表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
剣戟コピー乱舞
79/100

プロローグ

 よ~し、最後の展開はまだモヤっとしているけど、とりあえず更新しちゃおう。やっぱり自分を追い込まないとダメだな。毎週更新できるよう頑張ります。

 ベリメスからお願いを聞いた天見は、


「具体的な話に入っていくけど、その神剣はどこの誰が持っているんだ?」


「誰が持っているかは分からないけど、『コウヤ』って町にあるそうよ」


「持ち主が分からないの?」


「仕方ないのよ。神具を人間に渡す時は、回収も責任を持って渡した神がやることになっているんだけど、神と人間は時間感覚がかなり違うから気づいたら渡した相手が死んでたりして、神具が人手に渡ったとか盗まれたとか奪い取られたとかして行方が分からなくなることが多いの」


「なるほどね」


「人間界にいる神が見つけたら回収するようにしているのよ。基本的に神具は一代限り、神様がその人を見込んで渡すものだからね。世の中が混乱しないためにも継承はさせないの」


 天見は左手で左目にあるモノクルを触り、


「で、コウヤは遠いの?」


「けっこうね。列車か船で行けるといいんだけど」


「地図で調べてみるか。それで、予算は?」


「予算?」


 ベリメスが小首を傾げるのを見て、天見は嫌な予感を覚える。


「いや、ほらさ。その剣返してって言って、すんなり返してくれるわけないじゃん。たとえ本来の持ち主だったとしてもだよ。穏便にすまそうと思ったら、やっぱり買い取るか、代わりになるような剣を用意する必要があると思うんだよ」


「あ、それもそうね。それじゃお金の用意と、鍛冶の男神に別の剣を用意しておくように言っておくわ」


「それで返してくれる相手だといいんだけど」


 心配そうなため息をついた天見は立ち上がって、


「あら、早速?」


「いやいや、ファイナに明日からちょっと出かけてくるって言いに行くだけだよ」


「え? 言うの? あの子には関係なくない?」


「うん。俺も関係ないと思う」


 ベリメスの頭上に疑問符が浮かぶ。


「それならわざわざ言う必要はないんじゃない?」


「それがね~、この手の話ってこっちが関係ないと思っていても、相手が関係あるって思っている場合があるんだよ。すれ違っていた時の後始末の面倒さと言ったら半端ないよ。それを回避するため、事前に報告・連絡・相談をすることは大切なんだよ」


「ふぅ~ん、人付き合いも面倒ね」


 でも、何となく分かると思ったベリメスは、天見の肩に乗って同行した。


 トコトコとファイナを探すと、彼女は窓からの眺めがよい席に座り、紅茶を飲みながら本を読んでいた。


 ファイナはすぐ天見に気づいて、本をティーテーブルに置く。


「どうした、水鏡?」


「ちょっとやることが出来たから、コウヤって町に行ってくる」


「コウヤへ? 燕となにか約束でもしたのか?」


「どうしてあの子の名前が出てくるの?」


「燕の実家がある場所だぞ、コウヤは」


 妙な偶然に、天見とベリメスは驚きつつ目配せする。


「いや、燕のことは今知った。へ~そうなんだ」


「私達がコウヤへ行くのは欲しいものがそこにあるからなのよ」


「誰と行くのだ?」


「モドリスと」


「崑崙だよ。欲しいものが崑崙にも関係あるから」


 ファイナにとって妖精の名前は馴染みが薄いと思って言いなおしたら、彼女は怪訝に眉をひそめる。


「水鏡、一度は自分の命を狙った刺客と一緒にどこかへ行くというのは不可解だぞ。それは襲ってくれと誘っているのか?」


「そんな心配しなくても……あの時は事情があっただけで、怨恨で襲われたわけでもないし」


「危機意識が低すぎるのではないか? 不可解な」


 無表情だがどこか機嫌が悪そうに言う。天見は「まあ、心配してくれているんだろ」と好意的に受け取り、


「そんなわけで、明日からちょっと……」


「で、他には誰と行くのだ?」


 天見とベリメスは「ん?」と小首を傾げる。


「俺とベリメスと崑崙、あとは妖精のモドリスとたぶん猫のミヤかな」


「移動手段でも用意してくれるの?」


 椅子の手すりに置かれているファイナの指が、苛立たしげにトントンと叩く。


「それだけなのだな?」


 若干「だけ」の部分にアクセントが置かれていた。


 天見とベリメスはアイコンタクトをかわし、


(たぶん「誘え」って言いたいんじゃないの?)


