第6話 連合首都へ その1
そろそろ、別の街で仕事する話を書いていきます。
クリーガーら傭兵団『シュタイルランツ』との共同依頼終了から数日後。
戸上とエミリアは、昇格のために今日もギルドから発注されている依頼をこなしていた。
「はぁ、暇ですね」
と、少し眠そうな表情を浮かべるエミリア。
肩には、愛用のヘッジマスターM2ではなく、別のライフル銃をかけていた。
「ま、しょうがないさ。単なる輸送物資集積所の警備なんだしな」
同じく退屈そうな戸上。
彼らの周辺には、同じく数人の傭兵がややけだるそうに巡回しつつ警備についていた。
「しかし、輸送物資集積所とはいえここはウィンヒトラ郊外だろう。都市警備隊だっているのに、何で傭兵なんぞ雇うんだ」
ふと、疑問を口にする戸上。
「ああ、それはですね。ウィンヒトラ郊外にはスラムがあるんですよ。で、そこの連中がここに物資窃盗で侵入してくるんですよ。なんせ、ここ結構広いですし、警備隊もここだけ警護するわけにはいきませんからね。都市の北部には、首都に向けて伸びる鉄道もあります。あっちは、旅客とかもいますので、そこを襲われると一大事ですからね」
「なるほど、こっちは物資だけだが、あっちは物資と身代金が手に入るわけか」
「ええ。ですから、こっちのほうは、集積所の中心にある物資流通管理センターには警備隊が常駐してますが、周辺は傭兵や警備セキュリティ会社が担当してますね。それに、近くには一般商業施設や住宅街もあります。その近くで事件や事故は治安行政上まずいですからね」
「警備会社なんかあるのか」
「一般の商業施設とかの警備は、そういった会社の専門ですね。当然ながら、傭兵とは違いますので銃火器での武装は禁止です。そこはすみわけがされてますね。逆にいえば、傭兵団はそういった施設の警備をすることはまずないですね。テロとかの標的になった場合は別ですが」
「うん、テロリストなんかもいるのか」
「ええ、まあ・・・・・・」
苦笑するエミリア。
「たぶん、アキオの世界にもテロリストはいたと思いますが、ここの連中はちょっと異常ですけどね」
「テロなんぞやる奴は、どこでも頭のネジが緩んでいるよ。まともなやつは、銃火器をつかった商売はしないよ。ま、俺達も大概だがな」
「はは、確かに」
そして、そのまま決められたコースを巡回し、退屈な依頼を続ける二人。
だが、まもなく退屈とは無縁になる事態が迫っていた。
巡回ルートを回っている時、エミリアはあるコンテナにふと目を向けると妙なものを見つけた。
そこには、やや薄汚れた作業着をまとった数人の集団がコンテナ前で作業をしていたが、その動きはどこかぎこちなく周囲を警戒しながらのものであった。
「アキオ、向こうのコンテナを」
相手に見つからないように、死角に隠れつつコンテナを指差すエミリア。
「どうしたエミリア。何を見つけた」
「あのコンテナの前にいる作業員ですが、ちょっとおかしいです。ここは、基本大きい荷物を輸送管理する集積所ですが、あの連中は荷物を移動させる車両とかを使っていません」
「メンテナンス要員とかじゃないのか?」
「それはないと思います。メンテナンス業務は基本、夜間で行うのがここの業務規則です。それ以外の場合は、予定表に記載があります」
「なら、侵入者様のご来場か。丁重にもてなさないとな」
そういって、愛用のナハトイェーガーのコッキングレバーを引き弾薬を薬室に送り込む。
エミリアも、ライフル銃の銃床を肩に当て狙いを定めていた。
「俺が声をかける。連中が逃げ出したら、逃げる方向の手前に威嚇発砲をして足を止めろ」
「了解」
そして、相手に悟られないように、ゆっくりと距離を詰める。
「おい、お前達。どこの作業班だ」
前触れもなく、作業着集団に声をかける戸上。
次の瞬間、集団は一斉に振り向き二人を確認するなりあわてて逃げ出した。
だが、その動きを見越していたエミリアが集団の少し手前に数発の威嚇射撃を行い足を止める。
突然の銃声に、驚き足を止める作業着集団。
「もう一度聞く、どこの会社の作業員だ。所属を言え」
恐怖で引きつっている作業着姿の男を問い詰める戸上。
「お、俺達はその・・・・・・アーカーシャ商会の作業員だ。いきなり撃つことはないだろう!」
「こっちの質問に答えずに逃げるからだ。エミリア、端末で確認を。お前らは動くな」
「了解です」
すぐに、腰にぶら下げている小型のタブレット端末で商会の名前を検索するエミリア。
「アーカーシャ商会。確かにありますね」
検索結果を伝えるエミリア。
「ほ、ほら、そうだろう。お、俺達はその商会の作業員で・・・・・・」
「ですが、アーカーシャ商会の作業活動の提出はありません。それと、貴方達の作業着はアーカーシャ商会のとは違いますね。それは別の商会の、しかも既に倒産した商会の作業着です」
