表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
52/176

51.報酬と屋敷、そして アースドラゴン討伐へ


 即日私は解放され、騎士団の一部隊とともに王都への帰路に着いた。

 騎士団員の話では、闘技場に居た支配人と、幹部を捕まえるのは一種の余剰任務であり、本来の任務であるモース伯爵家の者は全員捕らえられ、当主は処刑され親族は奴隷落ち。

 伯爵に妻子が居なかった事は幸いではあったが、親族や兄弟も犯罪に手を染め、支配人をしていたのは伯爵の弟であった。

 罪状は魔物や奴隷の不正売買に始まり、民に充分な市政を行わなかったなど多岐に渡る。

 王都に戻った翌日、リーゼルハルト公爵から公式な書面が届けられた。


[報酬としてモース伯爵が王都に所有していた屋敷の一つを与える]


 モース伯爵が所有していた財産は、一度リーゼルハルト公爵の所有物となり、そこから報酬として騎士達に与えられる形を取られた。

 その為、前の拠点は改築したばかりだが地主に売り払ってしまった。

 モース伯爵は王都内に大小3個の屋敷を所有していたらしい。そのうち一つ、子爵が所有していてもおかしくはない庭付きの屋敷を一つ与えられた。

 地下一階から地上3階、屋根部屋構成の一般的貴族の屋敷だが、現状のまま引渡しだったため、家具や装飾品などは全て売り払い、サーシャは自分の趣味に合わせて内装を変えたり家具を購入し、ラクシャ達も庭の一部を訓練場にしたりと、一部の改築まで行っている。

 屋敷を得てから何度かサーシャの親である、トイス子爵が尋ねてきたのだが、サーシャが庭にも居れず早々に追い返している。

 色々隠していた事や教えていなかった事を随分恨み、今はロータス義姉の伝手で得た従者達から色々教わりつつ、貴族としての立ち回りや知識を補填している。

 もちろんストレス発散とばかりに、ラクシャ達と盗賊狩りに遠征に出ている事もあるが、初めてあったときよりも随分のびのびとしている。


「イノはこちらの服が合ってるわ。 ナルタが選んだ服だと貴族らしくないわ」


「でも~、こっちのほうが可愛いとおもうんです~」


 最初、イノは私だけが後継人として貴族院に行く予定だったのだが、事情が変わりサーシャも婚約者として、連帯後継人としてイノを貴族院に送る事になった。それが決まってから共に、ロータス義姉が用意した家庭教師の教育を受けたり、他の貴族との会食などに連れて行ったりと何かと面倒を見ている。

 ただ、本来はただの冒険者であり、屋敷を維持するためにも、貴族として振舞うにも金が掛かる。貴族としては絶望的資金不足、そして貴族としても冒険者としても、名が全く知れておらず、ランドルフ伯爵から早急に実績を上げるよう書状が届いている。

 その為 王都ダンジョン、35層に座するダンジョン主、アースドラゴンの単独討伐を決めた。

  今まで色々あったが今は立場上の問題も一応解決し、仕留められる武器も調達できた。アースドラゴンに挑まない理由はない。

 階層主が居る一部屋のみが最下層の全て。そのため部屋の入り口の前には国から派遣された騎士が常駐しており、一日かけて到着した扉の前には今も2名の騎士が控えている。


「アースドラゴンへの挑戦者か。 仲間はどうした? まさか一人で挑むつもりか?」


「一人で挑むのは構わないが、無理はしない方が良い」


 騎士は階層主が待ち構えている扉の前で警邏し、こちらに注意を払ってくれている。騎士団でも定期討伐はしているが、冒険者の討伐者はここ数年でていない。

 一人で挑むのは無謀に思えるのかもしれないが、挑戦する希望者を無理やり止める事はない。


「私一人ですが、秘策はありますので問題ありません」


「そうか。 貴殿の武運を祈る」


 閂が外され、開かれた重厚な扉をくぐる。

 階層全ての壁を取り払った広い部屋の中央に、悠々とアースドラゴンが待ち構え、こちらを見るとゆっくりと身を起す。

 人間など丸呑み出来そうな巨大なアギト、大木よりも太く筋肉と竜鱗で覆われた四脚、体長15mはある竜種であり、退化した小さな翼を持つ紛れもない竜であり圧倒的な力を持つ。


