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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第4章、あやかしの国で
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道中のあやかし

錫音は栗牧と共に崎神族が居る城へ向かう。

その道中、今日は珍しくあやかしが来た。


「どうもー、錫音様」

「今日は2人で休憩かな?」

「はいはい、初音はつねちゃんと一緒ですー」

「羽美! 私は先輩なんだから、さんと呼べー!」


白い和装がよく似合う羽美の隣に居るのは初音。

初音は青く長いストレートロングの髪を持つ。

服装は陰陽師の制服に非常に近いのだが

色が独特であり、黄色、ピンク、青の混合であった。

袴が黄色く、上衣は青とピンクの混合。

容姿は幼く、長い髪の毛が地面に触れそうである。

いや、本来なら触れているのだろう。

だが、彼女は髪の毛を反射してるのか

若干浮いた場所から透明な何かに触れている。


「初音の散髪とか? 私がやってあげようか?」

「錫音様、もしかして、長いと思ってる?」

「長いね、いつも言ってるけど」

「ほらー、だから散髪行こうって言ったじゃ~ん」

「いや! 使いこなすから!」

「ふむふむ、何故そんなに長いのです?

 こだわりですかねぇ?」

「いやぁ、噂の栗牧ちゃんかぁ

 可愛いねぇ、悪鬼なのに」

「流石は羽美様、見る目がありますなぁ

 栗牧は可愛いでしょう? このくりくりの目に

 座敷童の様な幼気な姿」

「ふん、錫音様の式神の方が可愛いし」

「確かに錫音お姉様にそっくりな式神達には

 栗牧は敵いませんよ。

 ただでさえ美しい錫音お姉様の小さな姿ですし?

 性格も……か、鐘魅さん以外は多分可愛いですし?」


いつか凄まれた式神を思い出してか、

栗牧は焦りの表情を浮かべた。

例え相手が小さかろうと、凄まれた相手は

敬愛する姉と同じ顔で同じ声である。

そんな姉が自分には決して見せない表情で

決して聞かない声色で凄んで来たら怯えるのは当然だ。

現に彼女が柳を少しだけ庇おうとしたのも

姉があの声色に近い声で相手を責めていたのが怖かったからである。

つまり、彼女からすれば、あのやり取りはトラウマであった訳だ。


「そう? 鐘魅ちゃん優しくない?」

「あー、悪鬼相手だけなんですよね」

「そうだね、鐘魅には私の悪鬼嫌いな部分が

 かなり出てるからね」

「あー」


錫音の柳に対する雰囲気を再び想起し、栗牧は少しだけ冷や汗を流す。

あれがもし、自分に向けられたとすれば自分も漏らすと言う確信があった。

つまりは、錫音が栗牧に刀を向けた際もあそこまで怒りは向けてなかったのだろう。

妹に裏切られた怒りよりも、悲しみの方が強かったのかもしれない。


「因みに錫音お姉様の式神は錫音お姉様の感情が出るのですか?」

「それぞれ出てるね、自覚は無いけど」

「うーん、そんな話を錫音様もしてたけど、錫様とりん様はあまりそんな雰囲気ないなぁ」

「鈴と言うのは?」

「北の屋敷を指揮してる式神だね、1番強いよ」

「え? 強いんですか?」

「鈴様は滅茶苦茶強いよ、私も勝てないし」

「あはは、初音と羽美は補助型だからね」

「誰なら勝てるとかあるのですか?」

「そうだね、さっき会った霧華なら勝てるよ。

 アキエは鈴に勝てるかもだけど、鈴は小さい体から、アキエでも捉えるのは難しいかな。

 因みに、栗牧は鈴には勝てないと思うな」

「そ、そんなに強いんですか?」


錫や鐘魅にはおそらく勝てると栗牧は想定していた。

それはそれとして、姉と同じ容姿の式神相手に本気で戦えるかは疑問ではあった。

しかしだ、そんな式神達より強い式神。

どんな物が興味は感じてしまう。


「鈴は唯一戦闘用に作り出した式神だからね。

 当然、戦闘能力は圧倒的だよ。

 崎神族の皆で例えたら、宝龍の位置だね。

 錫は多分龍風の位置になるのかな?