「ぐがっ・・・・・・」
さらに表情を引きつらせる作業服の男。
「さて、倒産した商会の作業員さん。あなたは、ど・ち・ら・さ・ま・で・す・か」
わざと、ゆっくりと、だが強い口調で話しかける戸上。
既に銃口は、男の頭部に狙いを定めており、いつでも引き金を引けば男をタダの肉塊にすることができる体勢であった。
「ぐっ、ぐぐっ・・・・・・」
「ま、おおかたどこかで倒産した商会の作業着でも入手したんだろう。こんだけ広い集積所だ、どこかしら侵入するルートはあるだろうな。さて、お前らに選択肢を与えよう。このまま、おとなしくつかまるか。それとも・・・・・・」
「うぉおおおおお~!」
突然、一人の男が懐からナイフを取り出し、戸上に向けて突進してきた。
「やっぱりこうなるか」
だが、動きを予測していたため、あっさりとその動きをかわし逆に足を引っ掛け盛大に地面に転倒させた。
直後、男の大腿部に銃口を向けて引き金を引く。
パンッという、乾いた音と共に男のつんざくような悲鳴がこだました。
そして、それをまるで合図のようにほかの男達も懐からナイフを取り出して戸上達に襲い掛かってきた。
「エミリア、急所ははずせ。生け捕りにするぞ」
「了解」
ライフルでは威力がある過ぎるため、戸上はライフル銃を袈裟がけにしサイドアームであるセミオートのハンドガンで攻撃を開始した。
二人の男が、大振りにナイフを振るい戸上を殺そうと襲い掛かってきた。
だが、すばやくバックステップで攻撃を空振りにさせ、逆にハンドガンで相手の肩や足の甲を撃ち抜いた。
「がぎゃあぁ!」
「ぐげぇ!」
苦痛で、歪んだ悲鳴を上げ地面にのた打ち回る男達。
「おい、お前らに勝ち目はないぞ。いい加減、降伏しろ。そうすれば怪我をしないで済む」
「う、うるせぇ。お前らを殺せば、問題は解決だ!か、覚悟しやがれ」
震えつつも、ナイフを戸上に向ける男。
「やれやれ、やっぱこうなるか・・・・・・」
そして、男達と距離を空けどう生け捕るか思案を始めた。
一方、エミリアも戸上と少し離れた場所で3人の作業服を着た男達を相手にしていた。
「あの~、できれば降伏してくれません。そうすれば、誰も怪我をしませんよ」
スパイクロットを構え、男達に降伏を促す。
「へへっ、嬢ちゃんよ。寝言は寝ていいな。こっちは三人、そっちは一人だぜ」
「あ、兄貴、こ、こいつよく見るといい女でっせ」
「ほ、本当だ。まあ、獣人だが、女に変わりはねぇ。たっぷり、かわいがってやるぜ」
「そうだな。おい、お前らあんまり怪我はさせるなよ。取り押さえて、物陰に連れ込むんだ」
いやらしい笑みを浮かべる三人の男。
「はぁ、男ってこういう場面でも性欲はあるんですねぇ」
半ば関心し、半ばあきれるエミリア。
「獣人だからって、男三人相手に勝てると思うなよ」
「安心しろよ嬢ちゃん。あとで、天国を味あわせてやるぜ」
「あ、兄貴、俺はもう辛抱たまらんぜ」
そう言って、じりじりと間合いを詰める男達。
だが、彼らにとってエミリアはあまりに相手が悪かった。
確かに、普通の獣人であれば男達のほうが有利だっただろう。
しかし、身体能力が獣人属でも指折りの能力を持つ銀猫族に男三人で挑むのは自殺行為であった。
「仕方ないですね。じゃあ、骨にひびが入っても文句は言わないでくださいよ!」
次の瞬間、男達の視界からエミリアが急に消えたように見えた。
そして、三人の中で最も体格のいい男が何の前触れもなく頭部を仰け反り宙に舞いそのまま背中から地面に激突した。
男の視界から消えた瞬間、エミリアは体勢をかがめ下あごに向けて強烈なアッパーを繰り出していた。
「ぐはっ!?」
脳が揺さぶられる衝撃を受け、あっというまに意識を失う男。
「あ、兄貴!?」
「て、てめぇ!」
やや、背の高い男が拳を振り上げエミリアに殴りかかろうとした。
だが、男の手首をつかみそのまま強引に半回転させ砂利の轢かれた地面に叩きつけた。
「ガバッ!?」
顔面から地面に叩きつけられ、鼻の骨を折り血を流す男。
口からも出血しており、歯が2・3本折れたようであった。
おまけに、強い衝撃で砂利の地面に叩きつけられたため小さな石が顔にめり込みそこから出血をしていた。
「あがっ・・・・・・あがががが・・・・・・は、鼻が、は、歯が・・・・・・」
気絶するぐらいの衝撃をうけつつも、骨折の痛みで気絶するとすらできず痛みに苦しむ男。
「あひぃ・・・・・・そ、そんなバカな・・・・・・」
最後に残った、やや小太りの男があまりの光景に地べたに腰をついていた。
「で、どうします?まだ、やりますか?」
にっこりと、笑みを浮かべつつ男に問いかける。
だが、男はブンブンと首を左右に振るだけだった。
「じゃ、降伏ってことでいいですね。それじゃ、この手錠をはめてくださいね。あっ、ごまかしたらどっかの骨を折りますからね」
