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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
1章 王都での戦い
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24.白鳳騎士団副長 長兄アークス


三日後、公爵邸 正門・・・

 結局身なりを整え、一人で尋ねる事になった。ほぼ半日掛けて到着した正門の前には、多くの騎士たちが常に巡回警備しており、王城の入り口と同じように厳重に警備が成されている事がわかる。


「止まれ! ここは公爵邸である! 用無き者は排除する!」


 門に控えている騎士八名が、一斉に槍をこちらに向けるその動きに乱れは無いのだが、警戒が厳重すぎる。ゆっくりと書簡を取り出すと一番端で槍を向けている騎士に差し出す。


「白鳳騎士団からの召還命令によってグレン・ソーディアンが本日参りました。 白鳳騎士団への通しを御願い致します」


騎士は槍を構えたまま、兵士に書面を受け取らせて開かせる。そのまま書面が本物である事を確認し、やっと槍を上げると下級貴族用の待合室に通された。従者も連れない私に冷ややかな目が向けられるが、見栄だけで自活する子爵の四男にそんなものは用意できない。


「お待たせいたしました。 ご案内いたします」


 10分ほどだろうか、待たされた後使用人に案内され、通路で度々騎士達が横を通り過ぎていく。王都オーディンの東に位置する公爵邸は配下である11の騎士団と魔導師団の設備を備え、王城に近い大きな武力を有している。

 非常時や強大な魔物が現れた時は騎士団を派遣し、時には自ら出兵し鎮圧に当たる護衛兵団のようなものだ。ラクシャとリヒトは服が無いことを理由に断ったが、礼儀作法の面倒さを避けたいのだろう。正直私も面倒な言い回しなど余り覚えていないし作法もいまいちになってしまっている。

 公爵邸内には通されず、外縁の演習場を通り、使用人に案内され通された執務室には三人の姿があった。一人は貴族のローブを身に纏い文官だと分かるのだが、もう一人は騎士らしく軽装だが鋼の防具を身に纏い帯剣し、警戒されているのか片手は剣に添えられておりこちらを睨んでいる。

 少々空気がぴりぴりする中、一番奥の執務机の向こう側に兄が待っていた。


「久しぶりだな。 グレン」


 僅かなくすみさえない美しい金髪、涼しげな青眼、人の心を開かせるような優しい笑顔、爽やかな風が流れるような声に男から見ても欠点のない美形。白鳳騎士団副長 アークス・レオハート・シェリング・デューク・リーゼルネシア、2年前最後に会った時と変わらずその姿は神秘染みている。


「兄上、お久しぶりです」


 丁寧とはいえない挨拶に、側仕えの文官が苦い顔をしてこちらを見ている。貴族としての礼を欠いてしまったようだが、どの部分に問題があったのかも分からない私は貴族として三流なのだろう。


「その方! たかが冒険者の分際で、貴族に対して不遜な態度を取るとは斬り捨てられたいのか!」


 執務室の壁に控えていた護衛騎士が剣の柄に手をかけ、こちらを睨む姿をみた文官は青い顔になる。貴族の子息としては、無礼に対してはそれ相応に対処すべきなのだが、名乗ってくれないのでは相手の騎士がどの程度の身分にあるか分からず対応が取れない。


「身分を弁えよ」


 兄アークスが身分の事を言うと護衛騎士は意を得たりと剣を抜く。私は継承権がないとはいえ一応子爵の子息故、よほどの事でない限り裁判が行われた上で、処刑されるために無礼だからといって斬り捨てることはできないのだが、剣を抜いた護衛騎士は法にも口を出せるほど、格上の侯爵や伯爵家の者なのだろうか。それにしては随分と短絡的な行動に思える。


「セディハルト・レオハート・アルゼ・ヴァイカウント・ソーディアンの四男であり、私の弟でもある。 其の方が下がり退室せよ」


「しっ、失礼いたしました」


 青ざめながら剣を収め頭を下げ、騎士は足早に退室していく。この場に置いてもっとも身分が高いのは兄アークス、その命令に背くことが最も無礼に当たることくらいはわかるようだ。


「2年近く会っていなかったが、随分と逞しく感じれるようになった。 兄として嬉しいよ」


「兄さんこそ、随分と名を上げたようで父上と母上が誇っておられます」


 応接椅子の向かいに兄が座り、薦められやっと座ると文官がお茶とお菓子をテーブルの上に並べる。先ほどは青ざめていたようだが、元の顔色に戻っている事から、兄を信頼していると思ったほうがよさそうだ。


「問題のあった傭兵団を壊滅させたと聞いている。 兄として嬉しく思う」


「仲間が居たから出来た事です。 私一人では力が及びません」


「そうか。 子供達もお前に会いたがっていた」


 リーぜハルト家の婿養子となった兄、久しぶりに会ったが元気そうで安心していた。元の性格のよさもあったが、今では夫婦仲も良く当主である奥方との間に、2人の子を持つ親となっている。

 どちらも兄アークスよりも奥方のロータス様に似ているが、紛れも無く2人の血を引く天才児、2年前に会った時にはすでにC級冒険者並の力を持っていた。


「兄さんも昨年はドラゴン討伐を成されたと聞いております」


「民を護る為、貴族としては当然の事をしたまで。 グレンも子爵の子として護るべき民の為に剣を取って欲しい、そう私は考えるよ」


 兄アークスは聡明なだけではなく余りにも強過ぎた。それ故に騎士団に入団して2年、20の時に公爵家リーゼシアの当主の婿養子として、強制的に結婚させられてしまった。家を継ぐはずの長男が強制的に婿として取られてしまった為、次兄のクロムが継ぐとしてある程度の便宜ははかられている。

 近況を交えた雑談を終え、そろそろ本題に入るつもりなのか兄は文官を数歩下がらせた。


「それで兄さん本来の用は?」


「先ほど見たとおり、貴族からの推薦で入団した見習い貴族騎士の質と士気の低下が著しい」


 貴族は王宮や公爵家に息子や娘を騎士や文官として送り、自らの権力を強化や維持する事に繋がる。

騎士団はC級冒険者相当の実力があれば、見習いとして入団が許可されるのだが、権力による横槍で質の低下を招いていた。

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