(……来てくれるなら心強いからいいんだけどさ……どうしてこういう時はハッキリと主張しないんだろう?)


 ファイナはたまに臆面もなく気持ちを言葉にするけど、そっちの方が恥ずかしいと思う天見は疑問符を浮かべる。でも、とりあえず機嫌をフォローしておかないと、


「あ、ごめん。なんかファイナは当然来てくれるものだと思ってた。図々しかったかな?」


「……別に…………まあ、特に予定も入っていないので付き合ってやってもいい」


 当のファイナは無表情で手すりを叩いていた手で頬杖をつくが、心象のファイナは天見が自分と一緒にいるのは自然なことだと思っている節に、まんざらでもなさそうに腕を振って喜んでいる。


「水鏡に振り回されるのも、もう慣れたからな」


「やるべきことはそうないのに、やらなくちゃいけないことがなんかあるんだよ」


 天見自身、不思議そうに首をひねる。


(でも実際、振り回しているのはお互い様よね)


 ベリメスは声に出さずそう思った。



 天見が道程を調べると、スペリオルからコウヤまでは船で二日ほどかかる。


 崑崙の方へ連絡を入れて日にちを合わせ、三日後の週末に出発することになった。


 船旅が初めての天見は、念のため酔い止めを買いにベリメスと一緒に薬屋へ出かけた。それについて来たのがピエルナだ。天見より二つ年上の女性で、ファイナの『連理の枝』候補だった人だ。臨時の著作権委員ということで、天見の監視をしている。


「へ~、コウヤへ行くの」


 監視というには堂々すぎるが、天見と並んで歩いている。


「ええ、ファイナと崑崙も一緒に」


「なんでお姫様と二人で行かないの? コウヤって温泉で有名な地よ。混浴温泉でしっぽりと仲を温めてくればいいじゃない」


「遊びに行くんじゃないんだから」


 天見の肩にいるベリメスがピリピリとした口調で返す。どうもベリメスは明け透けな感じのピエルナをちょっと嫌っている(というか、天見に近づけたくないと思っている)。


「話に聞きましたけど、あっちは主食がパンじゃなく白飯らしいですね」


「そうよ。苦手な人もいるけどね~……天見君は食べたことある?」


「こっちに来てから市場で売っていた塩むすびを食べましたよ。さすがはスペリオル産の塩を使っていただけあって美味しかったです」


 ピエルナは「あ~、スペリオルは色んなものが売っているからね」と適当に返しつつ、天見に上手いこと誤魔化されたことも分かっていた。


 天見が聖クレストエルク魔法学園に転入してくる以前の情報は皆無で、著作権委員でも調べられなかった。白飯を主食とする地域は限られているので、以前に食べたことがあったらなにかのキッカケになるかもと思ったが……さすがにガードが固かった。


 和やかに他愛ない話をしながら薬屋についた。


 天見は定番の薬草や毒消し草などに物珍しさを覚え、色々と店内を物色する。その間に買うものを聞いていたピエルナが往復分の酔い止めを買い…………十分ほどしてもまだ飽きそうにない天見の腕を引っ張って店外に出た。


 そしたら、セリアとバッタリ出くわした。彼女は出会いに驚いたというより、見つかってしまったという素振りで慌てふためいている。


「あ、セリア。こんにちは」


 天見が軽く手を上げて挨拶をすると、セリアは勢いよく深く頭を下げた。あまりの勢いに二つにまとまった黒髪が当たりそうになる。


「こ、こんにちは、天見さん、ベリメスさん。え、え~っと」


「名乗ってなかったかしら。ピエルナ=カノールよ」


「……セリア=フラノール、です……」


 ほぼ初対面の相手なのでセリアは俯き加減で目元を前髪で隠し、オズオズと答えた。その隠れた視線は、チラチラとまだ組まれている天見とピエルナの腕を見ている。


「で、窓から店をのぞいてなにを見ていたのかしら?」


 気づかれていたことに恥ずかしさを覚え、頬を染めるセリアはいっそう顔を俯かせ、体の前で手をモジモジさせる。


 でも実は、セリアが天見を見かけたのはそれよりも前だ。道を歩いているのを見かけ、声をかけようとしたら綺麗な女性と並んでいることに気づいた。気になって後をつけ、薬屋に入ったので窓からコッソリ様子を見ていた。


