官能小説連載中!
私は巨大魔法研究所で助手をしていた。
仕えているのは、小柄で可愛らしい見た目の女性教授だ。
教授はいつも、研究所の地下深くにある研究室へこもって、一人で作業をしている。
ある日、その姿がなんだか寂しそうに見えてしまった。
――そうだ。研究室に植物でも飾れば、少しは明るくなるかもしれない。
そう思い立ち、私は地下から外へ向かって歩き出した。
巨大研究所は階層構造になっていて、最下層から地上まではかなり遠い。
階段を上がりながら息を切らしていると、途中で“動く植物”を見かけた。
「ああ、そういえばこんな種族もいたっけ」
普通の植物とは違い、彼らは意思疎通ができる。
しかも、見た目がなかなか可愛い。
せっかくだし声でもかけてみるか、と私は彼らの集落へ向かった。
集落には、人の姿に変身した植物たちが何人もいた。
事情を説明すると、彼らは驚くほど好意的だった。
「そんな光栄なことはない!」
口々に歓迎してくれる中、一人の男性が勢いよく前へ出てきた。
「ぜひ俺を連れて行ってくれ!」
教授が一人にならなければそれでいい。
私は軽い気持ちで、その男性を採用することにした。
すると彼は、少し言いづらそうにこう言った。
「俺、猫なんだけど……大丈夫かな?」
よく見ると、頭の上にピコピコ動く虎耳のようなものがある。
……可愛い。
むしろ猫なら癒やし効果も高いのでは?
そう思った私は、すぐに頷いた。
「大丈夫、大丈夫!」
しかし返事をしたあとで、ふと思う。
女性教授と男性の猫。
組み合わせとして大丈夫だろうか。
……まあ、きっと大丈夫だろう。
私は深く考えないことにした。
ただ、さすがに勝手に連れて行くのはまずい。
サプライズより先に許可を取るべきかと思い、再び最下層の研究室へ戻ることにした。
だが、行きと同じように階段を使うのは正直しんどい。
「ショートカットできないかな……」
そう考えて、私は近道になりそうなジャングル地帯へ入った。
その直後だった。
――バキッ。
床が抜けた。
宙へ放り出され、視界が凄まじい速さで流れていく。
私は重力に引かれるまま、一気に下へ落ちていった。
「これマズい!」
必死に手を伸ばし、空中に垂れていた長い植物の蔓を掴む。
なんとか床への激突だけは回避できた。
「危なかった……」
そう安堵した瞬間、
夢が覚めた。
私は夢日記を連載している。
忘れないうちに書き残そうと思い、研究室のパソコンへ向かった。
そこでふと気づく。
教授の見た目が、別サイトで連載している官能小説のキャラに妙に似ている。
せっかくだし、そのキャラの名前を使おうと思った。
私は研究室のパソコンで、その官能小説のページを開いた。
すると、第一話が四回読まれていて、さらに“怒り評価”が二件ついていた。
「おお、怒り評価」
そんなに反応をもらえたのが妙に嬉しくて、私は満足してページを閉じた。
……あ。
キャラ名をメモするのを忘れた。
そう思い、今度は家のパソコンの前に座る。
そして官能小説のページを開こうとして――手が止まった。
「あれ?」
そもそも私は、官能小説なんて連載していない。
そこでようやく、全部夢だったことに気づいた。
お読みいただきありがとうございました!