屈託のない笑みを浮かべつつ話しかける。
男にとって、それは恐怖にしか映らなかった。
「ぐぎゃぁ!」
肩を撃ち抜かれ、悲鳴を上げながら硬い土の地面に倒れこむ男。
戸上と対峙していた男達は、全員体のどこかしらをハンドガンで撃たれ地面うずくまっていた。
「ったく、手間をかけさせやがって。こいつの弾代は経費請求できないだぞ」
悪態をつきつつ、地面に倒れた男達に拘束用の結束バンドを両手首に巻きつける。
「アキオ、大丈夫ですか?」
そこへ、小太りの男を連れたエミリアがやってきた。
「おう、こっちは問題ない。そっちはどうだ」
「問題ないです。無事終わりました。二人は、抵抗してきたので少し大人しくなってもらいました。今は結束バンドをつけて、鉄柱に縛り付けています」
「ほう。で、そいつは」
「唯一の投降者です」
「そいつは大金星だな。エミリア、タブレット端末で管理センターに連絡。警備隊にこいつらを引き取ってもらわないとな」
「了解です」
すぐさま、管理センターに向けてメールで連絡をするエミリア。
しばらくして、武装した警備隊が戸上達のところにやってきた。
「ご苦労様です」
到着するなり、警備小隊の隊長へ報告をする戸上た。
「こちらこそご苦労様です。巡回中に、不審な一団を発見。所属を確認したところ、現在は活動してない商会の名前を回答。不法侵入者と判断しこれに対処。相手側が、武装していたためこれを制圧した次第であります」
的確に報告をする戸上。
「なるほど。よし、負傷したやつで動けるのは歩かせろ。動けないのは担架で運べ」
『ハッ!』
配下の警備隊員命令をする隊長。
「で、こいつらはどうなるんですか?」
「ま、管理センターで尋問して、前歴があるかないかを確認するよ。前歴があれば、まあ程度によるが最悪鉱山送りだな」
「うへぇ。鉱山って、もしかしてあそこですか?」
心底、同情した表情を浮かべるエミリア。
「おっ、君は知っているのかね」
「直接は知りませんが。以前、鉱山労働者が寝泊りする宿舎で炊事係りをしていまして、そこで鉱山労働者から坑内にすごく危険な坑道があるって話を聞きました。そこの作業員の大半が、ここやほかで犯罪をした犯罪者だってことも」
「ああ。前歴によるが、最悪そこに送られるな」
「エミリア、察するにそこはかなり危険な坑道なのか?」
「ええと、私も聞いた範囲なんで正確じゃないですが。なんでも、貴重な鉱石が取れるところなんですが、有毒ガスとかも出て長時間の作業ができない場所だそうです。しかも、地熱がすごいらしく1時間もいれば脱水症状で危険な状態になるそうです」
「おおむね合っているな。付け加えるなら、犯罪者が懲罰で送られて帰ってきたやつはいないってことぐらいかな」
エミリアの説明を補足する警備隊長。
「おいおい、とんでもなく危険な場所だな。よく批判されないな」
「うん。君は何を言っているのかね。重犯罪者にはふさわしい刑罰だよ。処刑よりは生存の期間がある上に、刑期を全うすればでてこれのだしね」
「いや、それ事実上の死刑だろう」
「ま、そうとも言うな。さて、そこの君は前科があるのかな?あれば・・・・・・」
「ひぃぃぃ!お、俺は前科はねぇよ!ほ、本当だ!」
悲鳴をあげつつ、自己弁護をする小太りの男。
「ま、調べれば分かるさ。では、後は我々が引き継ぐ。巡回を引き続き頼む」
二人に敬礼して、その場を後にする警備隊長と部下達。
「なぁ、エミリア」
「なんですか?」
「この世界って、ちょっと怖いな」
「そうですか。私にはこれが普通なんですけどねぇ」
「・・・・・・やっぱり、俺はまだこの世界に馴染めてないのかねぇ」
「いや、むしろアキオは結構馴染んでいると思いますよ」
「そうか。さてと、巡回の続きをするか。退屈なのか御免だが、ああいった手合いも勘弁してほしいな」
そして、二人は所定の巡回ルートを回り始めた。
「ったく、ここの警備はどうなっているんだ。ザルじゃないか」
巡回が終わり、交代の傭兵に引き継いだ後、戸上達は管理センターの近くに併設されている休憩室にいた。
あの後、二人の巡回ルートでは3件の不審者集団と遭遇し、あわせて12人を拘束することとなった。
「確かに、ここまで不審者に侵入されるとは驚きですね」
自動販売機で飲み物を調達するエミリア。
両手にもった、紙コップの一つを戸上に渡し自身も喉を潤した。
「おっ、サンキューな」
そう言って、乾いた喉を潤すべく半分の量を一気に飲み干した。
「けど、まあ、野盗と違って戦闘はらくですけどね」
「しつこさは連中以上だがな」
「けど、まあ、そんなにキツイ仕事ではないですね。巡回の合間に、荷降ろし手伝えとか言われるわけでもないですし」
