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二十二話 異世界訪問

 いつから眠ってないのかあまり覚えてないが、ミノタウロスを階層分処理してから食事と水分を摂取しつつ、次の階層へ降りるために階段を降りる。


 やはりというべきか当然と言うべきか、下に降りてもミノタウロスが延々と続いていき確かに武器の損耗と比べてミノタウロスばかりいるのなら人気が出ないのも納得のアトラクションだ。


 ただ何日も籠って斬り続けた成果として氷月が何もしてないでだらだらする生活よりも強度を増して胴体は斬れずとも通常個体であれば腕か足を切断できる程度には成長してくれている。


 処理の時間も手短く済まして階層に残りがいないのを探して生き残りがいないように斬っていく。

 良い穴場を教えてもらったものだ。これならゴブリンを狩らなくても十分儲かってるはずだ。探す手間も無ければ降りれば降りるほど山のようにミノタウロスがいるのだから。


 疲れも休んで癒えれば次の。一帯を斬り捨てたら回収を忘れずに。バッグの中が角ばかりで埋め尽くされてきたら角を捨てて代わりに魔石を。


 大きいミノタウロス以外の角以外を捨てて魔石が詰まったバッグになったところでそろそろ戻るべきかと今回は一旦帰ることにして、スタッフが再度ミノタウロスを用意したのか隅の方にいるミノタウロスを処理しつつ上に戻っていく。

 結構な量の携帯食量を用意していたはずなのに今では心もとないので結構な日数ここにいたことを感じながら上に戻っていくと見知った音が聞こえる。それに近づけばアド師匠が険しい顔で来ていた。


「全然戻ってこないから心配したぞ…っていうか返り血一つ浴びてないのな…」

「靴には…血が付いてますよ」

「とにかく二週間もずっと戻ってこないでミノタウロスを倒してたのか?」

「はい…バッグが入りきらないので帰ろうとはしてました」

「はぁ…あんまり心配かけんなよ?」

「はい」


 せっかくアド師匠が来たのなら捨ててきたミノタウロスの角を代わりに持ってもらおうかとも思ったけど、不機嫌そうなので大人しく帰ることにする。


 階層の隅にいるミノタウロスも残念だけど放置してそのまま真っすぐ戻れば久しぶりの外を感じる。


 外に出たミノタウロスはスタッフが回収してないのか腐敗臭がして放置されたままだ。


 二人で歩きながら進んでいくと少し肌寒い季節になったなと秋を感じる。羽織を纏ってから王都へと帰還してギルドに行けばいつもの受付嬢が笑顔で出迎えてくれる。


「アドさん、アカネさんご苦労様です。どうでしたか?」

「相変わらずアカネが戦闘狂いだったよ。心配して損したぜ」

「問題…ありませんでした」


 お辞儀をしてからバッグを渡して、タグも必要と言われてタグも渡す。

 そういえば一応依頼として受けたんだったことを思い出して今回の報酬はどんなものかを期待しながら待っていると。戻ってきた受付嬢が苦笑しながらバッグを返してくれる。


「マジックバッグはアカネさんに必要だったんだなって再確認しました。金額は目標金額に到達してますよ」

「それじゃあ…もう一度潜ってきます」

「え?十分な金額稼いだと思いますが…?」

「お前はどんだけ戦いたいんだよ…ティーナちゃんが家のことも何とかしてくれてるから様子でも見てこい」


 まだお金を稼いでない段階ですでに家を作り始めていたのだろうか?受付嬢に感謝を込めてお辞儀をしておく。


「アカネさんなら問題ないだろうなと思っただけですよ。それよりも建築を見に行くのはいいんですが、アカネさんを呼んでいた冒険者がいたんですが…お知り合いかどうか確認してもいいですか?」

「父ですか?」

「いえ、女の子でしたよ。アドさん、一応個人情報ですので少し離れてもらえますか?」

「俺が?パーティ組んでるのにか?」

「その…あとでアカネさんが話しても良いならアカネさんから聞いてもらえたらと思います」


 わざわざアド師匠を追い返す必要があるのかと聞かれたら別に聞かれて困る話など一つもないと思う。

 私がアド師匠の服を掴んで止めると、その様子を見た受付嬢が笑いながら頷いてくれる。


「口外はしちゃだめですよアドさん」

「おう。なんか悪いなアカネ」

「いいえ」


 個室に案内をされて、席に座ると私には果実水。アド師匠にはお茶が用意されてそれを飲みながら受付嬢の話しを聞く。


「なんと言えばいいんでしょうね…最初は何事か分からなかったんですがギルドマスターに聞いたところ稀にある事象とだけ説明を受けて、アカネさんに話すのですが。異世界というのをアカネさんは知ってますか?」

「いいえ」

「そうですか…。ただ、アカネさんのことを異世界から来た人だという人が現れましてね。その人曰くニホンとかアメリカとかを知ってるはずだと言うのですが。知ってますか?」