「《エスプロージョン》」


 初手は中級爆発魔法、放たれた無数の爆発がアースドラゴンの体を襲うが、痛くもかゆくもないという表情のまま身を起こすと大きく口を開けた。

 全速力で右方向に走ると、それまで居た場所にアースドラゴンのブレス、石材を混ぜた凶悪な息が地面を削り取っていく。

 そのままストーンブレスを右に回りこみながら回避。追いかけるようにストーンブレスが向ってくるが、幸いまだこちらを油断しているアースドラゴンの攻撃は逃げ切れる程度の甘さだ。


「《アイスジャベリン:ストーム》」


 一本2mはある氷の槍を、10本連続で作り出し射出、竜燐に阻まれ貫通することはないが、それでも身を防がせる程度の効果はあった。

 アースドラゴンはアイスジャベリンの攻撃を警戒し、地面を大きく踏みつけるとアースウォールがいくつも地面から現れる。視界が遮られるが一旦ブレス攻撃が止んだ。

 一気に踏み込むとアースウォールを土台に跳躍し、杭打ち機ブレーカーガントレットを振りかぶる。


「ぐっ!」


 跳躍したところに待ち構えていたアースドラゴンの尻尾が直撃し、20m近く弾き飛ばされ地面を転がりながら立ち上がる。幸い骨は砕けなかったが全身に痛みが走る。


「《アヴァランチ:ヒューレル》」


 高さ8mもの巨大な雪崩を作り上げ、アースドラゴンに向かって放つ。

 雪崩に身を隠しながら今度は左側に回りこみ、アースブレスによって簡単に雪崩は打ち破られるが、目隠しには充分だ。

 その巨大な体の足元に滑り込むと、大きく踏み込みながら左後ろ足にブレーカーガントレットを打ち込む。竜燐がはじけとび、血が噴出すが風穴が開くことはない。

 一旦距離を取るとアースドラゴンは雄たけびを上げ、膝をつくように身を横たえ効果はあったようだ。これをあと最低でも残りの3足、そして頭部に何発か打ち込む必要がある。

 アースドラゴンが大きく咆哮を上げると激しく地面が振動し、棘のようなものが地面から突き出し周囲に広がっていく。


「《アイスウォール」」


 この階層はすでにアースドラゴンの支配下にあり、土魔法を行使する事は難しい状態にある。練達した魔導士が土属性の精霊の主導権を奪い、アースドラゴンの魔法を封じるのも、手ではあるがそんな器用なことを私は出来ない。

