都市を抜けて
都市を抜け、亡びた理由を聞きながら。二人はお別れです。
「――かつてこの都市に、僕は訪れた事があったんだ」
街の出口で振り返りながら。ルーティスはみさきに話した。
「あの時は知っての通り疫病が蔓延していてね。僕は街の人達を癒し続けていた。
……でもそれだけじゃダメだから。疫病を鶏卵に培養して、ワクチンと呼ばれる免疫を上げる物を作り出した」
そこで一旦ルーティスは言葉を切り。 呪文を唱えた。
「それで……どうなったの?」
唱え終えた時に先を促すみさき。でも……何となくは気づいていた。
「……悪魔の技術だと、僕は裁判にかけられて、結果は……『死刑』さ。後は聞いた通り、酷い処刑方法だったよ」
「……」
魔法が効果を及ぼすまでの間に話してくれたルーティス。彼に返す言葉も、みさきには無かった。
「別に彼らを恨んではないさ。知らない事って怖いからね。ただ……、その後戦争に使われたのが許せないね」
憤慨しながら、ルーティスはため息をつく。
「この街……どうして滅んだのかな?」
「決まってるさ、疫病の培養に失敗したからさ」
「……」
みさきは黙って、風の吹き抜ける都市の跡地を眺め続ける。
その時魔法の効果が目の前に、老若男女様々な名前が彫られた巨大な石板を召喚させた。
「……これは?」
「慰霊碑だよ。みんなの墓碑代わりに置いておこうと思ってさ……」
そう呟いて、ルーティスは片膝をついて祈り始めた。それを見て、みさきも静かに鎮魂の黙祷を捧げる。
しばらくの間二人は、祈りを捧げ続けていた。
「さて、と。僕はこっちだ。じゃあね! みさきお姉さん!!」
立ち上がったルーティスは元気に挨拶をして、逆方向に進む。
「えぇ、またね! いつかまた会える日があったなら!!」
みさきは叫んで、別の道を進む。
ふと風が。みさきの髪を踊らせる。
もう一度あの少年に、会えるような気がして。みさきは立ち止まって空を見上げた。
「薔薇が咲いた♪ 薔薇が咲いた♪ 真っ赤な薔薇がたくさん咲いた♪ 抱えて贈ろ、みんなに贈ろ♪」
そしてみさきは双眸を閉じて後ろに手を組んで歌う。それは道化師の大事なお仕事の一つ目。この歌を後世に残して語り伝えて、歴史を遺しておくべきだ。
それが一番、必要な事なのだから。
――道化師のみさき。後にこの少女は伝説の地『アブサラストの平原』に来訪し『神の力』を手に入れて。常に嘘をつく『狼少女』と呼ばれるようになるのは、まだまだ先のお話である。
暗いストーリーですが完結しました。