「俺達は傭兵だからな。それに、荷物を移動させている連中は、基本重機とか使っている。重機の扱いに慣れているならまだしも、ド素人が下手に手を出せば事故になりかねん。たぶん、それもあって特にこっちに手伝ってくれとはいわないのだろう」
そういって、残りを飲み干す戸上。
「だが、それにしても一日で4件の不審者対応はないだろう」
「確かに多いですね。ウィンヒトラは、鉱山都市だけにちょっと出自がアレな人が多いですが、それだけにセキュリティはそこそこしっかりしているんですけどねぇ」
「おい、いまアレな人っていわなかったか」
あきれた表情を浮かべる戸上。
「ここは鉱山都市ですよぅ。全うな人を探すほうが難しいですよ」
「ごもっともで。だが、それとは別に随分と不審者の侵入が多いな。何かあったのか?」
「さあ、そこまでは私も」
「そいつは、ここの拡張が原因だろうな」
突然、二人の背後から男の声がした。
声のしたほうに戸上が視線を向けると、そこには戸上と同じような戦闘服を着た一人の獣人の男が立っていた。
背格好は、戸上より少し大きいがどちらかというと、やや細身の体型であった。
そして、一番の特徴は頭部に垂れ下がった犬耳が生えていることであった。
「あんたは?」
「ああ、すまないな。突然、声をかけて。俺は、黒犬族のアルベリヒという。あんた達と同じ、ルーキークラスの傭兵さ」
屈託の無い笑みを浮かべるアルベリヒ。
「同業者か。俺の名前は、戸上彰男。アキオで呼んでくれていい。こっちは相棒のエミリアだ」
自分達の自己紹介をする戸上。
「うん、おまえさん。獣人と組んでいるのか?珍しいな」
アキオのパートナーが、同じ獣人であることに驚くアルベリヒ。
「うん?そんなに珍しいことなのか」
「少なくとも、ルーキー同士でのコンビはみたことないぞ」
「ふうん。で、それはそうと、拡張が原因ってのは?」
疑問を投げかける戸上。
「ああ、それな。元々、この辺一体は貧民街だったのさ。で、街の浄化と雇用促進ってのをお題目にウィンヒトラの行政庁が強制的にここに物流拠点をつくったのさ。まあ、以前から鉱石などの物流輸送基地が必要だったのは事実でな。で、土地買収の必要のないここに建設したわけさ」
「なるほどね。だが、ここは元々は貧民街だったのだろう。なら、その連中に土地の権利とかあるんじゃないのか?」
「ここにいた連中は不法在民さ。当然、権利もないし。そもそも、ウィンヒトラの『市民』としても認識されてないよ」
「世知辛い話だな。その連中への代案とかはなかったのか?」
「さあな。俺も、よそ者だし詳しいことはきいてない。ただ、かなり悶着があったことは確かだ。ま、そのせいかここから盗みをするのは正当な権利だとかいう輩まで出る始末さ」
そういって、肩をすくめるアルベリヒ。
「あきれた理屈だな。それに、ここは鉱山都市だろう、仕事なんぞいくらでもあると思うがな」
「ま、連中は無気力なのさ。ほとんどが、酒を飲むか博打かあとはな・・・・・・」
苦笑するアルベリヒ。
おそらく、エミリアに遠慮して最後の言葉は飲み込んだのだろう。
「悪いな。なんか、色々教えてくれて」
「たいしたことは伝えてないさ。にしても、人属と獣人それも銀猫族の組み合わせか・・・・・・。あんたもしかして」
「あっ、ここにいたのねアルベリヒ」
そのとき、アルベリヒの後ろから戦闘服をきた一人の獣人の女がやってきた。
「ハ、ハンナ!?」
「ったく、どこをほっつき歩いているのよ」
腰に手をあて、やや憮然とした表情で話すハンナ。
「あら、そちらの二人は?」
「同業者さ。ちょいと親しくなってね」
「そうなの。はじめまして、私は赤狐族のハンナ。こいつの相棒よ」
そういって、笑みを浮かべながら挨拶をする。
「赤狐族?」
「ええ。私達、赤狐族は頭髪が赤いのよ。ま、狐耳もあってそう呼ばれているわ。私達がそう名乗っているわけじゃないけど、いつの間にか定着してね」
自分の頭髪を指差して説明するハンナ。
「それよりアルベリヒ、そろそろ巡回の時間よ」
「おっ、もうそんな時間か。じゃ、アキオにエミリアさん。また、縁があればどこかで」
片手を挨拶代わりにあげ、その場を後にするアルベリヒとハンナ。
「なんか、にぎやかな人たちでしたね」
「ま、傭兵なんて基本はアレくらいの気楽さがないとやっていけないよ」
「そういうものですかね」
「殺伐とした商売だからなぁ。さて、次の巡回の時間だ。装備を確認したら行くぞ」
「はい」
そういって、紙コップの中身を飲み干し、装備を再確認して休憩室を後にする二人であった。
「はい、依頼終了を確認です。これで、累積10件の依頼完了を確認しました。ギルドの規定により、アキオ・トガミ様とエミリア・シュミット様は序列7位のブロンズクラスになりました。次のアイアンクラスになるために、三ヶ月以内に依頼10件をこなしてください」
