第9話「浄化の輝き、目覚める真実」
玲玉が皇后として迎えられるという知らせは、帝国じゅうに衝撃を与えた。
庶子であり、しかも男性である者が后の座に就くなど、帝国の歴史上、一度もなかったことだ。
当然、一部の保守的な高官たちからは不満の声が上がった。
「陛下、ご再考ください! そのような異例の事態、民が納得いたしません! 」
大広間に、高官たちの罵声が響く。
だが、龍帝は玉座にどっしりと腰を下ろし、冷ややかな視線で彼らを見下ろしていた。
「納得せぬというなら、それでも構わぬ。だが、お前たちのその不自由な体は、誰の力で支えられていると思っている」
龍帝の言葉に合わせて、玲玉が静かに一歩前に出た。
彼のまとう衣装は、極上の白絹に金の刺繍が施された、この世のものとは思えないほど美しいものだった。
玲玉が手をかざすと、広間に溜まっていた重苦しい「気」が、目に見えるほどの速さで浄化されていった。
高官たちは息を呑んだ。
自分たちの肩が軽くなり、長年抱えていた体の不調が、玲玉の霊力によって一瞬で癒やされていくのを実感したからだ。
「これは……」
「白……いえ、皇后陛下の御力……」
誰一人、文句を言う者は消えた。
圧倒的な奇跡の前に、言葉などは無力だった。
しかし、玲玉の表情は、どこか憂いを帯びていた。
『私のこの力は、誰かの犠牲の上に成り立っているのではないか。……白家で死んでいった者たちの怨みが、私を呪うのではないか』
そんな玲玉の不安を見抜くように、龍帝は彼の肩をそっと抱き寄せた。
「玲玉、顔を上げろ。お前の力は光だ。影があるからこそ、光はより輝くのだ」
「陛下……。私は、皆を幸せにできているでしょうか」
「お前のその存在そのものが、民の希望だ。見てみよ」
龍帝に促され、玲玉は広間の窓から外を見下ろした。
城下には、玲玉の皇后就任を祝うために集まった多くの民がいた。
彼らは玲玉が放つ温かな気を感じ取り、歓喜の声を上げている。
かつて地下室で死を待っていた孤独な少年は、今や帝国のすべての民から愛される存在となっていた。
◆ ◆ ◆
その夜、玲玉は龍帝と共に、宮殿の最も高い場所にある展望台にいた。
「陛下。私、決めたことがあります」
「何だ」
「この霊力を使って、全国各地にある龍脈の要所を巡りたいのです。この国に、もう二度と瘴気が溜まらないように」
龍帝は少し眉を寄せた。
「それでは、朕のそばを離れるということか。そんなことは許さぬ」
「違います。陛下も一緒に行っていただきたいのです。陛下が治める土地を、私の力で磨き上げたいのです」
玲玉の言葉に、龍帝は一瞬呆然とし、やがて大笑いした。
「ハッハッハ! 皇帝を旅に連れ出すとはな。お前ほど恐ろしい皇后はいまい。だが、それも悪くない。朕も、お前と共になら、どんな遠い場所へでも行こう」
龍帝は玲玉を背後から抱きしめ、二人は星空の下でこれからの未来を語り合った。
もう白家の影も、過去の傷跡も、二人を遮ることはなかった。
そこにあるのは、互いを想い合う、純粋で激しい愛の形だけだった。




