天才陰陽師
錫音達が天狗の里で過ごしてる間。
都では、とある問題が浮上していた。
ずっと前から浮上している問題ではある訳だが。
「はん、雑魚が意見すんなっての!」
「き、清美!」
都における、陰陽師の長となった少女
安野柄清美。
齢12と言う幼さで、全ての陰陽師達を力で退け
陰陽師達の長という立場になった天才少女だ。
現在の年齢は15歳、歴代最年少でありながら
その強さは筋金入りであり
最強の陰陽師、安野柄清流の再来と
評されるほどの天才であった。
安野柄清流とは、
三大悪鬼の玉緒の前と破滅姫を封じたとされる
最強の陰陽師であり、宝龍達、崎神族の主だ。
「ったく、お父様もお母様も弱いのに
何で強い私に意見するわけ?
雑魚は雑魚らしく、後ろに控えなよ」
「お前は陰陽師を何だと思っているんだ!」
「あ? 妖怪全部滅ぼす存在でしょ?」
「違う! 都の人々を守護する存在だ!」
「えー? 守ってるじゃん。ついでに」
「ついででは駄目だ! 私達の使命は!」
「使命使命うるさいなぁ、弱い癖に」
だが、彼女はその圧倒的な才能もあり
常に周囲を見下して過ごしていた。
安野柄清流と並ぶ少女と称されているが
その人間性は彼とはかけ離れていると言える。
とは言えだ、彼女が完全に陰陽師の仕事を
放棄しているかと言われれば、そう言う訳でも無い。
文句を言いながらも、彼女は都の守護を行なってる。
それ故に、あまり帝も彼女を咎めることは出来ない。
そもそも、咎めようとしたところで
彼女の判断基準は自分が最も優位だと分かっている
強さによる判断しか下さない。
それ故に、誰かの言葉が彼女に響くことは無い。
彼女より強い人間は存在しないからだ。
「き、清美様!」
「あ? 何よ」
彼女が両親と喧嘩をしてると、部下の陰陽師がやって来た。
どうも、雰囲気からいくらか焦ってるのは分かる。
「都周辺に悪鬼です!」
「はぁ? 雑魚でしょ? 私呼ぶなっての」
「いえ、河童が」
「だから雑魚でしょ? まぁ良いか。
ちゃちゃっと始末してくるわ」
都の危機である以上、彼女は行動を起した。
かなり気怠そうにしながらも、彼女はその現場へ向う。
彼女が向った場所には、何体かの河童が居た。
そして、丁度子供を襲ってる最中だ。
完全に背後を取られてるし、着物も脱がされてる。
「悪趣味、だから妖怪は嫌いなのよ」
彼女は霊力を纏わせた小型の針を取りだし
子供を襲おうとした河童に突き刺す。
「ん」
針が突き刺さったのを確認した後
彼女が指を鳴らすと針が爆発する。
「ぎぎ」
その攻撃を受けた河童達が清美に目を向ける。
「キモい、見るな」
妖怪に対して嫌悪を見せながら、彼女は式紙を取り出す。
彼女がその紙に意識を集中すると同時に
その紙は変化し、白い猫の耳が生えた少女が出てくる。
彼女が持つ、12の式神の1人であった。
体型は小さいながらも、かなりの霊力を纏っている。
服装は巫女装束である。清美が扱う式神全員が同じだ。
これは、彼女の趣味の面が大きい。
「ほらココ、あれ始末して、キモいから」
「はいはい、ご主人様」
飛びかかってくる河童達をココと呼ばれた式神は
即座に排除して殲滅した。
「あー、1匹抜けたー」
「棒読み止めなさいよ、わざとでしょわざと!」
「まぁまぁ」
「ったく! 式神なんだから従いなさいよ間抜け!」
少しだけ式神に反発されている訳だが
これは、まだ彼女が未熟である証拠でもあった。
かなりの天才ではあるが、あまりに天才すぎるが故に
彼女が作り出した式神は自らに反発する事がある。
これは、本人の性質が式神に影響される為である。
上に対し、反発を数多くしている彼女の式神が
主である自分に反発するのは当然であった。
だが、彼女達が完全に自らに反発することは無い。
何故なら、その性質の根本が彼女だからだ。
「雑魚妖怪相手に私が遅れを取るかっての」
腰に付けた刀を引き抜き、河童の首を断ち始末した。
陰陽師でありながら、刀を主体として戦うのは
恐らく彼女だけであるだろう。
「流石ー、だから従うんだけどー」
「あんたの主は私よ!? わ・た・し!