淡々と事務処理を行い、戸上とエミリアのランクアップを行う傭兵ギルドの女性職員。
ただし、二人へのアイアンクラス昇格の説明は形だけである。
「次のアイアンクラスになるにも依頼10件か」
「左様ですトガミ様。なお、ブロンズでもルーキー案件の受託は可能ですが、昇格件数にはカウントされませんので誤解の無きようお願いします」
「了解した」
「では、ギルドから昇格祝い金として、一人当たり2000ゲルト支給されます」
「祝い金がでるのか」
「まあ、これもルーキーの経済負担軽減ですね。皆さん、昇格を優先して依頼料のほうには関心を払わないのですよ。で、10件こなしましたが、当座の生活費が無いってことで、昔はそのまま野盗になった人までいますので」
「それを防ぐ意味でも祝い金を出すわけか。しかし、ギルドとしては収益に悪化しないのか」
「そこは、依頼料のピン跳ねもとい仲介手数料で稼いでますから。それに、ギルド直属の傭兵なんかもいますのでそこでの収入もでかいんですよねぇ」
「おい、いまピン跳ねって隠さずにいっただろう」
「それはともかく、昇格おめでとうございます。祝い金を振り込みますので、TAをこちらに見せてください」
強引に話を変える女性職員。
戸上は、呆れつつも女性職員にTAを差し出した。
そして、女性職員がタッチペンで液晶モニターをなぞると『ピピッ!』という電子音と共にモニターに『2000ゲルトギルド側より振込みがありました』と表示された。
続けて、エミリアのTAにも同じことが行われた。
「それでは、本日の手続きは以上になります。あと、トガミ様とエミリア様には数日後にまたこちらに来所をお願いします。例の件における、昇格手続きを行いますので」
「了解した。それまで俺達は普通に行動していていいのか」
「ええ。依頼をこなすなり、適当に過ごすなりそこはご両人にお任せです。あと、その期間中の依頼件数は昇格件数にはカウントされませんので。さすがに、そこまではギルド側としても」
「当然だな。昇格してないのに、昇格件数にカウントされれば他所が不審に思う。ところで、アイアンから昇格するにはどうすればいいんだ」
昇格の要件についてたずねる戸上。
「実は、アイアン以上の昇格に関しては明確な規定はないんです。単純に依頼件数をこなすだけでは認められていないのです。ほかにも、依頼主への聞き取り調査をして信頼に値する人物か確認をとることを求められています」
「単純に、傭兵としての戦闘能力や依頼遂行力だけでないと」
「ええ。アイアンクラスでは余りありませんが、スチールクラス以上になるといわゆる『固定客』がつきます。つまり、指名依頼といいます。これは、ギルド依頼掲示板には公示されず直接傭兵にいくものです。それだけに、依頼中はそれを遂行する。よほどの事態で無い限り、放棄をしない人物であることを証明されなければ昇格はないのです」
「なるほどね」
「まあ、稼ぐだけなら、アイアンクラスの依頼で十分いけます。実際、傭兵団の中には『固定客』をいやがってあえてアイアンクラスだけでの編成もありますね。もちろん、昇格すればその分だけ高い依頼料を請求できますが」
「傭兵は、あまり縛られるのを好まないからな。ま、いろいろ勉強になったわ。じゃあ、適当なころにまたくるよ」
「それじゃ、また後日にお願いしますね」
一礼するエミリア。
「さてと・・・・・・。これからどうする」
「そうですね。単に、ぶらついても仕方ないですし、依頼を引き受けましょう。これから、色々とかかるかもしれませんし」
「だな。それに、ヘッジマスターM2の修理も、時間がかかるって話だしな」
既に、ヘッジマスターM2はウィンヒトラにあるガンショップに修理依頼を出したが、あまり生産数の多くないこのライフルの修理パーツは少なく取り寄せになるとの説明を受けた。
しかも、パーツの流通量が少ないため、修理単価も上がっているとのことであった。
資金的には余裕のある二人だが、今後のことを考えできるだけ依頼はこなして資金を稼いでおくことで一致した。
「で、どんなのをやる?」
「そうですね。また、ギルドに出向くこともありますし、短期で終わる依頼がいいのでは」
「となると・・・・・・」
そう言って、ブロンズクラス以上向けの依頼が掲示されている掲示板を見る戸上。
技術の進んだこの世界だが、傭兵ギルドの依頼掲示は紙媒体を使用していた。
「うん、これなんかどうだ」
依頼番号:N017-34
依頼内容:荷物運搬護衛
依頼元 :グルップ産業 運輸部門
詳 細:弊社工場で製造された製品集積所の護衛任務です。
ウィンヒトラから、少し離れた場所に建設された工場のため時折、強盗目的の侵入者が出没しますので撃退をお願いします。
期 間:個別相談で決定します。長期勤務者歓迎!
