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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第1章、妖狐錫音のとある1日
14/41

東の屋敷

日の国と呼ばれる、帝が支配する島国。

この国に存在する錫音が持つ東西南北の屋敷。

その屋敷には錫音派閥のあやかしや、錫音そっくりの

小さな式神が点在している。


屋敷の全てには本邸に繋がるための鏡があり

その鏡の前で錫音派閥のあやかし達が集まり

繋ぎたい場所を念じれば、それぞれの鏡に繋がる。


とは言え、各地方に存在する鏡からは

錫音が過ごす、本邸に繋がるだけである。

空間を操る宝龍と空間を繋ぐ力を持つ小橘の力

2人の力を使い出来た帰還手鏡を元に

他の崎神族達が協力してようやく完成させたのだ。

これだけで、かなりの技術が必要なのだと分かる。


「ふむ、ここが東の屋敷ですか」

「うん」


屋敷は大体同じ様な構造になっている。

ここは錫音の屋敷だと分かりやすくする為に。


「しかし、この鏡は便利ですねぇ」

「私達しか使えないけどね」

「じゃあ、栗牧が使っても?」

「うん、無理だよ。私の妖力に反応してるから」


鏡が機能する理由は錫音の妖力である。

錫音が持つ妖力に反応して鏡が起動し本邸へと繋がる。

その為、錫音と関係を持たない妖怪では転移の鏡は機能しない。


「どう言う事ですか? さっき鷹枝が来たではありませんか」

「うん、私と一緒に居る子達は皆、私の妖力で変化してるから」


動物やペットがあやかしへと変化する例は非常に多い。

あやかしの中にある、甘羅の殆どがその様に変化したあやかし。

ペットたちがあやかしとなる条件は基本的には霊力だ。

主が高い霊力を持っており、世代を超えて世話をした場合

あるタイミングでそのペットがあやかしとして変化する。


錫音派閥のあやかし達は多数のあやかし達に世話をされ

世代を超えて育てられたペット達の集いでもあり

当然、彼女達には錫音の妖力と霊力が含まれている。


その中でも、特に錫音の霊力と妖力を色濃く受け継いだのが

本邸に居る、アキエ、クロエ、シロナの3人であった。

それ故に、彼女達は並のあやかしよりも遙かに強い。


「なる程、つまり彼女達の妖力の根本は錫音お姉様なのですね」

「そう言う事。だからこの子達は転移の鏡を使えるの。

 小橘がそういう風に調整してくれたからね」


ゆっくりと鏡の部屋から歩きながら会話をしている2人。

彼女達が部屋から出ると同時に、再び小さな錫音が姿を見せた。

その小さな錫音はニコニコとした笑顔で錫音の前に来る。


「ご主人様、お待ちしておりましたの」

「うん、鐘魅かねみ。今の所問題は天狗だけかな?」

「はい、天狗だけですわ」


容姿は錫とそっくりである彼女ではあるが

その動きや性格は全くの別物であった。

錫にあった高圧的な雰囲気などは無く

高貴で丁重な口調で錫音と会話をしている。


「……で、そこのクソ悪鬼は何者ですの?」

「え……?」


さっきまで丁寧に会話をしていた彼女ではあるが

栗牧に言及する瞬間に表情が一気に変化した。

先ほどまで見えなかった瞳が見える。

異質なくらいに鋭い瞳だ。

同時に、異常とも言えるくらいに口が悪くなった。

この状況に流石の栗牧も動揺を見せた。


「あっと、私の妹だよ」

「ほぅ、ご主人様の妹とは。全く面倒ですわね。

 お前がご主人様の関係者で無ければ当然私は

 あなたを串刺しにして葬り去ったというのに」

「こ、恐いですよ? その、錫よりも」

「どうでも良いことですわ。私に必要な事はただ1つ。

 お前が人間を殺してないかどうかと言う事ですわ。

 お前が人間を殺したというなら、例えお前が

 ご主人様の関係者であろうとも串刺しにしますわ。


 眼球を抉り出し、舌を引き抜き、爪を全て剥ぎ

 指を1本1本折り、全身の皮を剥いだ後に心臓を穿ちますわ」

「恐いですよ!? 本当に見た目は錫音お姉様そっくりなのに

 何であなた達はそんなに恐ろしいのですか!?