こんな雑魚で私を試そうとか舐めてんの!?」
「ごめーん、ご主人様♡」
「あんたも斬り殺すわよ!」
「きゃー、こわーい」
「このクソ猫……」
圧倒的な才能を持って生まれても彼女は未熟だ。
だが、それでも他の陰陽師達は彼女には敵わない。
それこそ、束で挑んだところで彼女は倒せない。
完璧に近い結界術を持ち
霊力のみで作り出した、
純粋な式神を12体も彼女は使役しているからだ。
「流石ですね、清美様」
「ったく、あんたも1匹くらいは式神作れ」
「いえ、そ、それは」
「妖怪上がりのクソ式神とか使ってんじゃ無いわよ。
才能も無いくせに、陰陽師するとか馬鹿じゃ無いの?」
「かも知れません、私には才能が無い。
それは、じ、自覚してます」
「じゃあ、なんで陰陽師やってんのよ、止めなさいよ」
「例え清美様にどれだけ文句を言われようとも
私は人々を守る為に陰陽師を志しました。
才能が無かろうとも、私の友のように
命を落とす人を1人でも減らすために」
「……あっそ、ならさっさと純粋な式神作りなさい。
あんた弱いんだから、少しは強い盾を用意しなさい。
今のままじゃ、あんた死ぬわよ? 桐絵」
かなり傍若無人であり、
仲間の陰陽師達から嫌われている彼女ではあるが
そんな彼女を慕ってくれる部下である桐絵を
かなり気に掛けている。
「大丈夫です、例え死んだとしても」
「実際あんたが死んでも痛くも痒くも無いけど?
あんたが死んだ程度でどうにかなる奴は居ないわ。
死ぬ覚悟とか言う、無駄に格好いい思いがあるなら
ちょっと位は強くなりなさいよ間抜け。
純粋な霊力で作った式神、12体までは言わないわ。
だって、私以外出来ないし
あんたが出来ないのは当然なんだから。
でも、せめて1体は用意しなさいよね。
いつまでも妖怪改良した雑魚式神1体じゃ
本当に話しにならないわ」
「す、すみません」
式神には二種類の形式が存在している。
術者の霊力のみで作り出した純粋な式神。
この式神は非常に能力が高いのだが
そう易々とは作り出せない式神である。
宝龍達、崎神族はこの部類の式神である。
そして、もう一種類は弱らせた妖怪に
自身の霊力を送り込んで式神とする方法。
この方法で生まれる式神は純粋な式神と比べ
かなり能力が劣ってくるのだが
才能が無い人間でも式神を使役出来る。
その為、式神の中で最も多い式神は後者の
妖怪を弱らせて手駒にする方法だ。
とは言え、この方法を用いたとしても
陰陽師達が辿り着ける高みとされる
12体の式神を用意する事は困難だ。
「ま、どうせ他の雑魚共も?
私みたいに12体用意出来ないんだけど?
へ、いかさましても無理なのに
何であいつら、私に文句言うのかしらね」
安野柄清流が没し、1000近くの時が経ったが
12体の式神を用意出来た陰陽師は居なかった。
純粋な式神のみは勿論
妖怪を利用した式神を使ったとしても
決して12体の式神は用意出来なかったのだ。
そう考えれば、僅か15という齢で
12の純粋な式神を用意出来た彼女の才能が
いかに凄まじいかがよく分かるだろう。
まさしく歴代最強の天才と言っても過言では無い。
その精神性を除けば、ではあるが。
「まぁ良いか、とにかく帰るわよ」
「はい、清美様。
でも、その前に村を見てきても良いですか?」
「村? あぁ、近くだっけ」
「はい、河童が出てきたので、何だか不安で。
あの村にはまだ小さい女の子も居ますし」
「そ、じゃぁ行ってくれば? 私は帰るけど」
「はい!」
「でも、ちゃんと鍛えなさいよ?」
「はい、精進します」
あくびをしながら、彼女は都に帰っていく。
いつも通り怠けた態度のまま。
だが、誰も彼女に意見は出来なかった。
あまりにも強すぎる彼女に対して
誰も意見を言う事が出来ないのだから。




