70.主島 シュウホ
主島 シュウホ
ミリシア帝国と交易がある孤島郡でもっとも大きな島。唯一だが巨大なダンジョンもあり、人々も多く集まっている。ここからミリシア帝国へと渡る船に搭乗する。ほぼ内陸国のオーディン王国に行くにはこの方法しかない。
シュウホの港町 ラギイバは人通りも多く、大きなダンジョンがあるので近くの島々から冒険者も集まり、街道は活気に溢れていた。
この地に着てからとても食事に関しては満足している。何しろ米に似た食べ物が主流であり、待ち望んでいた懐かしい味に感動していた。
「グレン、次はあのスシ食べよう。 スシ」
「私はあのオハギがいいですね。 優しい甘さです」
「自分はおにぎりでも食べようかな」
14cmくらいの体長しかないのに、一人前を完食する2人の体はどうなっているのだろう。
それにしても、前々世で食べていたものが当たり前にある幸せに、なんとも言えない幸福感がある。四季があるらしいので、風土や食事が自然が似ているのかもしれない。
ある程度食事を楽しんだ後、ミリシア帝国行きの乗船チケットを購入するため、貿易港を訪れたが。
「搭乗席に3ヶ月先まで空きがない?」
乗船窓口でチケットを購入しようとしたところ、今は全く空きがないといわれてしまった。
「現在混み合っておりまして、チャーター船を使う方々も出ております」
さすがにこれは厳しい。いくらなんでもチャーター船を使うほどのお金はないし、便乗させてもらえる伝手もない。仕方ないといったん貿易港を離れ、情報を集めるためと漁港に足を向ける。
「あんた、冒険者だね」
顔に刀傷の痕が残るピンク髪の女戦士、小さな杖と長剣を腰から下げていることから、恐らく魔法剣士だろうか。
「ミリシア帝国行きのチャーター船護衛依頼があるんだ。 あんたも受けないか」
渡りに船だが都合が良すぎる。こういう都合が良い依頼は安全の為には断るに限る。何よりもギルドを通した依頼とは異なり、個別の呼びかけはギルドを通せない事情があることが多い。
「いえ、ギルド依頼以外は受けませんので、申し訳ありませんがお断りいたします」
「そうかい、そりゃすまなかったね」
あっさり引くと、他の冒険者に声をかけている。どうも怪しいのだが、それだけではどうしようもない。
情報を集めるため、漁業船が並ぶ漁港に移動する。余り遠洋まで出ていないのか、大きな船は港に係留され、余り大きくない船で魚の積み降ろし作業が行われていた。
魚を購入しながら船が混み合っている理由を尋ねる。
「今、ミシリア帝国行きの船が混み合っているのですが、何か起きたのですか?」
「あぁ、いま海賊出ていてな。 民間船が出向してなくて混み合っているんだよ」
「そうですか。 海賊とはやっかいですね」
「まったくだ。 おかげで遠洋漁業も出来ず売り上げが下がってたまらんよ」
魚を受け取りその場を後にする。海賊となると解決するまでそれなりの時間がかかりそうだ。
「せっかくの海賊ですから討伐してしまいましょう」
「海賊船もなくなれば民間船も出るし、報酬も手に入るしいいんじゃない?」
エルとリーアナの言葉に、ギルドに向うと案の定海賊討伐に向けて人員の募集がされていた。ギルド公認依頼でかなりの人数が集められているようだ。
ランクC以上 ギルド公認依頼
依頼 海賊討伐
対象 Cランク以上の冒険者
報酬 2万エルン
委細 ギルドが運営する船に乗船し、海賊の討伐を行う
依頼を受けるためにギルド側から説明を受け、その話ではかなりの数の冒険者が集められ、数人のB級冒険者も含まれるそうだ。かなりの大事になっているようだが、国が航路の防衛だけで討伐に動かない事に違和感を感じる。もしや海賊に戦力を避けない事情でもあるのだろうか。
明日出向するのに備え、宿屋に戻ると包帯を解く。外見上の傷も癒え、窓から吹いてくる潮風に痛む事もない。
「ようやく完治ですね。 長くかかりました」
「もう面倒だから怪我するなよ~」
エルとリーアナには面倒をかけたが、魔力も体もこれでようやく元通り。これでまた転移者を見つけたとしても闘うことが出来る。
「次は、怪我をしない程度の相手ならいいがな」
転移者の能力は個々で異なり、今のところ相性が良い相手とは戦えていない。いずれ絶対的に不利な相手と戦う相手が来るかもしれない。




