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ガールズ・バトル・パーティー  作者: 自粛城男
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1/9

① 帝国陸軍特殊猟兵部隊

ここは21世紀の日本によく似たような平行世界


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帝国陸軍特殊部隊編制課に所属する月野少佐は、都田大佐に呼ばれ執務室に向かっていた。

用件はあらかた想像できる。

多分あらたに新設される特殊猟兵部隊の編制であろう。

編制課というポジションと、かつて様々な軍関係の教育機関で教鞭をとったという月野の顔に広さを買っての依頼であろう。

月野は、少し緊張して都築大佐の執務室に入る。

都田は眼光の鋭い初老の女性である。

かつて鬼軍曹と呼ばれ、激戦を戦い抜いた歴戦の勇士であったが、大きな戦傷を負い、前線を退いた。

「ボス、いや都田大佐。新部隊の編制の件でしょうか?」

回りくどい言い方が嫌いな都田の性格を見越して、月野は、短刀直入に用件に入る。


「ああ、具体的な編成は、お前に一任したい。ただすでにいくつかの前提条件があるけどな」

「大佐のご意向ですか?」

「まさか、あたしのじゃないさ。」

都田大佐はそういいながら、新部隊の候補者リストを月野に手渡しながら続ける。


「弓巻心美という名前があるだろ。」

「弓巻?まさか弓巻重工の?」

「そうさ、弓巻重工のご令嬢だ。まあ深窓の令嬢というわけではないが、そいつの部隊にマイケルというのを入れておいてくれ」

「マイケル?個人情報も何も記載されていませんし、この写真もなんですか?着ぐるみ?」

「さあな、弓巻重工からの護衛かつ監視役だろうな。細かいことは何もわからん。

あとの人選はお前に任せるよ。大体は、花崎川と羽丘、月杜からの選抜だ。気になるやつはいるか?」


『花崎川』とは陸軍の特殊部隊の訓練校の通称である。対して『羽丘』は諜報部員の養成所。

そして『月杜』とは国防大学付属高校を指し、将来の軍のエリート育成機関である。


月野は、渡された名簿に目を通し、少し疑問を抱く。


「月杜の富家満智、羽丘の樋川といった子の能力が秀でているようですね。しかし花崎川には奥澤という凄腕がいたはずですが」

月野少佐は、花崎川での教官を兼務しており内部事情に詳しい。

「ああ、奥澤の名前はあたしも聞いたことあるな。これも我々の知らぬところでの忖度さね。

いずれにしても、明日までの月野の案を持ってきてくれ。1つの小隊は5名編成で、隊長、近接戦闘要員、長距離戦闘要員、電子戦要員、医療看護全体支援要員をうまく割り振っておいてくれ。そうそう言い忘れていたが、部隊の広報活動も考慮しておいてくれ。」


「盛りだくさんですね。かしこまりました」


・・・今日は徹夜かな・・・


そう考えつつ、月野は自室に戻る。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ああ、いい感じだね。さすが月野だな。これでいいよ。」

月野はほっと胸をなでおろす。


「実績などを考慮しますと結果的に同じ出身元で固まってしまったのですが。」

「構わないよ。最初はこれでいいだろ」

彼女が徹夜で作成した各小隊の編制案は以下の通りであった。


第1小隊

隊長    小山香織 (花崎川)

近接戦闘  花苑多美 (花崎川)

長距離戦闘 東本理恵 (花崎川)

電子戦闘  四ツ谷紗理奈(花崎川)

医療看護  伊吹沙織 (花崎川)

※花崎川の同期生を中心とした編制である。


第2小隊

隊長    上野原真理(羽丘)

近接戦闘  宇田島智子  (羽丘)

長距離戦闘 三竹凛   (羽丘)

電子戦闘  青木美香  (羽丘)

医療看護  鵜沢鶴美 (羽丘)

※第1小隊と同様に羽丘の同期生を中心とした編制となっている。


第3小隊

隊長    湊川明菜 (羽丘)

近接戦闘  宇田島明美 (羽丘)

長距離戦闘 樋川沙耶 (花崎川)