「日本は故郷ですね…アメリカは知識だけなら」

「つまりアカネは異世界から来たってのか?異世界を名乗る奴って大抵魔法使いになってないか?それと異世界を言う奴は大抵魔法とか知ってたり色んな知識持ってんだろ?」

「アドさんの言う通りですが、中には異世界を知らない者もいるようです。アカネさんが使ってるカタナと呼ばれる武器は異世界の武器だそうで、その噂を聞きつけて東のギルドからわざわざ来訪してきたそうですよ」


 同郷なのだろうけど、私がいたのは九州地方だ。それ以外の場所なら私の知り合いではないし旅行の類も行ったことがないので恐らく無関係の人物だと思う。


「アカネさんが会いたいなら会ってみてくれませんか?マユミという名前で魔法使いです。ランクはアカネさんと同じくCですが、向こうのギルドがくれた紹介状だとパーティ込みでの評価らしいです」

「剣士じゃないなら…会う必要はないかなと」

「いいのか?アカネからしたら父ちゃんの情報を知ってるかもしれないんじゃないか?」

「父は…剣以外興味ない方なので」

「アカネとそっくりなんだろうな」


 誉められてしまったが父にはまだ劣っている私ではそっくりとは言えないだろう。


「というか、会ってどうする気なんだその子は?」

「恐らくパーティに誘われるものかと…そうでなくても同郷の人にとにかく会いたいと言った感じでしたね。以前のパーティーも抜けてきたそうですよ」

「覚悟は感じるな…会うだけならいいんじゃないかアカネ」

「私は…会う必要を感じませんが。アド師匠が言うなら会います」

「お、おう」


 会って話すことなんて特にないのだが。それでもアド師匠が言うなら挨拶くらいは交わしておくべきなのだろう。

 受付嬢も「明日も来ると思うので待っていただけたら」と言うので仕方なくミノタウロスのダンジョンは後回しになってしまう。


 はっきり言ってしまえばパーティーも組む必要が無いと思う。私は氷月と一緒に剣を極めていくし、魔法使いというのなら方向性がそもそも違う。


 話しが終わりアド師匠と一緒に北の建築作業場へと向かう。


「やっぱり俺よりもその子と一緒にパーティ組んだ方が良くないか?」

「なにゆえ…?

「同郷もそうだけど、俺と組んでても一緒にやれることないだろ?それなら楽しくいられる方がいいだろ」


 アド師匠は楽しいことを求めるようによく言ってくる。そうなると私はこれから毎日剣を振り続けていくだけだから結果的に言えばどちらが楽しいかと言えば打ち稽古を行えるアド師匠と一緒にいた方が楽しいと言える。


 ただ剣の事ばかり話すとアド師匠が不満な顔になるのでもう少し言い方を考えてみる。


「楽しいかは分かりません」

「試しに一緒にパーティ組んでみたらどうだ?それでも俺と一緒の方がいいなら俺もそれでいいと思う」

「アド師匠は…機会があれば私を遠ざけようとしますよね」

「いや、違う!そうじゃなくてな。同じ女の子だろ?その方がアカネも楽しくなれると思って言っただけで他意はない」


 趣味が合わなければ大抵の人は性別関係なく楽しくはないだろう。私は面白いことも言えないし。

 そう考えたらアド師匠の考え方と私の考え方が合わなくて私と一緒にいてアド師匠はつまらない思いをしていたのかもしれない。


 ある意味納得できたので、パーティは会ってみてから考える。

 建築現場まで辿り着くと、魔法を使っているのか私の知ってる建築ではない作り方をしていた。


 それでも真面目に作っているのは十分に伝わって、支柱などには釘みたいなものやネジみたいなもので補強している…気がする。


「この調子なら立派な建物になりそうだな」

「そうですね」

「アカネ、さっきの件だけど俺はできれば一緒にパーティ続けていきたいと思ってるからな」

「はい」


 返事はするけど人の心は分からない。移ろいでいくものだとは分かっているつもりだが、そもそもアド師匠は乗り気ではなかったのもあってあまり固執するべきではないのだろう。


 大体は見物できたので、今日は解散という流れになってから私は銭湯に行ってから宿に戻る。


 宿で髪の手入れをしていると少し荒れてる気がする。回復魔法をかけると艶やかにはなるのだが美容院でもいかないと毛先の方まではなんともならないかと思って明日諸々の用事が終わればフリティアの所で良い場所が無いか聞いて来よう。


 この国に来てから何カ月経ったかも覚えてないが、前髪も目にかかっているし伸びてきて邪魔だ。いっそおでこを晒すくらいばっさりと切ってしまおうかと思いながら眠り。次の日を迎える。


 早朝になり魔法という物の便利さをありがたいと感じながら身綺麗に整えて羽織を纏ってから氷月に朝食も与えつつギルドに向かう。


 いつもの受付嬢を目にしてお辞儀をしてから空席に座ろうと思ったら、今日は個室の方で待っていてほしいと言われて果実水のピッチャーを置かれて受付嬢は部屋から出ていき、貸し切り状態の部屋で一人ちびちびと果実水を飲む。


