表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歪んだ世界の中で  作者: わっしょい
第一章 冤罪人【ユウマ・カザハラ】
9/9

9.命

地面が弾ける。


ユウマは転がるように避ける。


息が追いつかない。


視界の端で、また攻撃が来る。


「っ……!」


避けきれない。


――当たる。


そう思った瞬間。


「下がって!」


ミナが前に出た。


ユウマとセレスの間に、無理やり割り込む。


次の瞬間、衝撃。


ミナの体が弾かれる。



音が遅れて届く。


地面に叩きつけられる鈍い音。


「……は?」


ユウマは動けない。



「おい……」


意味もなく近づく。


「なんでだよ……」


敵だったはずだ。


なのに、庇った。



ミナの体が、わずかに動く。


まだ、息がある。


「……セレス、先輩……」


かすれた声。


「喋るな」


セレスが言う。


今までより低い声で。


すぐ近くまで来ている。



「……違います」


ミナは続ける。


「この人は……違います……」


息が途切れそうになる。


それでも言う。


「だから――」


「いい」


セレスが遮る。


短く。強く。


ミナの言葉が止まる。


「それ以上、喋るな」


怒りでもない。焦りでもない。


ユウマは動けない。


何も分からない。


ただ見ているだけ。



ミナはかすかに笑う。


「……すみません」


セレスの手が、わずかに震える。


「やめろ」


低く言う。


ミナはもう動かない。


完全に、止まる。



静寂。



数秒。


いや、もっと長く感じる時間。



やがて、ゆっくりと立ち上がる。


顔は見えない。


俯いたまま。


ユウマが声を出す。


「……違う」


小さく。


「俺は――」



セレスが顔を上げる。


その目は、完全に変わっていた。



「……黙れ」


低い声。


今までとは明らかに違う。


感情が抑えきれていない。


「……なんでだよ」


ユウマが言う。



セレスは答えない。


ただ、一歩前に出る。


「任務を続ける」


声は震えていない。


剣を構える。


ユウマは後ずさる。


セレスは止まらず、踏み込む。


ユウマは逃げる。


何も分からないまま。


後ろに残るのは、ミナの体だけ。


夜の街に、戦闘音が戻る。


セレスの原動力、それはもう任務じゃなかった。

(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