電子戦闘  黒金智子 (花崎川)

医療看護  今田律子  (羽丘)

※今田を除いては、各出身高で相対的に高い能力をもった人員にて編制した小隊である。


第4小隊

隊長    丸川綾香  (花崎川)

近接戦闘  古宮糸 (花崎川)

長距離戦闘 樋川姫子 (羽丘)

電子戦闘  長門真美 (羽丘)

医療看護  黒鷺千景 (花崎川)

※実戦よりも、広報活動を重視した見た目の華やかさを重視した部隊である。


第5小隊

隊長    弓巻心美 (花崎川)

近接戦闘  南沢郁美 (花崎川)

長距離戦闘 瀬島薫子   (羽丘)

電子戦闘  マイケル  (???)

医療看護  杉原果歩  (花崎川)

※実情を言うと、弓巻とマイケル以外は他の小隊を編制した後で余った人材を組み合わせた小隊である。


第6小隊

隊長    三葉うさぎ (月杜)

近接戦闘  筒ヶ谷桐子 (月杜)

長距離戦闘 富家満智七海(月杜)

電子戦闘  八汐留美  (月杜)

医療看護  倉木麻衣子 (月杜)

※月杜の同期生を中心とした小隊である。


「月野、では、早速の隊員たちを明日、この場所に集めてくれ」

「はい、えっ、大佐ここに集めるんですか?了解しました。」

その集合場所をみた月野は違和感を感じる。

「月野、詳細はこっちを確認してくれ」

都田は、月野のファイルを渡す。

・・・自動演奏人形?ドールズ?・・・

おおよそ軍務とか関係のない文字に困惑する月野。





その翌日、少女たちは、とある民間のビルの会議室に集められていた。


「教官、いや、すいません、月野少佐。つまりは、私たちが、そのドールに、すなわち自動演奏人形に偽装して国内外の各地に赴き情報収集や謀略活動を行うということなのですね。」

「樋川沙耶さん、その通りです。我々は、これからは民間の自動演奏人形派遣会社の一員として活動することになります」

「月野、いや、皆もよく聞いておくれ。今、樋川沙耶が、偽装と言ったが、あたしはお前たちには本物のドールに、自動演奏人形になって貰いたいんだ。

もちろん我々軍人としての任務は重要なものではあるが、それ以上にドールたちの歌声が、その演奏が、今の民たちをどれだけ力づけているかという事を十分理解してほしいんだ。

それとな、今後は、私のことは、オーナーと呼びなさい。あくまでも、ここは会社だからね。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【自動演奏人形サービスとは?】


主には依頼元先に出向き、依頼者が希望する楽曲を演奏する出張型サービスである。

かつて、生演奏はライブハウス、コンサートホールといった場所に観客を集めて行われいたのであるが、約50年に前に世界を襲った伝染病の影響で、一か所に人が集まることができなくなり、そういった場所は次々と閉鎖されていった。

また、大都市は強力な市中感染によって崩壊し、人々は各地方に分散して住むことを余儀なくされた。

さらには、伝染病の発生原因を巡った2大国の対立から世界大戦が起り、インターネットを中心として通信インフラの多くも破壊されてしまった。

しかし、そんな中でも音楽を楽しみたい、生の演奏を楽しみたい民の声は大きく、そういった声を聞いた音楽家たちは、出張型の演奏サービスを始めたのであった。

中でも4~5名のバンド編制によるロック、ポップス系の人気は高く、さらには、大手の興行会社が女性のみで編制されたバンドの演奏サービスを「自動演奏人形サービス(通称ドールズ)」として売り出したことがその人気に拍車をかけた。


まさに世は「大ドールズ時代」と言われるようになったのである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「皆さま、分かりましたか?。そういうことなので、先ほど発表した各小隊、いやグループ毎に明日までにボーカルや楽器などの各自担当を決めて下さい。」

月野は、全員を見やり話を続ける。不安げな表情をしている生徒も少なくない。

「中には歌唱や楽器演奏に不安がある方もおられると思います。そういった方は、ドールの養成所に通うのがいいかと思います。希望する方には、こちらから紹介状を用意いたします。ではこれにて解散です。」