報 酬:400ゲルト/日~
備 考:万が一、任務中に負傷の場合は弊社の医療施設にて治療が可能です。(費用は負傷度合いに応じて)
「なるほど。これなら都合がつきますね。それに、ブロンズ以上になると日額単価が変わりますね」
「だな。じゃ、こいつを数日こなすか」
「ええ」
そして、二人はギルドの受付に依頼受諾を申し込み仕事先に向かうことにした。
数日後。
いくつかの依頼をこなし、今日も単発の依頼をこなし終えた戸上達は報告のためギルドにきていた。
「はい。依頼主からの終了確認も取れております。依頼料は、翌日付でトガミ様・エミリア様の口座に振り込まれます」
依頼完了の手続きをする、傭兵ギルドの女性職員。
「ありがとさん。エミリア、今日の仕事はこいつで終わりだ。あとは、弾薬などを調達して帰るとするか」
「了解です。あと、今日の食事はどうします?」
「そうだなぁ。傭兵向けの安宿の晩飯も食い飽きてきたな。たまには、外食をするか」
「なら、この近くにいくつかお店がありますので後で見にいきましょう」
そして、二人が傭兵ギルドを出ようとしたところ、不意に背後から声をかけられた。
「おお、そこにおるのはトガミじゃないか?」
戸上が振り返ると、そこにはトカゲ人間ことヴァリアージュが立っていた。
「おろ、ヴァリアージュのおっさんじゃねぇか。どうしたんだ」
「なに、傭兵ギルドに依頼をもってきたのさ。お前さんたちは」
「エミリアと一緒に依頼を終えて、その報告をしたあとさ。この後は、オフってやつだよ」
「そいつはお疲れ様だな。ところで、お前さんたちのクラスはまだルーキーなのかね?」
「いや、先日ブロンズになった」
「ほぅ。それは好都合かもな。どうじゃ、わしの依頼を引き受けんか?」
そういって、戸上に依頼を持ちかけるヴァリアージュ。
「ちょ、ちょっとヴァリアージュさん。傭兵ギルド所属の傭兵に対する直接依頼は禁止ですよ」
あわてて、依頼の話を止めるギルド事務員。
「そいつはわしも分かっている。だが、今回の依頼は信頼できるやつにさせたいのだ。ワシはこいつを知っているし、事前に話をするぐらいは問題ないだろう」
「はぁ、仕方ないですね。とりあえず、先に依頼申し込みの手続きだけはしてください。それと、彼らはスチールじゃないので基本は指名できませんよ」
「分かっている。これは、普通に依頼でだすだけだ。なに、その前に知り合いに少し話をしただけさ。すまんが、手続きが終わるまで待ってくれ」
「分かった。俺達は、その辺の席に座っている」
そして、ヴァリアージュと女性職員は依頼受領の事務手続きに入った。
「さてと・・・・・・あの様子だと、しばらく時間がかかりそうだな」
「どうしますアキオ」
「外で何かをするには、中途半端な時間だしなぁ。しゃあない、ギルドに併設されている食堂で軽いものを買って食うか」
「ええ~、あのミリ飯ですか」
げんなりした表情を浮かべるエミリア。
ギルドに併設された食堂は、料金は非常に安いのだが味はお世辞にも美味いとはいえないものであった。
ただ、駆け出しの傭兵などの金のない者には非常にありがたい価格で販売されており、以外に需要も大きかった。
ちなみに、この食堂が低価格で運営されているのは、やはり駆け出し傭兵が金に困って犯罪に走らないようにするための一環である。
ほかにも、ウィンヒトラにきたばかりの出稼ぎ労働者が食費を浮かせるためにここを利用しているケースもある。
「ま、あそこに多くを求めるのはどだい無理な話さ。それに、メインはヴァリアージュのおっさんから話を聞いた後さ」
「それじゃ、お茶請け程度のものでいいですね。てっきり、ここで夕食にするかと」
「よっぽど空腹じゃなきゃくわねぇよ。とりあえず、何にする?」
「アキオに任せます。私は席を確保しておきます。そろそろ、フリースペースは混みそうですから」
「じゃ、そっちは任せた」
ヴァリアージュが二人のところにきたのは、戸上とエミリアがちょうど飲み物と軽食を平らげたころであった。
「おお、すまんな待たせて。うん、おぬしらここで食事を済ませておるのか?」
テーブルにあった、飲み物のコップと軽食が盛られていた皿を見て驚く。
「なわけあるかよ。手慰みってやつだ。ここの飯の味はおっさんも知っているだろう」
苦笑しながら話す戸上。
「ま、そりゃあそうじゃな」
「で、早速だが俺達に仕事ってのはなんだ?」
