19話
あのバイトを始めて、1ヶ月がたった。
僕の心はもうボロボロだった。
「お兄ちゃん、一緒お風呂入ろうよ」って輝が僕の部屋に入ってきた。
母さんたちがいたころ、僕は輝と一緒に入っていた。
しかし、バイトを始めてから、僕はずっと輝の誘いを断り続けていたんだ…
「お兄ちゃん、何で一緒に入ってくれなくなったの?」
「ん?入ってほしいのか?」僕は輝に冷たく言ってしまった。
「分かった…お風呂入って来るね…」輝は悲しそうに僕の部屋を出て行った。
<大学の教室>
「灯~」僕を呼んだのは、高校のときからの友達である、空だった。
でも僕は眠くて、
「ん?空…」って曖昧な返事しか出来なかった。
「灯最近眠そうだな…しかも痩せたか?」空はそう言って僕の顔を覗き込んだ。
確かに、最近夜遅くまで働かされて、そのたびにお酒を飲ませられる。
僕はお酒が体に合わなくて、バイトから上がった瞬間、トイレで吐いていた。
そのせいで、体重は落ちただろう…
「色々あるんだよ」僕はそう言って机にうつ伏せた。
「灯大丈夫か?俺で良かったら相談に乗らせてよ」空はそう言って僕の頭をポンポンした。
僕は空の優しさが嬉しくて、目から勝手に涙がでてきた。
「灯?ゆっくりで良いから話して?」
「空…あのな…」僕は、今までのことを空にさらけ出した。
空は、僕の話を聞きながら、一緒に泣いてくれた。
「灯、辛かったな…でも行かなくていいんじゃない?そのバイト」
「だめだよ。輝がいるから…」
「もう本当に灯は輝くんのこと好きだよな…」
「そうだよ。輝が悲しむくらいなら、僕が苦しんだほうがいい…」
「灯…」
「でももう嫌。こんなこと…」
「輝くんだって、灯が苦しい思いなんてしてほしくないと思うけど…」
「うん…」僕はもうあんなバイトしたくなかった。
僕は、(おじさんに頼んでみよう…)
そんな微かな希望を持って、家に帰った。