 ま、まぁ栗牧には関係の無い話ですがね。

 錫音お姉様と共にある地点で分かるとは思いますが

 栗牧は誰も殺しては居ませんからね」

「……その通りですわね」


怒りのような雰囲気は残したままだが、彼女が瞳を閉じた。


「さ、流石に恐いや、鐘魅様。普段はニコニコ笑顔なのに

 悪鬼が来たとき、異常なくらいに恐くなるよぅ」

「当然ですわ、ニャコ。私は悪鬼が大っ嫌いですの」

「あのー、ニャーコなのですけど……」

「ニャコ、速く準備しなさいませ」

「あ、はい、準備します」


ニャーコは三毛猫から変化したあやかしである。

髪の毛が非常に独特な色合いをして居るため目立つ。

黒、オレンジ、白の3色が交わってるショートヘアーだ。

耳と尻尾も同じ様な色合いをしている。

複数の髪色が交わってるのは錫音と同じではあるが

錫音とは違い、彼女は完全に交わっている形。

錫音は狐色と白色に明確な境界線が存在してる。


「はぁ、あたしは小さいんだから労って欲しいけど」

「私の方が小さいですわよ?」

「ぐうの音も出ません」


ニャーコはあやかし達の中では最も背が低い。

胸も小さく、身長も栗牧よりも少し低いほど。

だが、流石に小さな式神よりは背がある。


服装は独特であり、上下で色が別れてる着物だ。

上は白色、帯はオレンジ、下は黒くなっていた。

どうも彼女は、この3色がお気に入りらしい。


「ではこちらを、錫音様」


ニャーコが錫音に地図を手渡した。

そして、地図には誘拐された子供が居た村の場所と

鷹枝が襲撃された地点がマークされている。


「ありがとう。所で、他の子達は?」

鈴蘭すずらんさんは足を使って周辺探索

 ユキコちゃんは村の護衛ですね」


鈴蘭は馬のあやかし、ユキコは兎のあやかしである。

東の屋敷には、この4人が待機している。

その4人を指揮しているのが鐘魅である。


東の屋敷に居る、鷹枝、ニャーコ、ユキコ、鈴蘭。

この4人の中で最強なのは、刀を授かっている鷹枝だ。

鷹枝は空を飛べる、鷹のあやかしで最強の実力を誇る。


「当然ですが、鷹枝は飛行できるあやかしで最強。

 その鷹枝が敗れるなどよっぽどですわ」

「そうだね。鷹枝、何か覚えてる事はある?」

「いえ、完全に不意に攻撃を受けましたから。

 ただ、負傷跡から考えても、刀による攻撃です」


そう言って、鷹枝は服を脱いで錫音に傷跡を改めて見せた。

少しマジマジと錫音はその傷跡を見る。

その傷跡を冷静に見て、何かに気付いた様子を見せる。


「明らかに致命傷じゃ無いよね」

「そうですね……」


実際、不意を突かれたというのであれば急所を狙われる。

だが、鷹枝の傷は致命傷ではないし深くも無い。

明らかに敵意はあるのだが、殺意は無い。


「……そうだよね、うん」


冷静に考えてみれば分かる事だった。

天狗がわざわざ、姿を見せて襲撃はしない。

自分達は鈴の音を鳴らしながら常に歩んでいる。

それは、上空を飛んでる鷹枝も同じだ。


「鷹枝、一応聞くんだけど、鈴の音は鳴らしてたよね?」

「えぇ、勿論です」

「妖力を込めるのを忘れてたとかは?」

「その様な事を、私がするはずもありません」

「うん、そうだよね」


錫音が身につけている鈴。この鈴は妖力を込めることで

より音を大きくすることが出来る。

周囲に鳴り響き、広範囲の存在に音を察知させる。

だが、近くに居る自分達からは大した音は聞えない。


あやかしの国、蓮司の1人であるあやかし

初音はつねと錫音が共同で作り出した特別な鈴だ。

音を操る。木霊に近い性質を持つが

彼女は白式族。つまりは式神から変化した

あやかしである。白式族で最強の実力を誇る

彼女が力を貸して作り出した鈴である為

その効果は非常に広い。

更に強力な効果として

音が聞える範囲の大声を

即座に探知できる効果もある。


その為、色々な子供達を救う事が出来るように

錫音は自分のペット達にこの鈴を配っている。

だが、錫音が身につけてる鈴は最高傑作の鈴であり

非常に澄んだ音色が聞え、

一瞬でその音に気付ける程だ。


他のあやかし達が持つ鈴にはそこまでの音色では無く

錫音が持つ鈴の音色と、

他のあやかし達が持つ鈴の音は

一瞬で別物だと理解できる程である。

だが、効果は折り紙付だ。

当然、鷹枝にもその鈴がある。


妖力を込めることで一定時間効果が発揮する為

妖力を込めている状態であれば、鈴を付けてる者は

普段よりもより耳が良くなると言える。

その為、鈴を動かしてるか否かは即座に分かる。


「だから、鷹枝を襲撃した天狗は

 明確に鷹枝を狙った。

 でも、敵意があるわけでは無い。

 助けを呼ぶ声も聞えなかったんだよね?」

「はい、その様な声は聞いておりません」

「……もしかしたら、同意の上だったのかな。

 はたまた、意識を奪われていたのか。

 とは言え、鷹枝を襲撃する意味は無いはずだよ」


身を隠すのが得意な天狗が

わざわざ存在を見せる必要は無い。

ましてや、鈴の音を鳴らしている鷹枝の襲撃なんて

自分達の身を危険に晒すだけに等しい。


鈴の音を鳴らしているあやかしは

錫音派閥のあやかし。

それは、この世界における常識に近い。

人間達もそれを知ってるし力ある悪鬼達も

当然その事を知って居るのだから。


生まれて間もない悪鬼や知性のない悪鬼であれば

分からないかも知れないが

少なくとも人々と交流している天狗が

その事を知らないはずも無いだろう。


「つまりこれは……私への挑戦状だね」


現状を改めて確認して、理解した相手の意図。

それは、錫音への挑戦だった。

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