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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
2章 各領地への遠征開始
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50.魔物と騎士団の強襲

 翌日、観客席に向うとほぼ満員になっており、掛け倍率と思われる数字も掲示板に張られている。

 私の勝利への掛け金は4倍とは、随分と分が悪いと観客は読んでいるようだ。

 闘技場の檻に入ると相手側の扉が開かれる。相手は少々小柄のオーガ、前座と言うべきかその後ろには立派な椅子に座った男が一人居る。

 遠めではっきりとは見えないが、外見で見る限りは人にしか見えない。


「皆さんお待たせしました! さぁ本日のメインイベント、先日闘技場で暴れたゲストの相手は数々の魔物やゲストを殺してきたオーガだぁぁ!」


 オーガは用意されていた大きな斧を掴む。

 さすがに今までの相手と違ってこちらを見据え、うかつに近付いて来る事は無い。警戒されると攻撃しにくいが、こちらもなにも考えていなかった訳ではない。

 昨日とは変わり、用意されていたまともな武器の中から、大戦斧とロングソードを選んでいる。

 力だけでねじ伏せる難しいかもしれないが、出来る限り観客をこの場に引き留めなければ。


「本日のメインイベント! リザードマン3体を一度に倒したゲスト、それに対するは王者! しかし王者と戦うには前座を倒し、実力を示さなければならないっ!」


 観客席の方にはそれなりに準備が整ったのか、司会が盛り上げようと何か言っている様だ。

 問題は主催者や重要な観客が来ているかどうかだが、見回して怪しまれても困る。

 気付かれないよう、静かに斧に魔力を流し強度を高める。斧は魔力に関する適合性は剣より高くなく、魔力向きに作られていないただの斧だが、それでも1割程度はただ振るうより強度も威力も増す。

