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憲太は妖怪料理人になりました  作者: ジャン・幸田
その壱:クビにされてしまった!
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俺に流れる妖怪の血は?

 結局のところ何しに来たか知らないが、嫌な二人は帰って行った。それからお袋と二人で晩を食べたが、失業してからというもの近頃は会話が少なかった。もっとも、朝早くから夜遅くまで働いていたので、一緒に食べる事もすくなかったが。でもこの時、どうしても聞きたい事があった。俺に流れる妖怪の血は何かということだ。


 その時まで俺は親父に流れていそうだと考えていた。あまりにも性格が破天荒だったらからだ。熊のような体に大酒飲み、おかげで借金だけ作って死んでしまった。そんな、親父は嫌いだったが、いまは自分の秘密を隠したまま死んでしまったかと思っていた。


 「お袋、まさか俺に妖怪の血が流れているのか? 知っていたら教えてくれ」と唐突に切り出してしまった。その言葉にお袋の箸を持つ手が止まった。お袋は紗那しゃなといって、同級生から美魔女といわれていた。戸籍上五十二歳のはずだが、どうみても二十代前半にしか見えなかったからだ。おかげで姉弟と間違えられる事もシバシバあった。


 「お前、どうしてそんな事を思ったんかね? 妖怪だったら何か変化へんげできるだろう」といったので、今までも事を話した。フォシャーさんのことや妖怪の血を引くものしか読めない本が読めたことなどを。すると、何か諦めたような事を言い出した。


 「あたし、一生言わないでおこうと思っていたけどしかたないわね。父さんじゃないわよ妖怪の血を受け継いでいるのは、わたしなのよ!」


 意外な言葉に俺はびっくりした。通常なら亡くなった親父にバケモノの血が入っているけどお前には関係ない、といった答えが返ってくるはずだと思っていたからだ。まあ、美魔女といわれるぐらい若すぎるからしかたないか。


 「もう気付いているかもしれないけど、あたし今年で五十二歳のはずだけど、本当は七十二歳なのよ! それで大人になったのが五十年前だから、この時生まれたことにしたのよ」


 そういわれ訳がわからなくなった。もし本当だとするとお袋の正体は一体なんなんだと。そういうとお袋は持っていた包丁で左手の親指を切りつけた!


 「お袋! なにをやっているんだよ! はやくバンドエイドを持ってこないと!」


 「憲太! 心配しなくてもいいのよ。まあ見ていなさい!」


 見ている前でお袋の指から出ていた血が止まり、あっという間に傷口が閉じていった。そのとき、顔に少し痛そうな表情が浮かんでいたが、元の笑顔に戻っていった。


 「お前、八百比丘尼やおびくにの話を覚えているか?」


 「ああ、人魚の肉を食べて八百歳まで生きたという人間だろ! まあ人間というよりも妖怪だよな、あれって」


「まあ妖怪みたいというだろね。でも口の聞き方は気をつけなさい。お前もあたしもその妖怪の末裔なんだぞ! だからあたしは七十近くでも三十に見えるわけよ。まあおそらくあと三百年は生き続けるだろうね。でもお前は人間の血の方が濃いからあたしのように治癒力はないし老化の速度も速いと思うわ。それでも後二百年は生きるだろうね」


 そんなびっくりな話を聞かされ驚いていたが、お袋は戸棚から古い写真を取り出してきた。そこにはお袋が写っていたが、写真は白黒だし背後に走る車も古めかしかった。


 「これは半世紀前のあたしなのよ。どう、今と比べたら髪形以外は一緒でしょ!」


 その写真を見て俺は理解というか納得するしかなかった。


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