2 キャロ暗殺ギルド(王妃様視点)
……待ってよく考えたら、王妃様の名前決まってない……!!?
「――すぐ戻るね」
「「「「……?」」」」
転移間際、カヴィナの発したその言葉に、その場の全員が首を傾げました。
(……えっと、あれは誰に向けての言葉だったのでしょうか?)
私に言った可能性がある以上、この部屋で待っていた方が良いのでしょうけど……。
……そんなことを考えましたが、話が残っているとすれば十中八九、陛下に対してでしょう。
そう思い、カヴィナが積み上げていった埋め合わせのプレゼントを私の自室まで運ぶようメイドに言いました。
……カヴィナが怒り、魔力による王城全体の威圧という強行が成った日より、約一週間。
気を失ったカヴィナは2時間ほどで意識を取り戻したらしく、その間王城に現れていた魔物は同時に一瞬にして消え去り、塵となりました。
カヴィナがテディー商会より派遣したと、メノウという少女や王宮魔術師の功労もあり、死者も怪我人も最終的にはゼロ。
よってカヴィナは次はないという警告で処理されました。
貴族らが不満を口にする中、しかし、唐突にその騒ぎは収まります。
……本日の夜明け頃、パラルフィニアーでのこと。
今年は例年通りでない箇所がいくつか見つかったため、直前になって救援要請が入りました。
兵はその日の内に出発。
救援要請の到着より一週間以内の出立という規則により、第二側妃様は昨日の午後、王都を出た……はずでした。
第二側妃様が登城したのはたった一日後。
ちょうど今朝の昼前に、第二側妃様は乱れた服装でありながらも毅然とした態度で陛下に謁見し、驚くべき一報を入れたのです。
『――パラルフィニアー領での魔物の行進が集束しました。現在被害の確認を急いでおります』
それだけでも驚くことでしたが、さらに驚くべきはこの後。
陛下は私と同じ疑問を持ったようで、第二側妃様にこう聞いたのです。
『此度の魔物の行進は、小規模だったのか?……いや、それ以前に……そなたはこの短時間で、どうやってパラルフィニアーより帰ったのだ?』
『はいっ、はいっ』
『『『――!?』』』
その場は騒然としました。
第二側妃様の後ろに、謁見の間にいてはならないはずの、いかにも平民だと見て取れる、褐色の肌に美しい緑の髪の少女が立っていたのです。
……先ほどまではいなかったはずなのに。
ふと、その少女と目があったような気がしました。
『おい貴様、どうやってここへ――!!』
『あのね、あのね!私がこの人をここまで運んだの!私の組織の偉い人に、この人の保管をお願いされて、だから転移してきたの!』
『……このような平民をこの場へ連れたこと、誠にお詫び申し上げます、陛下』
……私は少し怖くなりました。
彼女が敬意をもって陛下に接しなかった以上、陛下はこの場で彼女を切り捨てても問題ありませんでしたから。
『……良い。そなた、名を名乗れ』
陛下がそのように言うと、少女は満足そうに頷き、歪な笑顔で微笑み。
……私は、少し睨まれたような気がして震えてしまいました。
『――シフォン=シファニ。今はキャロ暗殺ギルドっていうところで働いてる、ニグ族だよ!』
キャロ暗殺ギルド、というその名に、どこかで観衆となった貴族数名が息を呑んだのが聞こえました。




