番外編 1−5 私だけが知った真実(シフォン視点)
「知ってるって……せんせいが、ベリーちゃんでしょ?何言ってるの?せんせい……?」
「……いいえ、違うわ。あたしは、あなたの知るベリーではないわ」
違うって言ったって、そっくりそのまま一緒の同一人物にしか見えない。
私は混乱した。
……違うところなんて、目元くらい……?
でも、うん、そこだけは確かに、目元だけは確かに、細かく言語化することはできないけど、せんせいと彼女とで違うのだった。
「あたしの名前はリリアンヌ。ベリーの中にいるもう一つの人格よ。あたしは、この子を、ベリーを幸せにしてあげたいの。協力して頂戴、シフォン=シファニ」
「……」
私はちょっと考えて、考えた。
……考えてから喋った方が良いって言ってくれたのは、せんせいなのだ。
「……せんせいは、ベリーちゃんは今幸せじゃないってこと?」
「いいえ、シフォン=シファニ。この子は今、幸せよ。これから泥沼に沈もうとしている、哀れな人魚。自分が不幸になることを知っていても尚、泥沼で死ぬことを願う人魚」
知らない誰かによる発言のはずなのに、人魚、という言葉が、とてもせんせいに当てはまるような気がした。
陸の世界を知らない人魚。
物知りなのに、どこか常識を知らない人魚。
泳ぐことは得意なのに、歩き方を知らない人魚。
触ったら壊れてしまいそうな儚さと、絶対に壊れないと思わせる強さを持つ、美しき人魚。
「教えて、シフォン=シファニ。あなたの中で、ベリーという少女が未来永劫、不幸へ突き進まない確証はある?そう思えるだけの姿が、今のあの子にある?」
考えて、考えて、考えてみた結果。
……私に出た答えとしては、
「……ううん、ない。ないから、教えて、リリアンヌ。……せんせいを救うためには、幸せになってもらうには、どうすれば良いの?」
……これだ。
言い訳を言うつもりはない。
私はこの時この瞬間に、キャル暗殺ギルドもせんせいも裏切った。
けれども私はこの時、せんせい、もといベリーちゃんと、リリアンヌという彼女の目元に違いを感じる理由に気が付いてしまったのだ。
とても残酷な、リリアンヌと出会わなければ分からなかったであろう、一生気付くことのなかったであろう真実。
――ベリーちゃんの桃色の両眼に光は浮かんでいなかった。
多分それは、ベリーちゃんが良い子だったから、器用な子だったから、だから誰も気づかなかっただけで。
ベリーちゃんの心の底にとても上手に隠されていただけで。
その実、ベリーちゃんの瞳の奥底に、前の、家族に売られた直後の“うち”のような感情が渦巻いていたことに、私は気づいてしまったのだ。
その唯一以外、特に外見なんてそっくりそのまま同じであるはずなのに、“違う”ことに気づけてしまったのだ。
……だからこそ私はきっと、人魚という言葉に共感できてしまうのだ。
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