67.魔物駆除依頼
本島行きの定期船船出向まであと6日、静かに過す程度には金銭に困らず、雑用の依頼をこなしつつ、ギルドに顔を出していた。
今日も雑用依頼でも受けようとギルドに行くと、中は慌しくなっており、受付嬢が書類を持ってこちらに走ってきた。
「ギルドから緊急依頼が出ています。 B級冒険者グレンさんには参加を打診いたします」
早速B級ライセンスへのほぼ強制依頼、報酬も高いので断るつもりはないが、まさか取得して一月も経たない内に依頼が来るとは思わなかった。
「島内唯一の宝石鉱山に魔獣が現れ、採掘不能になっています。 ギルドとして早急な討伐を考え、現在メンバーを集めています」
「わかりました。 ですが組むのは苦手ですので、単独行動をします」
依頼を拒否することは基本的にできないが、戦い方にあった方法を意見することは出来る。ギルド側には申し訳ないが、非常時であるなら助手などを付けられて教育紛いの行為はしたくない。
「それではギルドとして依頼受領を確認させていただきます。 鉱山入り口までは馬車をご用意しますのでお急ぎください」
乗合馬車ではなく、専用の馬車が出るとは思わなかったが、どうやらB級の待遇は思ったよりも良いらしい。
シカク島 宝石鉱山ユウナリ
「B級冒険者はグレン様だけとなります」
道中のギルド職員の話からすると、B級は私以外誰も居ないそうだ。やはりこの島は冒険者の数が少ないのだろう。
「C級以下の冒険者達は他の坑道から入りますので、討伐のほどよろしくおねがいします。 確認できているのは坑道ゴブリンです」
坑道ゴブリンは少々筋肉質で大柄、通常種よりも強い代わりに繁殖力が劣るのが特徴な亜種。厄介なのは通常のゴブリンと違って洞窟や坑道を住みかとして特に好むという性質だ。
「わかりました。 では私は頭を標的に潜りますので、他の冒険者には徐々に進行してもらえればよいかと」
「では、その様に伝え、ギルド側は魔物が逃げ出さないよう全ての鉱山入り口を担当いたします」
馬車を降り、他の冒険者たちもギルド職員に案内され、各々担当となった鉱山入り口から坑道へと降りていっているようだ。
「おい雑魚野郎。 てめぇこんな所に何しにきやがった」
ここ数日で聞きなれた声に振り返る気も起きず、そのまま放っておいて坑道に入っていく。
「おい、まてやこら!」
「あなた方は他の坑道入り口が担当のはずです。 すぐに行動を開始して下さい」
ギルド職員に止められ、面倒な男はついてくることはない。職員がそれとなくランクを伝えてくれてもいいとは思うのだが、個々の関係について必要以上に干渉しないギルドとしては当然なのかもしれない。
坑道に入って5分、ほぼ一本道を進んでいくと少し広めの場所に出た。どうやら第一採掘地点のようだ。
急いで逃げ出したのか、所々に掘り出した原石が積まれており、ここがアメジスト鉱山だと分かる。中々豊かな鉱山らしく、まだ入ってすぐだというのにアメジストを含有した欠片が所々に見える。
地面に魔方陣を描き、丁寧に詠唱を行う。
「その器は人に似て異なり、身は研ぎあげられ美しく輝く、その魂は気高く、魔力を喰らいその身を起せ、契約せし精霊 《ギネガ・ギュネー》」
周囲の宝石、アメジストを取り込みながら身を構成し、ウッドドールのときとは異なり、はっきりと女性型の身を作り上げた。
アメジストのみで構成された2体の女性型ドール、相変わらず力も動きの早さも人並み程度だが、アメジストという硬度の高い材質を使うのなら話は別になる。
斬れず砕けずの体なら倒す事は非常に難しく、少量ながら常に一定量の魔力を消費し、身の構成物を常に再生させる。
「2人ともしばらくの間宜しく頼む」
ギネガとギュネーは丁寧に頭を下げるとどこか楽しげに笑っている。もちろん声は聞こえないが、動作だけで笑っていることは判る。
物音に視線を向けると、狭い坑道から灰色の姿をした坑道ゴブリンが姿を現した。
「ギネガ ギュネー、行くぞ」
ゴブリン達は骨や石でできた斧を振り上げ襲い掛かってくる。ギネガとギュネーは両腕で受け止めるが、硬度の高い宝石を体に持つ故、骨の斧などでは傷一つ付けられず、振り上げられたギネガとギュネーの拳がゴブリンの頭部をへこませ、その場で倒れ絶命する。
ひとしきり殺し終えると、声は出せないが、ギネカとギュネーは美しいアメジストの体に満足しているようで、上機嫌でアメジストの髪をかきあげている。
ただ何かを要求するように手をこちらに向けた。
「《アイスツインソード》」
氷の剣を作り上げ、二人に投げ渡す。受け取ると満足そうに振り回し、準備が整ったらしく坑道の先に進み始めた。




