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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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69.海の戦い

 坑道ゴブリンを討伐したまでは良かったのだが、それから他のパーティーからの誘いがしつこくなり、正直うんざりしている。

 B級ライセンス冒険者・単独行動・女の影なし・ギルドからの印象も良好。

 女の影なしというのが割りと冒険においては大事な事。手当たり次第に仲間に手を出している男がいると、結果として危険が多くなるため、軽薄な男はそういった連中だけで組んでいる事がほとんどとなる。

 断りながら三日間過し、報酬で稼いだ金で主島 シュウホ行きの船のチケットを購入し船に乗り込んだ。



 一週間の船旅、安全ではなく海棲の魔物が活発で危険な時期らしい。搭乗できるのは水夫と冒険者だけと限定され、私はB級冒険者と言う事で随分チケットを安く、そして一応の個室が与えられた。

 

「来たぞ!」

 

 出向して3日の夕方だと言うのに、襲撃を受けたのはこれで14回目だ。甲板に出ると、そこにいたのはかなり人型に近く、全身鱗に覆われ鋭い牙と爪を持っている魚人と呼ばれる魔物。

  

「捕まるな! 水中に引きずり込まれるぞ!」

 

 水夫長の怒鳴り声が響き、1人の水夫が魚人に腕を捕まれ甲板の隅まで引き摺られていた。

 

「《アイスジャベリン》」


 氷の槍が水夫を襲っていた魔物の頭部を貫き、次々と海上に叩き落していく。しかし海棲魔物は甲板に上がり続け、水夫や他の冒険者も対応しているがきりがない。

 

「海の精霊 タラサ。 今魔力を奉納しその力を求める者。 魔なるモノをその力によって、滅し給え 《スプラッシュウォーター》」

 

 いくつもの水柱が立ち上り、その中に捕らわれた魔物たちは水圧によって圧壊していく。ただ、今回は数が多く、仕留めても仕留めても甲板によじ登ってくる。雑多な襲撃ではなく明確な命令を受けているようだが。

 

「これは、頭がいるぞ! 全員注意しろ!!」

 

 水夫長の声が船に響くと同時に、10mを超える巨大な足が海中から飛び出す。

 

「デビルフィッシュだ!」

 

 巨大な足、あんなものが船にぶつかったら一発で沈没してしまう。帆を綴じると両舷にオールがせり出す。その間も襲い掛かってくる魔物にオールをほとんど動かす事ができずにいる。


「雷撃を詠唱する。 援護してくれ!」 


 一人の冒険者が魔法人を描き始める。直径2mを超える大きな魔方陣からして相当無理をするようだが。

 何人かの冒険者が護るように立つと、近付いていく魔物を切り伏せる。


「雷の精霊 ケラヴノス。 我が願いを聞き入れ、我が敵を殲滅する雷を遣わせ給え。空に舞う雷、光の欠片、闇を引き裂く雷、貫く雷よ! 《チェインライトニング》!!」


 放たれた雷で魔物に次々と伝播、黒焦げにしていく。かなりの魔力量があるのか、継続して放出し続け、船に群がっていた魔物すべてを仕留めてしまった。

 

「凄い魔力量だな」


 水夫や冒険者達が驚いている中、魔法を放った冒険者はその場に座り込み、周囲を冒険者が護るように立った。

 魔法特化の冒険者なのだろうか。やや珍しくはあるのだが、仲間らしき者達が居るため無理が出来るのだろう。

 しかしまだ状況が打開できたわけではない。ようやくオールによって離れつつあるが、帆が張れないのでその動きは余りにも遅い。目立つ行動は取りたくはないが、船が壊されては非常に困る。


「海の精霊 タラサ。 水の加護を与え、水中でも生きる術を与えたまえ《ファムエアー》」


 海中でも息が出来るように精霊に願い、海に飛び込む。すぐにでも海棲魔物が襲ってくるかと身構えていたのだが、倒された仲間の残骸を食らい、運ぶので手一杯でこちらを襲ってくる様子はない。

 栄養を求めているのか、飢えを満たすために襲っているのか、その辺の判別はつかないが、とりあえず一時的に攻撃はないと判断してよさそうだ。

 そのまま海を深く潜り、デビルフィッシュの方向に向う。数分してたどり着くと、巨大な二つの生物が争っていた。

 全長30mはあるだろう巨大なイカ。水夫長がデビルフィッシュと叫んでいたのでタコかと思ったのだがイカとは、デビルクラーケンと間違えたのだろうか。

 もう一体は骨だけの巨大魚、生命を憎み襲い掛かっているようだ。二体はと縺れ合うように戦っていりが、デビルクラーケンのほうが少々苦戦しているように見える。

 水中では身動きがとりにくく、剣などは余り使えない。抵抗の少ない銛くらいだが、大物同士が争っているのなら、都合が良い片方に手を貸せば良い。

 

「死を司る神 サナトス様。 今死を欺かれ生に群がる者達に安寧の時を与え給え。 朽ち果て終わる身、痛む魂、その全てに終焉を《ヒュプノス・ソウル》」


 亡霊の動きが緩慢に成り、眠るように動かなくなり消えていく。戦っていた相手が消えた事で、海棲魔物達はおとなしくなり、怪我をした身を労わるように食べ物を持って集まりだしている。あの巨大な亡霊と戦う為に、栄養を求めて人間の船を襲っていたのだろう。今は怪我をした体を優先する為にこちらに襲い掛かってこないが、食べ物が尽きたり傷が癒えると危険そうだ。 

 海面に上がると、少し離れたところにまだ船が見えた。水夫が気付いたのか、手を振っている。一時的に凍らせた海面を踏みつけ、船まで跳躍し甲板に着地。甲板も倒された海棲魔物の屍骸で荒れていたが、幸い怪我人は余りいなかったようだ。

 

「時間は稼ぎましたが、長く居れば危険です。 海域を離れる事を提案します」


「よし、帆を張れ!オールも出して急ぎ海域を離れるぞ!!」


 水夫長の命令に水夫達は急いで船の状態を整え直し航行を再開した。


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