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5 ターゲットは王妃様(シフォン視点)


「……王妃様を、殺す?」

「正確には殺すわけじゃないわ。『敵によって傷を負い、命を落としかけた』まで持っていければ最高だけれど、『敵によって殺されかけた』だけでも十分ね」


ある日の深夜、リリアンヌは唐突にそう言ったのだった。


「えっと……なんで?私、最悪の場合は死刑になっちゃうんだけど?」

「知ってるわ、上手くやりなさい」

「ええ……?」

「それと理由は、理由はねえ……?」


考えるようにそう言いながら、紅茶のカップを机に置くリリアンヌ。


足は閉じていて、背筋は伸びていて……せんせいが真面目に礼儀を払ったらこんな風になるのかなあ、と思った。


「この子、どうやら興味の対象が自分の中である程度定まっているようなの」

「……んと、どういうこと?」


リリアンヌは静止している紅茶の水面を見ながらそれに再度手を添える。


「最近、この子の記憶が見れるようになってきたのだけど、おそらくこの子は世界が幸せになったら死ぬわ」

「……え?」


リリアンヌは億劫そうに目を細めながら、紅茶のカップを口元に近づけた。

そんなゆったりとした紅茶を飲むというだけの動作に焦らされ、少しイラっとしたけど、そんな動作すら彼女は綺麗だった。


「“不幸な子の物語を知っていたくない”というのがこの子の生きる理由なのね。……本当に、馬鹿らしい」

「――……馬鹿じゃ、ないよ」


思わず返してしまったけど、言った後で、私はそれを言った自分に驚いた。

ただリリアンヌの言葉を不愉快に思ったことは事実だったから、なるようになれ、とそのまま勢いに任せて喋ることにして。


「そういう思いが、せんせいの原動力なら……私はそれを否定したくないし、否定して欲しくない」

「……そうね、陰口は良くないわ」

「…………」


会話成立してなくない……?


時々思うけど、急に自分の中で話を飛躍させて、その後の完結した部分だけ口に出してくるの、やめて欲しいな?


「まあでも、要するにこの子は王妃様に危機が訪れたら焦って、守ろうとするの。守らないと、という思いを少しでも引っ張って来れればいいわ。……それじゃああたし、帰るわね。【転移】」

「あ……」


そう口に出すや否や、早々に転移したリリアンヌを引き留めようとしたけど、特に用なんかないことに気が付く。


……王妃様、かあ。




読んでくれてありがとう!

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