71.海賊
シュウホを出向して二日、小さな孤島が点在する海域に到着した。
ギルドに雇われた冒険者達総勢50名、ギルドとして一度に海賊騒動を終らせるつもりのようだ。
「奴らが出てきたぞぉ!」
海賊はこの周辺を根城としているらしいのだが、早々にこちらに向って海賊旗を掲げた船が向ってくる。作戦もなく真正面から向ってくるなら、民間船でも逃げ切る手段がありそうなものだが。
見たところ船足も早くなくどうも納得がいかない。
戦闘態勢に入り、殺気立っている甲板の隅、状況に違和感と感じている数名の冒険者と船尾に集まる。
「こりゃ罠だな」
「ワシが現役の頃なら、役立たず共を囮にして、足が早い船を横っ腹に突っ込ませるがのぅ」
「おいおい、爺さん元海賊かよ」
「そうなると、私達五人だけでどうにかしないと不味いですね。 囮相手にも30人掛りですし」
状況に気付いているのは恐らくB級冒険者と一部のC級冒険者のみ、残りは眼前の船に意識が持っていかれてしまっている。
「こんなかで身軽そうなのは、爺さんと俺だな。 ちなみに爺さん、元海賊ならどういう戦法で来るか先読みできないか」
「さっき言ったとおり、衝角をつけた足が早い船で横っ面にぶつけるわな。 沈没したら泳げる奴で品物を回収すりゃ済むし楽で良い」
白髪の冒険者の爺さんは小振りの剣を、片手でくるくる回しながら何か考えているようだ。
「もしくは、切り込める奴らを乗せた大型船で接舷して皆殺しじゃな。 船ごと頂けるし分け前も増える」
「どうやら後者みたい。 ほらあそこ」
大き目の杖を持つ魔導士の冒険者は杖を海上に向けた。島の影から両舷にオールを出し、一直線にこちらに向ってきている船が見える。衝角らしき物はなく足が早い大型船のようだ。
「よし、各自攻撃と行こうか。 海賊相手に戦略などいらねぇよな」
各自船から飛び降り、水面の上に立ったり泳いだりとそれぞれの方法で向っていく。一歩遅れて私も踏みつける海面だけを凍らせ海面に立つ。
「ああいう船、なんていうんだったかな」
「ガレオン船ですね」
「古いよねぇ。 あたい達が乗ってるのもだけど」
エルとリーアナは相変わらずのんびりと見ている。傷が治ったのもあって心配など微塵もしていないようだ。
「オールを壊せばとりあえず船の安全は確保できる。 エルとリーアナは危ないから気をつけて」
走り船に近付くと骨の剣を取り出し、オールに刃を当てる。斬ると言うより叩き折る感触で破壊するが、やはり丈夫な代物とはいえ骨では斬るには不都合がありすぎる。
「よぉし! 一番手はワシじゃあ!!」
水面を走っていた元海賊の爺さんは跳躍し、一人甲板に飛び込んでいった。
「風よ!」
「俺も行くぞぉ!」
次々甲板に上がっていくと、戦いの激しい音が上がり始めた。
他の連中に任せ、私はオールをどんどん破壊し船の航行速度を失わせていく。左舷のオールを全て破壊した所で船尾に上がると、すでに倒された海賊達で溢れ、ほぼ一方的な戦いが行われていた。
「《アイスシックル:ツイン》」
氷の鎌を作り出し、海賊の背後に投げ、深々と背中に刺さった氷の鎌に倒れる。
「甲板をぶち壊す! 一気に行くぞ!」
一気に方をつけるつもりなのか、随分荒っぽい方法で船内に突入したいようだ。
「《クラックインパクト》!」
双斧を持つ冒険者は甲板に斧をたたきつけ、大きな穴が穿たれる。そのまま中に降り立つとすぐに絶叫が響き、海賊を血祭りにあげているようだ。
「彼はB級冒険者だが美しくはない。 私は船室への扉を守る海賊を倒して進もう。《サンダーソード》!」
長剣と小杖を使うやや魔法よりの魔法戦士、美しくはない戦いと先ほど言った様に、戦い方に美学でもあるのか、雷を宿らせ光り輝く長剣で海賊を切り捨てる。
「《サンダーボルト》」
雷の矢と雷の長剣を放ちながら切りかかり、一瞬の間をおいて海賊を二人切り倒した。言うだけあって腕は確かのようだ。