 ここまで徹底して情報を遮断する意味が分からないが故郷が日本だと不都合でもあるのかもしれない。


 しばらく待っていれば受付嬢と一人の女の子が入ってくる。身長は私と同じくらいだろうか。年齢も定かではないが若いと思う。


「お待たせしてすいませんアカネさん。こちらがマユミさんです」

「初めましてアカネさん。本名はマユミですけど…この世界ではリリーと名乗ってます。日本人だと思ってここまで来ました」

「初めまして」


 マユミなのかリリーなのか分からない人が向かいに座ってから受付嬢がマユミの果実水を用意して同じく向かい側に座る。


「アカネさん!本題に入るんですけど異世界同盟を組みましょう!」

「同盟…?」

「はい!私たちはこの世界だと無力です。ですけど知識が少しでも役に立って色んな事が出来ます。なので異世界の人たちで集まってパーティを組んでから自由に過ごしませんか?」

「…私は無力ですが…マユミ「リリーとお呼びください」リリーは魔法使いなのですよね?」

「この世界の魔法は私達が思ってるより万能ではないと言うか…使い方が凄く難しいんですよ。アカネさんは剣道をやってたんですよね?」

「いいえ」

「あ、違いましたか。それでも刀を使うということは異世界に順応しようとしてるんだと思います凄いです!けれどそれだと限界があると思うんです。なので異世界の人たちで集まってまずは知識を集めようという流れなんですけど…えっと…アカネさんは嫌ですか?」


 なんとなく話しが分かった気がしないでもない。ただ私は機械に疎いし、知識と言われても剣にしか生きてきてない。

 魔法が難しいというのは濁ったほうの魔法を指してるんだと思うけど別に私が求めてる技術はそこにない。


 多分、銃とかそういう文明的な武器を作りたいのかもしれない…だからこそ余計に私じゃ話しにならないと思う。


「私は…知識がないので遠慮します」

「いえいえ!故郷が同じであればこそ協力したいんです!どうでしょうか?今はまだ私ともう一人男の子がいるんですけど、そちらの方でも勧誘しているところなんです」

「リリーさん?その話は伺ってませんでしたが?」

「す、すいません。あまり公にするのも駄目かと思いまして…ただ悪い人じゃないですよ?私が困っていたところを助けてくれた人なんです」


 そこの辺りの話しは私に興味がないので別に二人で話しててもらって結構なんだけど。

 やはり遠慮しておこう。私は銃などに興味はないし剣さえあればそれでいい。


 二人のやりとりが終わるのを待ってから。改めてリリーを向いてからちゃんと答える。


「私は剣の頂きに辿り着きたいだけなので遠慮します」

「それってこの世界でですか?無茶ですよ!色んな化け物…魔物がいてこの世界の人でも苦労してるんですよ?」

「地上の生き物…であれば私は斬れます」

「空も飛んだりしてます!ドラゴンだっているくらいですから。ゲームの生き物が現実にいたら人間なんてほとんど無力ですよ!」


 どらごん…銅鑼ゴーン…ゲームの生き物ということはなんかファンシーな見た目をしたマスコットキャラみたいな魔物のことだろうか?

 ミノタウロスやゴブリンを思い出すけどあれはマスコットと呼べるほど可愛らしかっただろうか?


 なんというかお互いに致命的に話しがかみ合ってない気がしてならない。


「横から失礼しますが…リリーさんはアカネさんの実力についてはどこまで知っているんですか?」

「刀を使う妙な剣士が一人で冒険者をやっているという噂を聞いてから来ましたのであまり知らないですよ?」

「アカネさんはリリーさんが脅威だと思っている魔物を一人で数百を倒して二週間ダンジョンに潜って傷一つ負わない程度の実力者です。あまりやりたくはないですがギルドから正式に通達としてアカネさんが嫌がった場合それ以上の干渉はやめていただくように申し上げます」


 また二人で話し合うようなので果実水を飲みながら話しが終わるのを待っていると「そんなことできたらなんでCランクなんですか!」とか色々話し合ってるけど日本でもそんなランク制度に拘ってる文化なかった気がする。


「とにかく、リリーさんは勘違いしてますがアカネさんは一人でも大丈夫ですよ?」

「そ、それなら証拠を見せてください!そしたら…信じます…」


 証拠と言われても魔物を一緒に斬りに行けばいいのだろうか。


「アカネさん、申し訳ありませんが果物を斬ってもらえませんか?果実水に入れる用に細かく斬ってくれると助かります」


 そう言われて果実水に使われてるのだろうオレンジみたいな物を席を立って戸棚から取り出す。

 ピッチャーの位置を受付嬢側にずらして、頷くとこちらにオレンジを投げてくるので氷月の刃先の長さを調節して座ったままの姿勢で上半身を使い一秒で十五。落ちる前に更に十五。座ったままだとこんなものかと思いながらサイズは一口サイズくらいにはなったオレンジがピッチャーの中に浮かぶ。


「ま、魔法ですか!?」

「氷月です」

「違いますアカネさんの剣術です」

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