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79 ー次の場所ー

「そんで、どうしたって?何やった?」

「やってない」


 何もしていない。それでもクビになった。

 昨日からの出来事を一から話すと、ナラカは興味なさそうに首元をかいた。


「リン大尉が謀反を企んでいたとして、お前がクビ程度で済むなら、それは違うだろう」

「私もそう思う。でも、変だなってことも多い」

 ハク大輔と大尉が組んで謀反を企て、それにシュンエイの父親が関わっていれば、盗みだと叫ぶ理音は邪魔だろう。叫ばれたら、ついでにユムユナもアスナも邪魔になるかもしれない。騒ぎにならない内に消してしまった方が得策なのだ。

「だが、お前は逃がされた。そのユムユナってのとリン大尉は繋がっていない。それは別件だ」

「それは私もそう思う。でもクビ程度だったから、大尉は別に何もしてないのかなって。部下のユウリンさんはフォーエンびいきだったし」

「リン大尉は白か。それはまあ、納得いく。元々皇帝寄りだ」

「前、言ってたもんね。でもハク大輔と繋がってるのは、おかしいんでしょ?」

 ナラカは何か考えたか、口を閉じて無言を続けた。

「大尉に嫁いだ商家は、いい商売をしているがな」

「いい商売?」

 ナラカが言うと、とても善には聞こえない。それは正解であったが。


「あの商家は、地方の町に武器を売っている。町の警備やらのための武器だ。そう言うのは大体町が決める。どの商家を使ってどの武器を買うかを。だが、売ってる武器の割に羽振りがいい。裾野を広げて王都にも商売を始めたからかもしれないが、王都も貴族ってのは買う店ってのが大抵決まってるんだよ。代々みたいのがあるからな。ならどこに売るかって言うのなら」

「…まっとうなことに、使わないとこ?」

「そう言うこと。この国は安定していない。いきなり謀反てこともある。各家で武器を集めているところも多いだろう。表向きは決まった場所に頼み、裏では保険で強力な武器を取引する。謀反ついでに自分の家を襲われたら困るからな。そう言う家に売っている物は多い。また、謀反で使うための武器の供給も可能だ」

「何か知ってるの?」

 そのための供給を行なっている相手を。

 ナラカは一度間をおいて話し始めた。どうせわからないんだろうな、の横目をよこしながら。


「ハク大輔は一番皇帝に近い。二番目に近いのが、皇帝の従兄弟に当たるシヴァ少将。こいつは病弱だから先に死ぬかもな。その次だ。皇帝の又従兄弟になるヘキ卿がいる。皇帝の祖父の弟の孫だ」

「うーん。うん。うん?うん」

「わかってないだろ」

「や、わか、うん。わかった。従兄弟か又従兄弟。シヴァさんとヘキさん。はいはい。で?」

「ヘキ卿は遊び人で、基本やる気がない。いつも女と遊んでいるような男だが、最近になってとある商家と繋がり始めた」

「それがシュンエイ様のお父さん?」

「そうだ」

「じゃ、武器集めてる?」

「購入をしている。表向きだがな。ただし、裏でも購入している」

「なら、めっちゃ黒じゃん」

「だが、何度も言うが、ヘキ卿のやる気のなさは最悪だ。遊びすぎて、まず王宮に来ない。妻が三人いて子供も何人かいるが、他にも女がいて、一体何人子供がいるかわからない。それでいて遊び続けている。皇帝もさじを投げている状態だ。野心がないため放置されているとも言われているがな」

 それは中々、最悪な男である。フォーエンが嫌いそうなタイプの男だ。真面目に働かないのには容赦ないだろう。


「でも、怪しいんでしょ?」

「皇帝を取れる位置にはいるが、本人が興味ないだろうな。それでも商家が入り込んでいる。演技をしているのであれば相当だ。お前、入り込んでみるか?」

「え、そうなるの?」

「住む場所ないんだろうが。行ってこい。調べてこい。女にだらしないから、手を出されても文句言うなよ?」

「それは言うよね。てか、入り込めんの?」


 それこそ怪しいではないか。

 ナラカがだ。

 一体どう言うコネで入り込むと言うのだろう。


「それくらいできる。明日から入れ。今日は仕方がないから、宿を提供してやる。入り込んで俺に情報を渡せ。下らんことを口にすれば、お前の侵入はばらす。どうだ?」

「脅しといて、どうだって言うの?いいけど。どうやって情報渡せばいいの?」

「それは今後考える。しかし、お前も適当な女だな」

「ナラカに言われたくないよ。でも助かったー。どっちにしても、ナラカに職ないか聞こうと思ってたんだ」

「お前、大概だな」

「だって、こっちの知り合いってナラカしかいないし」

「皇帝がいるだろ」

 フォーエンは知っている人間である。だからと言って、そこらで声をかけられる人間ではないとわかっているだろうに。

 それに、前は囮として使われていたが、今回はそうであるとは限らない。


「皇帝は庶民から遠いよね。今日のお宿も助かったー。あ、でもお金あんまない」

「出世払いな」


 ナラカが何者と聞いても彼は答えないので問うても無駄なのだが、昨日の今日で、まがりなりにも皇族の屋敷にほいほい働きに入れられるその力は、一体どこから出てくるのだろう。

 チンピラ風であるが政治の人間関係に詳しく、皇族の屋敷にバイトを斡旋できる立場とは、一体どう言うものなのか。

 ナラカ自身が高位であるとか、それはなさそうなのだが。



「リオン。では、そこを端から端まで、綺麗に掃除を」

「わかりました」


 今回は、お掃除婦である。

 箒と桶と雑巾を持って、ヘキ卿の屋敷を十二分にも綺麗にしなければならない。


 正妃が潔癖レベルの綺麗好きらしく、そのせいで掃除婦が不足していたそうだ。

 掃除婦であれば、ある程度の場所まで紛れ込めるだろう。とのナラカのお達しだ。

 そして早速、潜入捜査が始まったのである。


 おかしいと思えることがあれば、何でも報告することが義務である。

 おかしいこと。つまり、武器や食品の過剰備蓄。または、その動き。

 動きとは曖昧な表現だが、何かを計画していれば、明らかに動きがおかしいだろう。との見解である。

 それは何となくわかるので、その何となくおかしいと思った物は何でも報告するわけだ。

 これらは、理音にとってはフォーエンのためになるだろうと思って行うわけである。

 また、食い扶持にありつけるならばどこでもいい。と言う面もあるわけだが、ナラカにとって、その結果がどんな意味を持つのかは、よくわからなかった。


 ヘキ卿が黒の場合、ナラカは何をするのだろう。

 それは、一体どこに報告されるのだろう。


 これだけの屋敷に入れる力を持っている人物が、ナラカの上にいるのだと思うのだが。

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