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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第2章、都の騒動
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怒りか焦りか

今日も清美は都で団子を食べていた。

彼女が好きな食べ物はこの団子だった。

そして、彼女の隣には別の少女が居た。


「やっぱり団子美味しいわー」

「食べすぎじゃ無い? 清美」

亜希子あきこも食べなよ」

「食べてるよ」


彼女の隣で一緒に団子を食べているのは

今代の霊具神姫、姫長、雪妻亜希子ゆきづまあきこ

彼女も歴代最年少で姫長となった少女である。

彼女もまた、雪妻由紀恵の再来と

周囲から言われるほどの才能を持つ。


年齢も15と、清美と全くの同い年であった。

周囲を見下している清美が

唯一対等の親友として接する相手であった。


「それで、どうかな? 私が渡した亜麟錫華史ありんすずばなしは」

「えぇ、滅茶苦茶使いやすいわ。本当にありがとうね」


清美が腰に付けている刀、

亜麟錫華史は亜希子が作り出した刀の中で

最も出来が良いと感じた刀の名前だった。


まだ最高傑作では無い、準最高傑作と感じた刀に

この名前を付けると彼女は決めていた。

最高の刀には時雨という名を刻もうと感じているため

まだ改良の余地がありそうな刀にはこの名を付けている。


かなりの秀才である亜希子の準最高傑作なので、

当然並の刀とは比にならない程の業物だ。


「それは良かった。それで、河童はどうなったの?」

「ぶっ殺したわ、あんな雑魚」

「流石だね、でも、どうして河童が来たのかな?」

「妖怪なんて、何処でも出てくるじゃ無いの。

 どうで、気まぐれで近付いただけなんじゃ無い?」

「そうかなぁ、ヌシとか居るんじゃないの?」

「ヌシ!? あっはっは! そんなのいる訳無いじゃないの!

 だって、あいつらただの能無しよ?

 わざわざ群れるとかありえないでしょ」

「でも、妖怪の組織とかあるんじゃないの?」

「そりゃ居るだろうけど、河童の組織とか

 私は聞いたこと無いわよ」


当然、陰陽師である彼女の耳には

色々な悪鬼の組織が存在してることは知って居る。

何なら、全部潰してやろうと考えても居た。


「ま、最近は妖狐族の組織とか出来たらしいけど。

 今度、私が潰しに行こうかしら」

「む、無理はしない方が」

「はぁ? 妖狐とか言う雑魚に私が負けるかっての」

「妖狐族は凄く強い妖怪だって。

 それに、あまり危ない妖怪でも無いし。

 だって、あの錫音様も居るんだよ?」

「はぁ、あんたは錫音好きよね、ただの妖怪なのに」

「錫音様は私達、霊具神姫の恩人なんだからね!

 初代様の命を救って、初代様に夢を与えて

 そして、初代様はその夢を叶える為に

 霊具神姫の技術、魂宿たまやどしの術を作り出したんだから」


霊具神姫が扱う技術は魂宿しと言う名が付いていた。

これは、初代姫長、雪妻由紀恵が命名したわけで無く

5代目姫長の命名である。


「私もいつか、錫音様に最高傑作を渡すの!」

「ふーん……」


清美は少しだけ嫌そうな表情を見せる。

まるで、自分が後回しにされてるような感覚だ。

今、自らの腰には現状の彼女が打った最高傑作があるが

本当の最高傑作はその錫音に渡すと言われたのだから。

何でも1番が良いと考えて居る彼女には少し不服だろう。


だが、ここで深く彼女にキレる事は無かった。

不快な気持ちを少し感じながらも

癇癪を起すことは無く、その話を聞き流す。

流石の彼女も親友には無理強いは出来ないのだ。

ある意味、彼女の可能性と言えるかも知れない。


「それじゃあ、そろそろ私は帰るね。

 皆に魂宿りを教えないとだし」

「分かったわ、じゃあまた」

「またね、清美」


団子屋から去る親友に清美は小さく手を振った。

そして、亜希子が姿を消して少しして

彼女は少し不機嫌そうに席を立った。


「クソ、何よ。私よりもそんな妖怪の方が良いっての?

