17 全力で誤魔化そうとしてるから
「あの、どうかされました?」
「……んと、何で?別に何もないよ?」
「…………??」
困ったように、苦笑しながら微笑む。
いつも通りの、いつもみたいな笑顔を浮かべられているはずだけど、でもいつも通りの笑顔を浮かべてるつもりだったのに引き留められたから、さっきとは違う意味で心臓バクバクである。
ルー君は眉をひそめながら不思議そうに私を覗き込んでいて、多分今朝方の私みたいな、何に疑問を持ったのか分かってない、的な状況なんだと思う。
「……え、もう行っていい?」
気持ちとしては、というか脳内メーカーがあったら、確実に全部“逃”だな。
けれども早くここから出たいなんて思いは欠片も見せずに、あたかも当然のように。
この後も私は仕事があるんだから、急ぐのは当然、でしょ?、と。
何気にここまで本気になったのは久しぶりかもしれない。
今の私、全身をフル稼働して全力で誤魔化そうとしてるからね。
……割と本当に私ってクズかも?
「ぁ、すみません。おやすみなさいませ……」
「うん、おやすみ~!」
結局分からなかったのか、分かった上で誤魔化されてくれたのか。
おそらく前者。
ニコっていう効果音が相応しい笑顔を浮かべて、手を振りながら階段を上った。
……早足にならないで。
余裕そうに。
なんなら引き留められたことなんて気にもしてないみたいに。
ガチャッと自室の扉を閉めて、誰も来てないのを耳で確認して、初めて私は安堵する。
よかった、誤魔化せたみたい。
いつも鈍いルー君が急に鋭いこと言うから、びっくりしたあ。
まだまだバクバクは収まらないけど、でも一安心である。
……あ、ていうか間違えたな、執務室に行こうとしてたのに。
焦り過ぎだって、私ってば。
……いやもういいや、寝よ。んでもってさっさと忘れよ。
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