 これでオーガ相手でも、それほど遅れは取らないはずだ。


「おぉぉぉぉ!」


 檻に入るなり雄たけびを上げ、大斧を振り上げ向ってくる。

 オーガが振り下ろす大斧に戦斧を叩き付け、斧同士がぶつかり合い激しい火花が上がり、鉄がぶつかる音が闘技場に響き渡る。

 軌道をずらされた斧は石材で出来た頑丈な床にめり込んだ。一歩踏み込みオーガの首目掛け斧を振るう。

 だがオーガは身を伏せて斧を避け、床にめり込んでいた斧を平をそのままこちらにぶつけ、力任せに振り切られ、檻まで飛ばされ体が激突してしまう。


「やれぇ! ぶっころせぇぇぇ!」


「そのまま叩き潰せぇ!」


「生きたまま引き裂いちまえ!!」


 観客は歓声を上げ、凄惨に殺される事を望んでいる。

 これ以上体力を消耗すると、この後の相手に影響が出てしまう。王者と戦う前に、武器を失うのは想定していたわけではないが、時間をかけて怪我をするわけにはいかない。

 檻の格子をつかみながら立ち上がると斧を正面に構える。


「《セルフデス:サクリファイス:エッジ》」


 斧が耐えられず13秒も持たず自壊するが、それまで限定的ながら無理が利く。

 真正面から飛び込むと振り下ろされる斧を回避し、足元に滑り込みながら右足を薙ぎ立ち上がる。

 浅い入りだったが、片腕を突いてその場にしゃがんだオーガの頭部目掛け斧を振り下ろすが、オーガもすぐに斧で頭部を守り、斧同士がぶつかり合い共に斧が砕け散る。

 即座にロングソードに持ち替えるとオーガの首に突き刺し勝負は決した。


「ゲストは王者に挑戦する権利があるようだぁぁ! さぁ賭けていない紳士淑女はもう居ませんか!?」


 ほんのひと時の猶予、その間に賭け直しで、見たこともない大金が動いているのだろう。


「さぁ 王者の御登場だ! 今回の挑戦者はどのように料理されるのかぁぁぁ!!」


 王者はさっきから何かの肉を食べているようだが、どうみても人種の足にしか見えない。それも状態からして新鮮な生の状態だ。

 檻に入る事すぐはっきり分かるが、王者は外見上は少々毛深い筋骨隆々とした30代くらいの男だ。恐らく変身型の魔物のはず。


「不味そうな奴だ。 女子供の方が肉質は」


 それ以上言わせることなく切りかかり、ロングソードの刃が男に食い込む。だが剣が食い込むがまったく動かず、押す事も引く事もできない。

 確かに魔力を流していない鉄の塊だが、それでもまともな剣が役に立たないなんて考えた事はなかった。


「筋肉質か。 これは噛み応えがありそうだ」


 腕をつかまれそうになり、剣を捨て距離を取ろうと後ろに跳ぶが、追撃され目の前には男の腕が迫っていた。


「《フレイムナックル》」


 素手で戦う格闘家の初級打撃魔法。

 両拳に指向性のある爆発魔法を宿らせ、腕と腹部に爆発打撃を叩き込み弾き飛ばした。

 相手の男の体の一部が軽くこげているが、それでもまだ余裕があるのか、笑みを浮かべ口元からは涎が出ている。


「面白い獲物だ。 これは食らいがいがあるぜ!」


 叫び声を上げると服が引き裂け、体毛が全員を多い、牙が迫り出し顔も獣に変わっていく。

 ワータイガー、C級上位に値する厄介な変身型の魔物だ。スピードに優れる為に非常に厄介だ。


「やはりか」


 変身が終わると私の周囲をぐるぐると高速で走り回る。かなり早いが、ジノよりも遅く目で追いきれないわけではない。


「ほらほらどうした!」


 背後から引き裂くために振り下ろされた爪を避け、腹部に再びフレイムナックルを叩き付ける。しかしがっちりと受け止められ、ほんの僅かでもその身に打撃が通った感触はない。


「そんなもの効かないなぁ!」


 笑顔を浮かべ、もう片方の腕から振り回された爪が左腕をかすめ、紙屑のようにフルプレートの装甲が抉られ血が流れ出す。

 その様を嬉々としてみながら離れ、再び周囲を走り回り、完全に人間を弱者だとなめ切っている。


「次は腕を噛み千切ろうか。 それとも足をもぎ取ろうか」


 どこか楽しげな声を上げ、怪我をした左側から襲い掛かってきた所を腕を掴み体勢を崩させる。


「《エクスプロージョンナックル》」


 中級打撃魔法を両拳に宿らせ連続して打ち込む。

 左腕は出血と痛みで、半分程度の力を出せているかもわからないが、それでも構わず連続打撃を止めず腹部から頭部へと20数発打ちこむ。

 さすがに左腕の感覚が鈍くなり、不味いと考え一旦距離を取る。

 傷を確認すると、腕のアーマーと共に腕の肉が抉られているが、骨までは到達していないようだ。


「《ウォーターヒール》」


 緑色の水が傷を覆い、出血を止め治癒していく。

 ワータイガーの方は、爆発の衝撃と炎で殴られた腹部から頭部に掛け、毛皮が燃え落ちていた。打ち込んだ数の割りに傷は浅いがそこは武道家ではない私の限界点。


「人間の分際で良くも俺の毛皮を!」


 ワータイガーは怒り、強烈な殺気を込めた目でこちらを見ている。

 すぐに飛び掛ってこないのは警戒もあるのだろうが、負った怪我が軽くないのも理由だろう。


「人間相手に無様だな。 猫ちゃん?」


「グルルゥゥゥ!」


 安い挑発だが、ワータイガーは眉間に皺を寄せ、牙を剝いて唸り声を上げている。

 頭に血が上っている相手ならこれでいい。怒りに飲まれてくれるなら、動きは単調に成り戦いやすい。

 一番怖いのは血が凍るほどに冷め切り、冷静に判断し冷徹に戦える存在、命のやり取りにおいては怒り狂い判断力を失ってくれる方が相手は弱くなる。


「グルァァァァァ!」


 雄たけびを上げながら飛び掛ってくる。

 特徴の早さこそ生かせても直線的なら迎撃はそれほど難しくはない。


「《アースソード:ワンハンド》」


 右手で握ると3割身体強化、しゃがみ込みつつ一歩踏み出し、ワータイガーの肩口にアースソードが食い込み力任せに振り切る。

 肉と骨が潰れる音が響き、手から肉と骨を叩き潰す感覚が伝わり、そのまま地面に叩き伏せる。

 真っ二つとまではいかないが、胴体まで喰い込んだアースソードによってすでに絶命していた。


 賭け札だろう紙が舞台上に投げられ、ヒラヒラと空中を舞っている。

 何倍かは知らないが、私に賭けたものは余り多くなさそうだ。


「新たな王者誕生だぁぁぁ! 今回の大穴にかけた紳士淑女の皆様もおめでとう御座います! それではゲストには賞金と」


 爆発音が会場全体を襲い、入り口から多くの騎士達が流れ込んでくる。

 どうやら作戦は成功しこちらにも手勢が回ってきたようだ。


「我々は十騎士団 第四団である! 全員大人しくせよ! さもなくば罪ありとして、この場で処刑する!」


 無抵抗の証としてその場に座り込むと、観客席で見ていた騎士団員が捕縛者として私も縛り上げた。連行こそされないものの、体面上観客たちからは私も掴まる側に見えるだろう。

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