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身代わり花嫁の忌み子Ω、冷酷な暴君皇帝に番として溺愛される〜虫けらの俺が国を救う唯一の光らしい〜  作者: 水凪しおん


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番外編第 1話「龍の独占欲、午睡の夢」

 春の陽光が、柔らかな午後の空気を作っていた。

 後宮の奥深くに建つ離宮、その風通しの良い一角に、玲玉はいた。

 目の前には、帝国の各地から献上された最高級の香料が並んでいる。

 玲玉は、龍帝の安眠を助けるための特別な薫香を調合していた。

 白檀、沈香、そして微かな蓮の花の精油。

 これらを練り合わせ、小さな香球を作る作業は、彼にとって何よりの心の安らぎだった。


「……少し、甘すぎるでしょうか」


 玲玉はつぶやきながら、香盤の上に粉を広げた。

 その仕草一つひとつが、かつての怯えていた少年とは思えないほど、優雅で洗練されている。

 不意に、背後から大きな影が落ちた。


「良い香りがするな。だが、お前自身の香りのほうが、朕にはずっと心地よい」


 返事をする間もなく、逞しい腕が玲玉の腰に回り、彼を背後から包み込んだ。


「陛下……。お仕事はよろしいのですか」


 玲玉は苦笑いしながら、自分を抱きしめる龍帝の手に、自らの白い手を重ねた。

 龍帝は玲玉の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。

 αとしての圧倒的な威圧感を持つ彼だが、玲玉の前でだけは、甘えることを知った獣のように素直になる。


「今は休みだ。大臣たちの退屈な報告を聞くよりも、こうしてお前の温もりに触れているほうが、国のためになる」

「そんな、屁理屈を……」


 玲玉が赤くなって身をよじると、龍帝は逃がさないと言わんばかりに力を込めた。

 龍帝は、玲玉を抱きかかえたまま、近くにある長椅子へと腰を下ろした。

 玲玉は龍帝の膝の上に座らされる形になり、さらに顔を赤くした。


「陛下、侍従たちが見ております」

「誰もここへは入れぬよう命じてある。……玲玉、お前は本当に、朕を甘やかすのが上手いな」


 龍帝は玲玉の結い上げた髪を解き、その豊かな黒髪を指先でなぞった。


「浄化の旅を終えてからというもの、お前の霊力はさらに安定し、美しさを増した。……最近では、後宮の妃たちだけでなく、近衛の兵たちまでもがお前を熱心に見つめていると言うではないか」


 龍帝の声が、少しだけ低く、険しい響きを帯びた。


「それは……、皆さんが優しくしてくださるだけで」

「それが気に入らぬのだ。朕だけの玲玉であってほしい。お前のその清らかな光も、はにかんだような笑顔も、すべて朕の腕の中に閉じ込めておきたい」


 龍帝の独占欲は、時として周囲が引くほどに強烈だった。

 けれど玲玉は、その重苦しいほどの愛情こそが、自分を暗闇から救い出してくれた救いなのだと知っている。

 玲玉は龍帝の胸元に顔を寄せ、その鼓動を聴いた。


「私は、陛下のものです。どこへも行きませんし、誰のものでもありません」

「……お前にそう言ってくれると、朕はこれ以上何も言えなくなる」


 龍帝は玲玉の額に優しく唇を落とし、そのまま穏やかな眠りへと落ちていった。

 玲玉は、自らの内に流れる霊力を、龍帝を包み込むようにそっと放射した。

 窓の外では、蝶が舞い、平和な時間が流れている。

 愛する人の寝顔を見守りながら、玲玉は改めて思う。

 自分という存在が、これほどまでに誰かを幸せにできるのだと言うことを。

 それは、どんな豪華な宝石よりも、玲玉の心を温かく照らす宝物だった。

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