「簡単にいうと護衛役だな。連合首都『マインフェルト』までの護衛任務だ」
「首都へか。なら、わざわざ俺達に声をかけなくても人が集まりそうだと思うが・・・・・・・」
「アキオ、それが違うんですよ。首都行きの依頼って、実は一部を除けばすんごい不人気なんです。傭兵ギルドの依頼に限らず、ほかのギルドでもあんまり引き受けてがないんです」
戸上の疑問に答えるエミリア。
「うん、どういうことだ。首都なら商売のタネはいくらでもあるんじゃないのか?」
ますます疑問に思う戸上。
「この世界のことえお知らんお前さんは、まあ疑問に思うのも不思議ではないな。程度の差はあるが、実はどの国でも首都とそれ以外の都市や農村などとの関係はあまりよくない。それは、ここリューベック自由貿易連合でも同じだ」
「経済格差ってヤツか」
「ありていに言えばそうなるな。連合首都には、強力な権限を有する商会があり、そこが商人ギルドを管轄している。実質、その商会に加盟できない商人は商売ができんといっていい。そして、それは傭兵ギルドにも影響を及ぼしているのだよ。なんせ、商会に認められた傭兵以外は基本仕事ができんからのう」
「おいおい、それじゃ傭兵ギルドは商人ギルドの下請けじゃないか」
驚きを通り越して、呆れた表情を浮かべる戸上。
「首都では、流通はその商会が全部握っておるからのう。それに、その商会そのものは商売に関しては無理難題は言わんし、むしろ善良ともいえるのだよ」
「だが、それと傭兵ギルドを管理する理由がわからんぞ」
「詳しくはわからんが、どうも昔傭兵絡みで何か事件があったそうだ。で、その商会側が傭兵ギルドに強く抗議した結果がこれらしい」
「で、結局のところ、どうして首都関係の依頼が人気ないのかがわからんのだが」
「答えは簡単じゃよ。首都までいって依頼をこなしても、帰りは手ぶらで帰ることになる。だから、傭兵の多くは引き受けたがらないのさ」
「ギルドがあるのに依頼がないのか?」
「いや、依頼自体はある。ただ、首都で依頼を受けるには、商会の紹介状がないとできん仕組みになっておるのだ。ま、傭兵だけでなく商人もそうなのだがな」
「下請けどころか隷属じゃないか」
「そんなんで、首都に向かう関係の依頼はとにかく人気がないんじゃ。そこで、お前さんたちにできれば引き受けてほしい」
「内容によるな。その辺は話してくれるのか」
「まあ、厳密に言えばいま話すのはギルトとの関係上は本当は拙いのだが、まあその辺は有名無実化しておるし問題はなかろう」
やや、思案しつつも依頼内容を話すことに決めたヴァリアージュ。
「さて、依頼内容じゃが・・・・・・その前に約束してほしい。仮に引き受けない場合は、この話は他言無用にしてほしい」
「それは問題ない。傭兵は、信頼をなくせば死んだと同じだ」
「そうか。なら、話すとしよう。依頼内容は、ある商会の関係者を首都まで護衛してほしいのだ」
「商会の関係者なら、それこそ首都にいる傭兵ギルドの人間に依頼すればいいんじゃないのか。地理だって把握しているのだし」
「うむ、それがのう・・・・・・。その商会の関係者とは、首都の商会とはちょいと仲がよくないものでな」
「なるほど、それなら首都にいる傭兵ギルドに依頼はだせないな。だが、そうなると別の疑問が生じる。なぜ、わざわざ『敵地』に向かうのだ」
「それについていは、依頼主が依頼を引き受けた相手に話すそうだ。正直、ワシもその依頼主に代理で護衛依頼を傭兵ギルドに出して欲しいと頼まれただけだしのう」
「ふむ・・・・・・」
腕を組み、少し思案する戸上。
「エミリア、お前さんはどう思う」
「正直、判断に困ります。依頼内容は、首都までの護衛ですが本当にそれだけなんですか?」
「正確には復路もじゃ。そういった意味では、今回は片手間ということにだけはならんぞ」
「なら、少なくとも赤字って話にはならなそうだな。ヴァリアージュのおっさん、一応依頼は受けるぜ。ただし、俺らだけってのは無しだ」
「安心してくれ。今回は、10名以上の護衛を雇う予定だ。では、明後日にここでまた会おう」
そして、ヴァリアージュと分かれた二人は遅めの夕食を取り宿へと引き上げていった。
明後日。
戸上とエミリアは、やや早めに傭兵ギルドにきていた。
朝の早い時間であるが、既にギルドのエントランスや依頼掲示板にはまばらであるが戦闘服を着た傭兵達が依頼内容を物色していた。