 氷の壁を作り出し、一時的に上に飛び乗る事で棘の波を避ける。アースドラゴンはこちらを睨むと、大きく口を開き再びブレスの体制に入ろうとしている。

 アースドラゴンの注意すべき攻撃は大地魔法とブレス、大きな爪や尻尾はそこまで威力はない。


「《アイスジャベリン:ストーム》」


 再び氷の槍を放つが、今度はブレスによって叩き消され、さらに大地の棘が周囲に広がり、こちらが走り回るのを防ごうとしてくる。

 やはり一人で戦うにはまだ早すぎたようだ。自在に力を使われるようでは、何発もブレーカーガントレット打ち込むのは難しい。

 早めにしとめなければ、今よりももっと激しく抵抗され、こちらが不利になってしまう。


「《アヴァランチ:ヒューレル》、《アイスウォール》」


 再び高さ8mの巨大な雪崩と、所々に点在するようにアイスウォールを作り上げ、アイスウォールを足場に棘の波を避けながら接近。

 ブレスによって雪崩はかき消されてしまうが、それでも今度は足元に入り込まれないように、丁寧に雪崩を消すため、逆に上方への意識が甘くなっていた。

 アースドラゴンの上に飛び乗り、火炎の魔力を杭に付与しつつ、ブレカーガントレットを額に叩き付け開放。

 アースドラゴンの竜燐が砕け散り、雄たけびを上げながら暴れまわった事でふるい落とされ、地面に落ちたところを右腕に殴打され吹き飛ばされる。

 100m近く地面を転がり体勢を整えるが、全身酷く痛み受け身を殆ど取れなかった。


「《リジェネレーション:中級》」


 体の痛みが引いていくが、これで傷が癒えるまでは、身体強化魔法を除いて魔法を使うことは出来ない。

 一方でアースドラゴンも額への一撃はかなり効いたらしく、頭部の鱗がはじけとび血が流れていた。


「さらなる大型化が必要か」


 ある程度分かってはいたが、一撃で仕留めるにはまだまだ威力が足りない。

 ドラゴンのような存在に、一人で何度も接近するのは自殺行為、魔石にフレアを充填、想定していない使い方ではなく、一発ならば耐えられる事を機構士と共に確かめてある。

 先ほど作ったアイスウォールを足場にし、土棘の波を避けながら接近。アースドラゴンはこちらを向き、ブレスを吐くため大きく口を開いた。

 亜空間倉庫からダンジョンで拾った槍を取り出し、アースドラゴンの眼に向けて投げる。

 さすがに眼には当たらなかったが、左まぶたを閉じたため、アースドラゴンの左側面に隙が生じる。

 身体強化を7割まで使用、一気に駆けると左腕で右腕を押さえ、左即頭部にブレーカーガントレットを開放。

 鼓膜に酷く響く大爆発音が響き渡り、強烈な衝撃が全身に襲い掛かり、2mほど反動で弾かれ体勢を整え直す。

 まだ襲ってくるかと身構えるが、アースドラゴンは左側頭部に穴が開き絶命していた。

 落ち着いてブレーカーガントレットの状態を確認、前回過剰使用したときは衝撃を減らすカウンターウェイトがはじけ飛んだが、今回は杭に歪みも確認できず、ミスリル合金の杭の強度はアースドラゴンの頭骨よりは若干頑丈なようだ。

 破損したブレーカーガントレットをしまい、閉じられていた階層主の扉を開き外に出る。


「討伐が完了しました。 確認を御願い致します」


 アースドラゴンとの戦いの様子を気にしていた騎士達が驚きこちらを見る。


「本当に一人でやったのか!?」


 驚いた二人の騎士が階層主がいる部屋を覗くが、そこにあるのは屍骸だけだ。これが済んでから回収することになっている。


「単独討伐は3年ぶりだ! 君、騎士団の入団試験を受けないか!」


「いや、その前に討伐証明を発行するから、それまでに回収してくれ。 売りたいなら騎士団がこのまま買い取る事も出来るぞ」


「一部欲しい部位があるので買い取りは止めておきます」


「そうか、では討伐証明のために貴殿の名前を」


「グレン・ソーディアン。ソーディアン子爵家の者です」


「分かった。 少しの間待っていてくれ」


 騎士はそう言うと簡易詰め所に移動し、書類らしきものに記載を行い始める。

 その間にアースドラゴンの屍骸を亜空間倉庫にしまう。魔法剣士としてはかなり容量があるほうなのだが、それでも半分以上容量を占めた感覚がある。

 

「待たせた。 これをギルドに提出すれば正式に討伐者として認定される」


 騎士団の印が押された正式な書面を受け取り、地上への転移陣を通ると急いで王都に戻った。

 地上までの転移結界陣も作られており、騎士団の往復とここまで到達した冒険者の帰り道のみ提供されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