 この刀は何よ……おまけ? 2番目に大事ですよって?

 クソ、腹立つ……何であんな化け狐なんかに……」


親友を前にあまり言えない愚痴をこぼしながら

店主に金を渡してさっさと店から出て行こうとする。


「あ、あの、清美様、お、お釣りが」

「知るか、適当に取っときなさい」

「あ、は、はい」


明らかに不機嫌そうな彼女に団子屋の店主は何も言えなかった。

彼女が癇癪を起したらどうなるか分からない。

都の人々が感じているのは、そう言う感情だった。

本来、自分達を守護してくれているはずの陰陽師の長に対し

こんな風に感じるのは良くないと考えている人は多いが

彼女が癇癪を起したらどうなるか分からないと言う恐怖の方が

都の人々には浸透していると言えるだろう。


「はぁ、怠いわ」


少し不機嫌になりながらも、陰陽師達の屯所へ帰る。

ここでは陰陽師達が式神の使役を行ない鍛錬を行なう。

陰陽師達の長である彼女は主にこの場で過ごし

陰陽師達の指導を軽く行なっている。


「き、清美様」

「あぁ?」

「し、式神をどうすれば上手く使役出来るかを」

「はぁ? そんなの霊力流し込めば良いわよ。

 そんで、反発しようとしたら痛めつけて」

「し、しかし、それだと可哀想で」

「ただの手足に感情移入してんのよ。

 式神はただの手足よ、可哀想とか無いわ。

 元が悪鬼だろうと妖怪だろうと同じよ。

 所詮はただの駒、手足でしか無い。

 無駄に感情移入して使役するなっての」

「す、済みません」


彼女はあまりにも人に物を教えるのが苦手だった。

大体が感覚で鍛え抜いてきたが為に

誰かに師事した事が殆どないからである。

そもそも、何故他の陰陽師達が

純正の式神を作れないのかも分からない。

完全な天才タイプであるが故の弊害である。


「ったく、これだから雑魚は、

 弱い癖にくだらない事を考えるなっての」


陰陽師達は皆、彼女を恐れていた。

だがしかし、彼女の圧倒的な強さと才能に

尊敬する陰陽師も多く存在してるが為に

彼女が長であっても、陰陽師達は瓦解しない。

現状、陰陽師達が持って居るのは彼女の力では無く

部下の陰陽師達が真っ当であるのが大きかった。


陰陽師達の何人かは家柄から陰陽師として活動し

人々を守っている者も多いのだが

それ以上に多いのが、人々を守りたいが為に

陰陽師を志した者達の数も多いからだ。

そう言って者達は、子供を悪鬼に殺されたり

友人を悪鬼に殺された者も多いが

それ以上に、錫音やあやかしに命を救われた者も多い。

だが、とうの清美はその事を知らない。

部下との対話をしていないが為だ。


その強さ以外、彼女は何処までも長として不適正。

それ故に、宝龍は彼女を知っては居るが

かなり不安視していると言える。


「……清美、君は本当に」

「あ? 宝龍か、私の部下になりに来たの?