「…………え、いえ……その、わ、私は今、何となく通りかかっただけで……そんな、あの……」


 その時、ピエルナが組んでいる天見の腕を引き寄せたので、そうなっていたことに気づいた天見が腕を引っこ抜いた。


 セリアはホッとしたが、ピエルナはちょっと面白くなさそうだった。


「と、ところで、薬屋でなにを買ったんですか?」


 少し気が楽になったセリアが、話題を変えるために尋ねた。


「週末にコウヤへ行くから必要になると思ってね」


 ピエルナから受け取った紙袋を上げて見せた。


「コウヤへ、ですか」


「知っているかしら?」


「え? ……は、はい……温泉で、有名ですよね……」


 ニヤリと笑ったピエルナが、ちょっと天見より前に出て、


「そこへ天見君とお姫様が行くのよ」


 ピクッとセリアの肩が反応したのを見て、ベリメスがため息をつく。


「別に二人きりじゃないわよ。私も行くし」


「そう。その他のお邪魔虫も」


 ベリメスはイラッと頭に怒りマークをつけたが、ピエルナは気にせず笑っている。ここで他の面子がその他とくくられたため、セリアは行くのが天見とベリメスとファイナの三人だけだと勘違いした。


「で、天見君がこの旅行でたぶん薬が必要になるだろうと言い出したから、大人の女性である私が、色々と教えてあげるためについてきたの。男の子の天見君だけじゃ分からないこともあるだろうしね」


 ピエルナは若干染まった頬に手をあて、しなをつくるように呟いた。


 天見は小首を傾げる。確かに間違っていないが、スペリオルが地元のピエルナに頼んで教えてもらいたかったのは道案内だ。


「だって、二人はまだ学生でしょ? もしもの時に薬がなかったら困るじゃない。将来的に問題になるかもしれないし、ひどくなって吐いたりしたら困るでしょ?」


「そうならないための薬ですけど」


「あ、そうよね。そういうための薬を買ったんだったわね」


 テヘッと笑ってピエルナはセリアの質問にそう答えた。


 黙って聞いていたセリアの髪が風でなびいた。


「セリア? どうかした」


「……………………」


 声をかけても反応がないので、天見はセリアの顔の前で手を振ってみた。


 いきなりセリアがその手を掴んで、涙目になった左目を前髪の間からのぞかせ、無言で訴えてきた。彼女自身なにを言えばいいのか分からないが、訴えかけられている天見は無言の圧に圧倒される。


「…………あの、もうダメ、ですか?」


「ダメって、なにが?」


 決意を秘めたようにセリアは天見の手を両手でつつんで、


「天見さん、その……」


 言い難そうにしているセリアを察して、


「もしかして、あなたもコウヤへ行きたいの?」


 ベリメスがちょっと的外れに聞く。こうやって聞くのも、天見が言っていた向こうが関係あると思っているパターンを思い出したからだ。


 いきなりの申し出に少し気が引けたセリアだが、もしかしたらこれが最後のチャンスになるかもしれない。そう思うと、不思議と勇気が出てきた。


「は、はい。もし迷惑でなければ」


「迷惑じゃないよ。セリアもいれば心強いし」


 天見にニッコリと許され、セリアは手を握りっぱなしなことに気づいてパッと離して後ろに手を隠した。


「あ、セリアは薬がなくて大丈夫?」


 天見が紙袋を見せつつ聞くと、セリアはボッと蒸気を上げて顔を染め、


「……え、あの……わ、私も、用意したほうがいいんでしょうか」


「ん? いや、俺はよく分からないけど、船酔いするんならやっぱり酔い止めは用意しておいた方がいいんじゃないかな」


 しばし時が止まり、セリアの頭上に「……………………」が長く素通りした。そして先程の比じゃないほどの蒸気が真っ赤な顔から上がって、


「す、すみません」


 止める間もなく背中を向けて走り去ってしまった。


 残された天見とベリメスは頭上にいくつも疑問符を浮かべ、ピエルナだけは笑い声を我慢してお腹を押さえていた。

 前回キャラのピエルナはからかうためだけに出て来てもらいました。ファイナとセリアを後から合流させ、天見が怒られるパターンも考えたのですが、天見はそこら辺の気遣いはできるだろうな~と思ってやめました。

 燕が実家に帰ってしまったので舞台をそっちに移します。残念ながらシャロン先輩は居残り組です。

 それでは、次回予告。武器を持った人達で賑わっているコウヤ。それというのも、どっかの道場が主催する武具大会が近日行われるからだ。興味を引かれて単独行動に出た天見とベリメスが出会ったのは黒髪の青年。「道場破りの立会人になってくれない」。

 次回更新は来週の金曜日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