 まぁ、私は式神を12も用意しなかったけど」

「それは何故ですか?」

「式神を12体も用意するのは滅茶苦茶大変なの。

 私の主も純粋な霊力のみで私を作り出したら

 それ以上は作れなくなったからね。

 純粋な霊力のみで式神を4人作り出してる錫音様は滅茶苦茶凄いの、妖怪なのに」

「それもあるけど、私の場所は霊力の最大値が減るのは致命的だったのもあるかな。

 私の中にある霊力と妖力の均衡が崩れちゃうと

 こう、危ないって思ったんだよね」

「ほうほう、均衡ですか」


錫音があまり式神を作らなかった理由はそれが大きい。

霊力の最大値を削る式神の創造を行うのはリスクがでかい。

霊力が減れば減るほどに飢餓の苦しみが増していく。

生まれて間もなく感じていた飢餓の苦しみよりも

式神を生み出した後の飢餓の苦しみの方が辛かった。

この経験から、錫音は式神を作らなくなった。

彼女の技量であれば、純粋な霊力のみで式神を12体生み出す事も可能だろう。崎神族に近い、もしくは超える式神を生み出せるかもしれない。

だが、自身が暴走するリスクを抑えるために

彼女は必要以上の式神は作らなかった。


「他にも戦闘特化で作り出した筈の鈴でも

 私の戦闘に付いてこれないからね」

「錫音お姉様の戦闘速度は速すぎますからねぇ

 栗牧は目で追うことも出来ませんでしたよ」

「接近戦が得意じゃないなら仕方ないかもね」

「私はギリギリ見えるよ」

「わ、私も見えるけど!?」

「羽美は能力が運に干渉する力だから強力なんだけど、倒すのは難しいからね、接近戦が出来ないと厳しいもんね。初音はほら、木霊だからさ、防御能力に秀でてるし、能力で攻撃も出来るから、私の動きを追えないのは仕方ないよ」

「慰めは良いよ、錫音様、私自身自覚はある。

 攻撃も錫音様のお陰で出来る様になっただけだし」

「初音のお陰でこの鈴が出来たんだからさ。

 前も言ったけど、あなたは補助に優れてる。

 音って言うのは色々出来るんだよ?

 助けを呼ぶ事も出来るし、音にしか救えない物があるんだから」


初音は戦闘能力で今の地位に居るわけでは無かった。

錫音の鈴を作り出した功績や色々な音に関する発明がこの地位に居る理由であった。

現在は遠方の人物に声を届ける研究をしていた。


「今やってる音の伝達も完成すれば沢山の人を救えるんだから、もっと堂々しても良いんだよ?」

「でも、私は1人じゃ」

「私達は1人で頑張ってる訳じゃない、皆で頑張ってるんだ。

 だから、一緒に頑張ろう」

「私も頑張るし、運勢を上げまくればきっと行ける!」

「些細な幸運から糸口が見えるかもだしね」

「ふ、ふん、なら羽美、付き合ってよね!」

「勿論だよセンパーイ、今日はパーッと遊んで

 明日もっと頑張ろうね」

「いや、今から研究を!」

「休憩は大事だよ? ゆっくりと体を休めた方が

 きっと面白い発想が降りてくる。

 ふふ、焦らなくて良いよ?

 困ったら私に声を掛けて欲しいな。

 力になれないかもだけど、一緒に頑張るから」

「こ、困ったら声をかけるから!

 その時はご飯を作って欲しくて」

「分かった、あ、そうだ、今日の夜に家に来る?

 ご飯を用意してあげる」

「マジっすか錫音様最高!」


錫音の言葉に羽美が嬉しそうに食い付く。

初音もかなり嬉しそうに笑顔を見せた。

錫音の手料理はあやかしの国で最も美味しい料理と評判である。基本的にはクロエ達が料理を作るのだが

最近は栗牧が居るので錫音が料理を作っていた。

もしかしたら、栗牧とアキエ達が少しだけ仲良しな理由にはこれがあるかもしれない。


「いやぁ、栗牧は幸せ者ですなぁ」


錫音の料理を毎日食べられてる現状を考えて

栗牧は自分の境遇が如何に幸福かを噛み締める。


「でも、大軒姉様にバレると怖いかも?」


だが、食べるのが大好きな姉を思い出し

少しだけ不安になる栗牧であった。

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