 それとも、またくだらないお説教?」

「私が君の前に現われた理由に

 君の説教以外の理由があったか?」

「はぁ、雑魚なのに文句言うなっての。

 どうせあんたも式神なんだから

 大人しく私達の下に付きなさいよ。

 あやかしも全員、私達の下に付いて

 全員私達の言うとおりに動きなさい」

「君の下に付く価値は無いよ。

 少なくとも、今の君のままでは

 本来なら誰も付いては来ない」

「あぁ!?」


彼女は宝龍に向けて針を投げる。

癇癪を起すといつもこうなる。


「はぁ、攻撃は無しだ」


だが、宝龍は呆れながら攻撃を防いだ。

空間から盾を呼び出して、針を防いだのだ。


「ち! 生意気ね! チビの癖に!」

「それは君の方だろう? 清美。

 君は何処までも心が小さいんだから」

「雑魚が文句垂れるな!」


宝龍を前に式神全員を召喚した。


「え? 何で呼んだの?」

「宝龍を始末しなさい!」

「はぁ? 勝てない相手に挑むほど

 私達、馬鹿じゃないんですけど?」

「何言ってんのよ! 相手は1人よ!」

「無理無理、宝龍様は無理ー」

「役立たず!」

「何度も経験しただろう、清美。

 君はまだまだ未熟だ、自らの式神が

 その様に反発しているのが何よりの証拠」

「はぁ!? それはこいつらが!」

「錫音の式神は彼女の命令には必ず従うぞ?」

「その名前を出すな!」


不意に刀を抜いて宝龍を狙った。

だが、その刀は結界に阻まれて防がれる。


「クソ!」

「君は感情的になりすぎだと思うのだがね」

「玄王、あんたも来た訳ね」

「清美、私達はこれでも君に可能性を感じてるんだ。

 そろそろ成長して欲しいんだが」

「はん! もう十分成長してるわよ!

 私は最強の陰陽師よ。あんたら全員を殺すくらい訳無い!」

「私達は君の敵じゃない、味方だ。

 人々を守護するためのあやかし」

「じゃあ、私に文句を垂れるな!」

「……はぁ、君は本当に、いつか後悔するぞ?

 傲慢になりすぎても良い事は無いんだ」

「傲慢なんかじゃ無いわ、私は事実しか語ってない。

 私は最強の陰陽師。この事実は変わりないわ」

「……だが、最強の存在では無い」

「いいえ、最強よ。私は誰にも負けない」

「いいや、君は最強では無い。君が勝てない妖怪は

 この世界には何人も居る。自惚れるな」

「はぁ!? そんな奴は居ない!

 私が最強なのよ!」


癇癪を起した清美は再び宝龍を攻撃する。

かなりの霊力を纏わせた一撃。

並の刀であれば簡単に折れてしまうだろうが

彼女が持つ刀は亜麟錫華史、並の業物では無い。


「ふむ、やはり霊力の出力が上がってるな」


玄王が小さく呟き、少し亀裂が入った結界を見た。


「こんな結界、ぶっ壊してやるわよ!」

「清美様! 止めてください!」

「邪魔なのよ!」

「ひ!」


怒りのあまり、自らを止めに来た桐絵に刀を振う。

だが、流石に殺すつもりなど無かったのか

彼女に攻撃が当ることは無かった。


「……クソ! もう良いわよ」


そう言い、彼女は屯所から出て行った。


「清美、彼女は本当に……」

「す、済みません、宝龍様……清美様が。

 で、でも、清美様、何だか今日は不機嫌で

 ふ、普段なら、もう少し温厚なんですけど」

「知ってるよ。庇おうとする必要は無い。

 ……桐絵、君は変わらず、彼女を支えてあげて欲しい。

 彼女はまだ子供だ。きっと、まだ可能性はある」

「わ、私が清美様を支えるだなんて、そんな」

「いいや、君は彼女の支えとなってる筈だ。

 今まで通り、彼女に接してあげて欲しい。

 あの子がもっと成長出来れば……

 その時が来たら、手伝って欲しいことがあるからね」

「手伝って欲しい? そ、それは」

「いいや、まだ秘密だ。だが、大事な事だからね。

 また来るよ、清美のことを頼んだよ」

「は、はい、宝龍様」


屯所から出て行こうとしている清美の背を見ながら

宝龍はあやかしの国へ帰還していった。


「清美様、宝龍様にあんな事を」

「い、いくら何でも……」

「クソ、無駄に才能ばかりだな、腹が立つ」

「まだ15だ、俺達が支えてやらねば」

「あんな癇癪持ちのガキの子守をするってのか?」

「それが大人のやるべき事だろう?」

「いいや、あんなのを放置するべきじゃ無い」


彼女をどうするかで、陰陽師達も割れていた。

このままだと清美が孤立するかも知れないと

桐絵は危機感を感じたのだった。

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