12 お仕事と推しごと
「ただいまあ~?」
「……ただ今帰りましたー……」
ベルちゃん声ちっさ。
苦笑しながら履いている靴に浄化魔法をかけた。
ついでにベルちゃんのにも。
てか頭痛いや、本当に痛い。
「多分ね、今は“研修”中だから……適当に人探して、送ってもらいな?」
「あ、はい!ありがとうございました、カヴィナ様!」
「ん~」
まだお辞儀してそうなベルちゃんから視線をずらし、そのまま直行で階段を上がる。
階段の音を右から左に流しながら、
(……メノウは、どこ?)
と、頭の中でそう唱えた。
すると目の前にこの商会の立体模型みたいなのが映し出される。
それをドラッグしながら、ピコン、ピコンと点滅するオレンジ色の丸ポチの位置を確認してみて……。
うん、メノウの部屋みたいだ。
まだ寝てるのかな、とか思いながら階段をテンポよく上って行く。
……コンコン。
ドアのノック音が小さく響いた。
ちょっと待ってみるが、メノウの返事はない。
「……ミー……?入るよ……?」
「……」
小声で良いながら扉を開けると、そこには――。
(……うっっっっわ!!滅茶苦茶可愛い!何この天使!?いや、えっ、天使じゃん!!)
物凄く天使な寝顔で可愛く布団に収まるメノウがいた。
……かーっわ。
あまりの可愛さに、思い出しかけていた記憶も頭痛も忘れて、即行。
一瞬で物音ひとつ立てずに部屋を出てドアを閉める。
(可愛い可愛い可愛い可愛い……)
……まあ、興奮状態はここまで、っと。
気持ちを切り替え、まあ余韻には浸りながらも私の仕事部屋へ移動し出した。
……今日は集中できそうかもしれない。
『チャンチャラチャンチャンチャンチャンチャン』
……あ、メール来たな。
頭の中に着信音が流れ、私は目を通していた書類を一度机に置いた。
現在私の思考回路は誰かの朧げな記憶によって占領されてるので、もう一個思考回路を生み出し、そっちで、
“不思議な不思議なテディーの魔法”
という詠唱(笑)を唱える。
薄い板に刻まれた文字が『――テディ―・ベアは可愛いだけじゃない』から『何をしますか?』に変わった後で、
“お茶会の手紙は来てる?”
とも唱えた。
……送ってきたのは……ラリーか。
ササッと目を通す。
……あ、結局緊急代表はあの子にしたのね。
返信を選択する。
そして記入画面にして、現れた薄い板のキーボードを使い、両手を駆使しローマ字打ちで返事を打ち込み始めた。
……あ、そう、この世界、まんま日本語の、漢字とかひらがなを使ってるって話はもうしたと思うんだけど、どうやらローマ字も英語もないんだ。
よって私以外の子は基本ひらがなでフリック入力か、声の録音。
……よし、できた。
送信してっと。
……ん、仕事に戻りましょ。




