25
夏になった。相変わらずクーラーの無いこの学校は暑い。「暑い暑い暑い暑い」とリピートし続ける由美の顔は無表情で怖い。どんだけ暑いのが嫌いなんだ。
「クーラー付けて欲しいよな」
「同感」
アダムくんがそう言うと、由美はマジな顔で言った。
アダムくんは、由美とも普通るに話せる様になった。やはり昔程とはいかないが、落ち着いて話せている。由美はアダムくん普通に話しかけられた時飛び跳ねて喜んでいた。彼女は寂しかったのだ。自分にだけよそよそしくされるのが。それを感じさせない様に過ごしていた由美は凄いと思うと同時に良い奴だと思った。
「修学旅行の班決めするぞー! 」
そんな事を考えているとチャイムが鳴り、坂部先生が教室に入ってきた。
もうすぐ修学旅行がある。行き先には海があり、自由時間には泳ぐ事も許されている。水着は自由なので、皆んなお洒落な物を着るのだろう。男子も学校の水着の様に、ほぼ全身タイツのような物は着ないだろう。五年生の時、男子の水着がそれに変わったのだ。当然不評だったのでまた変わるだろう。
それで現在、私達は修学旅行の班決めをしている。クジ引きで決めるので、誰と一緒になるか分からない。私の引いたクジは「5」と書かれていた。どうやら私は五班になるらしい。
「皆んなクジ引いたなー!そしたら同じ班の奴と集まれー! 」
先生がそう言うので、私は五班の子を探した。
班は十まであり、一つの班には四人いる。私と同じ班になった子は、白田 勝子さん、海堂 光くん、そして三山 百合だった。三山、そう縦割り班が同じでアダムくんに嫌がらせをした奴だ。私はあまり人を嫌う事は無いのだが、彼女は別だ。他の二人は良かったが、三山と一緒だったのは残念だ。
「あ、水谷さん同じ班なんだ〜。仲良くしようね〜」
三山はヘラヘラと笑いながら、そう言った。私は内心とは反対に、笑って「よろしく、三山さん」と言っておいた。
白田さんとは一年生の徒競走の時から、仲良くなった。ライバルというやつだ。毎年、運動会のシーズンになると同じくらいの身体能力の私達は、どちらの方が良いかどんぐりの背比べの様に競っている。
「一緒の班になったわね。貴女と一緒になれて嬉しいわ。これからよろしく」
白田さんはクールにそう言った。
「水谷さん、よろしくな! 」
光くんは、そう笑顔で言った。彼は、一年生の時同じクラスで学芸会の時の監督だ。
私は、白田さんと光くんとしばらく話していだ。三山はその様子を黙って見ていた。
帰り、私は由美と別れた後、三山と会った。
「水谷さん、偶然だね! 」
ニコニコと笑いながら彼女は近づいてくる。「三山さん、家こっちにあるんだね」
私がそう言うと、彼女は笑みを深めた。
「あんた、あたしの事嫌いでしょ」
急に彼女はそう言った。確かにそうだが、急に何でそんな事を言ってきたのか?
「どうしたの? 急にそんな事言って……」
「あたしもあんたの事嫌いだから」
私の話を聞かず、三山はそう言った。さっきからなんなんだ。
「でも、それ以上に田中が嫌い」
三山は顔を歪めて言った。私は分かるが、何故アダムくんの事をそんなに嫌うのか?
「あたし、彼に何するか自分でも分からないから、ちゃんと守ってあげなよ」
そう言うと、彼女は学校の方へ走っていった。何だったんだ。
唯一分かった事は、三山は危険な奴だということだった。
お読み頂きありがとうございました。