「少し早かったですかね」
周りを見渡し、ヴァリアージュがいないことを確認するエミリア。
「まあ、早めにくる分には問題ないだろう。とりあえず、目立つ位置にいておっさんを待つとしよう」
そして二人は、入り口からも見えやすい位置におかれているテーブルに腰かけることにした。
「それにしても、どういった依頼人なんでしょうね。正直、ヴァリアージュさんの説明だけでは理解できない部分もあります」
依頼内容について、疑問点を戸上にぶつけるエミリア。
「詳細は本人から聞くしかないさ。ただ、言えるの今回の依頼は非常に楽かそれともとんでもなく厄介かどっちかだ」
「えっ、なぜですか?」
「あの後、首都行きの依頼内容をいくつか検索してみたが、どれも傭兵募集の数は5名程度だった。さすがに、大規模な物資輸送の護衛は数が多いが、今回は個人もしくは数名のそれも5人を下回る数だ」
「話からすると、そんな感じですよねぇ」
「なのに、わざわざ10名も募集する。ただし、できるだけ信用できそうな傭兵に限るだ。どっかのご令嬢様なら前者の可能性がでかい。もし、商人などのビジネス系なら後者の可能性がでかい」
「アキオはどっちと踏んでいますか」
「おそらく・・・・・・」
「おや、お前さんは・・・・・・アキオじゃないか。エミリアさんも」
そのとき、不意に誰かが声をかけてきた。
声のしたほうに視線を向けると、そこには黒犬族のアルベリヒと赤狐族のハンナが立っていた。
「よう、集積所以来か」
「ああ。で、お前さんたちも依頼を探しにか」
「いや。既に依頼は受けている。今日は、依頼人との待ち合わせだ」
「待ち合わせ・・・・・・もしかして、口入屋のヴァリアージュの依頼か?」
「お前さんもか」
驚いた表情を浮かべる戸上。
「どうやら、あんたらとは縁がありそうだな」
そういって、屈託のない笑みを浮かべるアルベリヒ。
「アルベリヒ。あんた、本当に図々しいわね。ごめんなさいねトガミさん。こんなアホな相棒で」
「ちょ、おま、それはないだろう」
「あ、あの、お二人も今回の依頼を引き受けるんですよね。よろしくお願いします」
やや、しどろもどろになりながらも挨拶をするエミリア。
「ええ。よろしくねエミリアさん。それと、あなた銀の災厄の件なら私は全く気にしてないわよ。むしろ、信じてない人間だし」
エミリアの態度をみて、何がそうさせるのか汲み取るハンナ。
「おおかた、銀の災厄種であることを気にしているのでしょうけど、私達は全く信じてないわ」
「そうそう。うちの一族も、頭の硬い爺共が本気で信じているぐらいだ」
「だそうだぜエミリア。もっと、堂々としろ。ここにいる連中は、そんなどうでもいいことなんぞ気にしない連中だ」
「す、すみません。やっぱり、以前のことが・・・・・・」
「ま、それは仕方ないわね。いまでも銀猫族を目の敵にするアホが多いのは事実だしね」
呆れた表情を浮かべるハンナ。
だが、一瞬だけだが、目に暗いものが浮かんで消えた。
「で、肝心の依頼主様はまだなのかよ。いい加減、待ちくたびれたぜ」
そういって、テーブルにつっぷすアルベリヒ。
「あんたねぇ・・・・・・」
「な、なんか大変ですね」
「アホを相棒に持つと、碌な事がないわ」
そのとき、不意にギルドのエントランスから数名の集団が入ってきた。
その中には、依頼を持ってきたヴァリアージュの姿もあった。
「来たな。ヴァリアージュのおっさん、ここだ~!」
手をふり、ヴァリアージュに合図を送る戸上。
「おお、もういたのか。まだ、集合時間じゃないぞ」
「遅刻するよりはましだろう」
「たしかにのう」
笑みを浮かべるヴァリアージュ。
「で、ほかは」
「ほれ、もう着ておるわ」
よく見ると、エントランスにいた数名の傭兵がヴァリアージュの近くに来ていた。
そして、ヴァリアージュの隣にはローブを目深にかぶった人が立っていた。
「どうやら、全員いるようじゃなのう。では、皆に依頼人を紹介する。エレーヌ様どうぞ」
ヴァリアージュの隣にいた人が、目深にかぶったローブを脱いだ。
中からできてきたのは、髪の毛も皮膚も黒というよりは闇色の人であった。
「初めてお目にかかる。私は、エレーヌ。諸君らの依頼主だ」
そういって、薄く笑みを浮かべるのであった。
エレーヌさんは、職人としての仕事もしてますが本業はギルド運営責任者の一人です。
なお、分類は亜人属です。