「ちょっと待ってください。月野さん」

「沙耶ちゃん?まりなでいいよ。何?」

「何でここにクマがいるのですか?」

「沙耶ちゃん先輩。マイケルだよ」

「南沢さん、あなたには聞いていません!」

「あー、えー、これはですねー」

いままで無言だったクマ、というかクマの着ぐるみがいきなり話だしたので、皆はびっくりする。

「沙耶ちゃん、これには、いろいろと大人の事情があるんだよ。」

月野は手でクマ着ぐるみの発言を制して言う。

「しかし、さすがに、これは、ちょっと。私たちとしては、これから共に戦う仲間の素性を知っておきたいと思うのですが」

「いいじゃん、お姉ちゃん。部隊の中にクマがいたって問題ないじゃん。私はマイケルに『るんっ』てきたよ」

「姫子!やめなさい、その『るんっ』ていうあなたしか通用しない暗号使うの」

「沙耶は仲間のことを十分に知りたいんだね。なんて儚いんだ」

「瀬島さん。あたりまえです!港川さんもそう思いませんか?同じメンバーの中にクマの着ぐるみがいるを許せますか?」

「沙耶、私は、別に構わないわ。しいて言うなら猫のほうがよかったわね。」

「あはっ、明菜は猫好きだもんねー」

「律子、そういえば第1小隊の小山さんの髪型、少し猫耳っぽいわね」

「明菜、香織のあれは星を意識したものらしいよ」

「そうなの?でも猫っぽいくて、可愛いからいいわ。そうだ律子。小山さんを私たち第3小隊に入れるように交渉して」

「はあ?明菜。さすがにそれは無理だよ。あたしの交渉力をもってしても無理だよ。私の見た目ギャルだけど、中身は家庭的な乙女っていう設定をもってしても無理だよ。大体一つの小隊の定員は5名と決まっているし」

「そうなの、じゃあ、律子が第1小隊に行けばいいわ。トレードよ」

その言葉を聞いた途端、律子はその瞳に涙を溜め、いまにも泣きそうになる

「あ、明菜、じょ、冗談でも、そ、それはないよ、あたしが明菜と一緒にいないと生きていけないことしってるじゃん。あたしが愛がくそ重いガチレズの百合勢ってことわかってんじゃん。もうあたしが猫耳つけるからそれじゃダメかな?」

「分かったわ律子、でも泣くほどの事?まあ小山さんは諦めるから、今夜は猫耳つけて私の寝室にいらっしゃい」

「今田さん!あなたの猫耳は性的すぎます。その手のお店的すぎます。風紀が乱れます!」

沙耶が、律子を睨みつける。


「あ、あの・・・」


赤いメッシュを入れたショートカットの生徒がもじもじしながら湊川に声かけてきた。第2小隊の三竹凛だ。

「湊川さん、もし、いやそんなことはないんですが、絶対ないのですが、もし万が一、あたしが猫耳つけたらどうしますか?」

「凛、ほれっ」

青木美香が三竹の後ろから三竹の頭に猫耳をつけた。

「み、美香っ、お前ええ、やめろおお」

「三竹さん、うちに、第3小隊にいらっしゃい」

「ゆ、明菜!だからもう、その話はやめてよ!!!」

律子が悲鳴を上げる

「凛があああああ、行くならああああ、私もおおおお、一緒にいくよおおおお」

いつの間にか、自分も猫耳をつけた青木美香が口をはさんでくる

「美香、お前、猫耳似合うなあ」

宇田島智子が美香の頭を撫でる。

「美香ちゃーーん、猫耳かわいいい」

青木美香のいつも自我自賛。

なんかわちゃわちゃしてきた。

「みんな!盛り上がっているところ悪いけど、そろそろお開きにしてくれない?」

半ば呆れ顔の月野が彼女たちの話に口をはさむ。

「あーそれと、バンド名よバンド名。それも決めてきてね。」


生徒たちは、おしゃべりをやめて解散した。

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