持たず学によって王都で働く貴族の娘らしい。
「いつまでここに居るんだい」
「リーゼハルト公爵の話では、今日とても 楽しい 要件が起きるらしいから、それまでね」
嫌な予感がする。この女が楽しそうに笑う時は、何かしら血なまぐさい事が起きる。
二週間前。中規模の盗賊団壊滅の依頼を受け、総勢20名の冒険者が集められた作戦に参加した。その中で殻パーティーのリーダーが集まって作戦立案中、サーシャは 一人 で侵入し皆殺しにしてしまった。元より捕らえる依頼ではなかったので問題はなかったが、一応のパーティーリーダーであったラクシャが総合リーダーに謝罪することになり、何よりも血まみれの状態で、微笑みながら盗賊の野営地から戻ってきたサーシャをみて、参加していた他の冒険者が恐怖に震えていた。
また何か疲れる事が起きるのではないかと深くため息をつく。




