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季節は本格的に秋になった。道は黄色や赤の葉で埋め尽くされ、まるでカーペットが敷かれている様だ。
今年、私達のクラスは「逆転シンデレラ」をやる事になった。その名の通り男が女役を演り、女が男役を演るのだ。
「ギャハハ‼︎ 」
光くんは、王子の家来1の衣装を着た由美を笑った。由美は恥辱で真っ赤になっている。確かに男には見えないが、そこまで悪いだろうか? この世界では女性がズボンを履くのがNGの様に、美的感覚も少し違うのかもしれない。
「もう!笑わないでよ! 」
「ヒー!ヒー! 」
「光くんだって、絶対女装似合わないよ‼︎ 」
私もそう思う。光くんは運動部に入っているからか、背が高く肩幅が広い。(あと少し毛深い)フリフリのドレスは似合わないだろう。
「へっ! だから監督になったんだよ! 」
どうやら自覚していた様だ。
「由美、大丈夫。可愛いよ 」
「お世辞でもありがとう。雄大も綺麗だよ」
雄大は本気で言ってそうだったが、由美はお世辞と判断した。雄大は貴族の夫人3だ。フリフリのドレスを着ているが、似合っている。ウィッグを被ればもう女の子だ。
「それにしても……」
由美の目線は私に移った。
「舞、本当に似合ってるね」
「うん。線の薄い美男子って感じだよ」
「さすが王子に推薦されただけはあるな」
由美、雄大、光くんの順にそう言われた。
そう、光くんの言う通り私は王子役になったのだ。
「王子役は全員水谷にやってほしいそうだが、良いか? 」
坂部先生の言葉に私は「はい」と答えた。私は毎年誰かから推薦されて、主人公やヒロインを演ってる。自分で役を選んだ事がない。嫌なら断れば良いのに、期待されると応えたくなるのだ。…まぁ、断る勇気が無いのもある。
「次にシンデレラを決めたいと思います。なりたい人はいませんか? 」
学級委員長の言葉に、答えるものはいなかった。 流石に、この歳になると主人公とかヒロインになりたがる子は少ない。私はそれに毎回推薦されているのだが……もしかして私、嫌われてる?
「はいはーい! 私、アダムくんが良いと思いまーす! 」
少し落ち込んでいると、私の嫌いな声が聞こえて来た。
「はーい!サンセーイ!」
「異議ナーシ! 」
三山の取り巻きも賛同して来た。あいつらの頭はどうなってるんだ。
「おい、お前ら……」
「先生、大丈夫です」
三山たちを注意しようとした先生の言葉を、アダムくんは遮った。
「そ、そうか。じゃあシンデレラの第一候補はアダムだ。他にやりたい奴はいるか? 」
誰も居なかった。
そんな事を思い出していると、「水谷」と私を呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには
ドレス姿のアダムくんが居た。
決して女の子には見えない。アダムくんは光くんより背が高く、肩幅も広い(でも毛深く無い)けれど綺麗だ。単純に綺麗だと思った。
「アダムくん、綺麗」
「うう……気は使わないでくれ。悲しくなる」
アダムくんは私がお世辞を言ったと思った様だ。何故素直に受け取ってもらえないのだろうか?
「水谷は凄い似合ってるな」
「あ、そう? ありがとう」
お世辞でも褒められて嬉しかった。……確かに褒められても素直に受け止められない。
アダムくんのドレス姿を由美達が褒めている間、私は久しぶりのズボンに感動している。水着とか体操服で履いているが、なんか違うのだ。生地が違うのだ。足を覆う暖かさに、私は人知れず感動した。
リハーサルが始まった。明日は遂に本番なのだ。
これまで本当に大変だった。監督の光くんは演技に厳しいし、三山がこれ以上変な事をしないか気が気じゃなかったし、なんか女子からも告白される様になったし(傷つけない様丁寧に断った)
それだけ苦労したからか、リハーサルは大成功で終わった。光くん大満足。次にリハをするため、待っていた他学年の子達からも拍手をもらった。
「明日は本番だね」
私はアダムくんにそう言った。今は放課後、帰路が途中まで一緒の為アダムくんと歩いていた。
「ああ、頑張らないとな」
アダムくんは真剣な顔でそう言った。ふとそこで、私はある事を思い出した。
「アダムくん…スカート姿を沢山の人に見られる訳だけど、大丈夫? 」
私は意を決して聞いてみた。今更だが、もしダメなら私が色々とフォローするつもりだ。
「うーん、多分大丈夫。ドレスのスカートって長いだろ。足が見えないから大丈夫だと思う」
そうか、なら良いか。アダムくんは最近トラウマに強くなって来た。私が間違って彼に少し触れてしまった時も、彼は顔色が悪くなったがパニックにはならなかった。
明日の本番、何事も無く成功しますように。
お読み頂きありがとうございました。




