サボりと妹と後輩ちゃん
僕の檸檬に対する情熱が気づかぬ内に声に出てて彼女とバイト先の店長に聞かれるという最悪の状況。
とてもとても恥ずかしいが好きな作品を語ることができたといい方向に無理矢理解釈して乗り切ろう。
いやそう思わないとやってられねえ。
「……檸檬。いいですよね」
「そんな優しい目をしないでほしい」
本心からそう思ってくれてはいるのだろう。しかし、その目の奥に生温かい優しさが見える気がして視線をそらす。
「いえーい兄ちゃん姉ちゃん!かわいい妹が来ましたよー!」
救いの女神がきた。
僕は今日ほど明佳の存在に神々しさを感じた日はこの先一生でもう一度あるかないかくらいだろう。
もう一度あるとすれば結婚式とかだろうか、あちょっと想像しただけで涙が
「明佳さん。お疲れ様です」
「お疲れお義姉ちゃん!あと…熊さん?」
「熊じゃねえよ熊谷だよ」
「熊さんじゃん」
熊みたいな体格の店長に軽口をたたく度胸があるのか妹様は。
逞しく育ってくれて何よりなどと場違いなことを思いながら読書を再開しようとして本を手に取ったところで顔にペットボトルが飛んできた。
べこ、と音を立てて僕の顔に激突したペットボトルはそのまま床に落ちて次はぺっと気の抜けた音を鳴らした。
「目がぁぁぁぁぁぁあああ!!」
「さぼってんじゃないよ」
「私のお茶が…」
「あっごめんなさい私のサイダーと交換する?」
「えっあっはい」
怒られたので仕方なく本を元の場所に戻し、床に落ちたペットボトルを拾って明佳に押しつける。
「んなぁ」
「なんだその鳴き声」
今更ながら加苅はどこだと思い至り首を振ってみるが、どこにも弟の姿はない。
珍しい……って程でもないが祭りの時の加苅は明佳から目を離さないので少し驚く。
それか目の前にいる妹が逃げてきたわけだが。
「そういや加苅は?」
「え?なんかデカい人達に捕まってたけど」
「あー……」
多分運動部の誰かだろう。あいつ中学生の割に体格いいからな。
じゃ放置でいいか。明佳がやらかさないようにちゃんと見てよう。
「よし、お前も一緒にサボるか」
「わたしゃ客だよ!!!これください」
「はい。袋お付けしますか?」
「二重人格?怖いよお兄ちゃん。あ、袋は大丈夫」
仕事モードとは不思議なもので、他人から見れば人格が違うように見えるらしい。
普段とバイト中だと話し方とかが違うのは否定しないがそこまでか。
「相変わらず兄妹仲いいなお前ら」
「でしょー?」
あんたらも仲いいな……
「確かに先輩達が喧嘩してるのは見たことないですね」
「奈恵さんがいないところでいっぱいしてるよ?」
「下らないことだけどな」
テレビのチャンネル権とか、録画容量の取り合いとか、普通のことだ。
あ、あと奈恵の家に遊びに行くとお泊りセット持って飛び出そうとした明佳と取っ組み合いもしたな。
「はつみみですそれ」
「だって……ウチは男ばっかだから女子会できるのが嬉しかったもん。おばあちゃんは離れた所に住んでるし…」
奈恵がご機嫌で明佳の頭を撫で始めた。
……嬉しそうだなー明佳なー。
「別に取らないよ?取ったらお義姉ちゃんって呼べなくなっちゃうじゃん」
「そこなんですか?」
「………嫉妬してない」
背中にきゃーきゃーとした声を受けながらなんとも言えない居心地の悪さを感じながら店長の隣で売り上げに明佳の分を書き込む。
「仲いいな。昼飯時だが他回ってくるか?」
「……お願いします」
ここに居るよりはマシだと思いたいです。
名前も知らぬ誰か様。ブックマークありがとうございます。
月一投稿ギリセーフというやつです。
来月はエースコンバットで忙しいので多分またギリギリになります。




