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第1話 日常との別離

傭兵団の名前が間違えていたので修正です^^;

12/13:もとめ様より頂いた画像をアップ。

モルモットガーデン



第1話 日常との別離





20XX年夏、東京某所。

既に日本の夏が亜熱帯化して数十年。

そんな、生活する上でやや鬱陶しい環境にありながらも、多くの人は頭の片隅にこう思っていた。

『なんだかんだで日本は平和だし、普通に暮らすにはどうにかなる』と。

そして、そんな都会の片隅で一人の青年がほかの大多数と同じ考えを持ちながら、今日も生活の糧を得るべく仕事にいそしんでいた。



「はい、XX社カスタマーセンターです。本日は、どういった・・・・・・・」

『ああっ、ふざけんじゃねぇ。こちとら、5分も電話口でまたされたんだぞ!どうしてくれる』

顧客からの電話を受けるなり、いきなり罵声を浴びせられる。

やれやれ、またこの手の客かよ。

うんざりした表情をしつつも、口調には乗せない一人の青年。

「もうしわけございませんお客様。本日は、どのようのな不都合がございましたでしょうか?」

『不都合だぁ!てめぇのところで購入した商品に不備があったからだろうがぁ!』

声からするに、相手は高齢の購入者のようだ。

日本が高齢化社会を叫ばれて半世紀以上。

企業の製品を購入する半数以上は、いわゆる高齢者およびその予備軍といわれる年齢層が占めてきた。

一方で、クレーム件数もどういったわけか年々上昇傾向にある。

そのため、製品を売るだけでなくこういったクレーム処理関係の仕事はどんな不況下であっても一定の求人があった。

もっとも、こういった仕事を率先してやろうとする求職者は少ない。

その理由は後述すると。

「お、お客様、お怒りはごもっともでございます。つきましては、どういった不備がございましたでしょうか?」

『ああっ!てめぇ、ふざけているのか?お前のところの商品が使いづらいんだよ!』

「まずは、どの商品でございますでしょうか?」

『てめぇんところが、このまえ売り出した新型インフルエンザ予防薬のフィルミータ!なんで、普通の風邪にきかねぇんだよ!おかしいだろうが!』

「お客様、本製品はインフルエンザ専用でございます。普通の風邪薬は、弊社の別製品がございまして・・・・・・・」

『うんなの知るか!高い薬は、万能にきまっているだろうになんできかねぇんだよ!』

半ば、うんざりした表情になる青年。

青年がうんざりするにはわけがある。

ここ、XX社製薬は数多くの製薬商品を販売しており、多くが高齢者などが購入している。

しかしながら、大半の高齢者は薬効をきちんと聞かず、値段と表面的な効果だけで判断している。

そして、青年が相手をしている高齢者のように、高い値段の薬=効果は万能といった思い込みをしており、効果がでないと烈火のごとく反応する。

「お客様、本商品はインフルエンザ対応の医薬品でして。一般の風邪症状には・・・・・・・」

『うなことしるか!とりあえず、精神的苦痛を受けた。損害金払え!』

怒り心頭なのか、元々これが目的なのかついに金銭を要求する老人。

だが、青年はうろたえることはなく、むしろ口元に笑みを浮かべつつ冷静に対応した。

「お客様、申し訳ございませんが、本件につきましては弊社が金銭的賠償を負担する義務はございません。本商品は、店頭で販売されており、購入の意志はお客様ご自身でございます。よって、本製品を服用後になんからの医療事故が発生した場合は、弊社の責任になりますが、目的外購入の場合は保障の対象外となります」

『な、なんだと!それが客に対する対応か!』

「お客様が、直接店舗で購入された商品の場合、製造過程に不具合がございました場合は弊社の責任でございます。しかし、今回の場合はそういったケースに該当しません」

『ふざけるな。客のニーズにこたえるのが企業の責任だろうが!』

もはや、単なるワガママと化している老人。

「お客様、あくまで金銭補償を要求されるのであれば、弊社といたしましても法的手段を講じさせていただくことになります。当然ながら、この会話は証拠として採用させていただきます」

『なんだと!こっちの承諾も得てないのに証拠としてつかうのか!』

「最初のガイダンスで、会話内容は録音させていただきます。ご了承の方は、このままオペレーターと会話してくださいとご案内しております」

『ぐっ、く、くそっ。覚えていろよ!』

陳腐なセリフを残し、電話を切る老人。

「ふうっ、やれやれ。また、この手のクレーマーか。最近、多くないか」

対応内容を、所定の記録フォームに入力しクローズをする青年。

そこへ、外見は青年と同じぐらいの男がやってきた。

「よう、おつかれさん。また、クレーマーかい?」

「ああ。今月でもう6件だ。というか、月初めの週だぜ。やってられんよ」

「ぼやくなぼやくな。それに、うちの会社というかこの業界のこういった対応はお前さんのような資格持ちでないとできないしな」

「いや、そりゃあ俺は薬学部卒の薬剤師資格持ちだが、希望は製薬研究部門だぜ。なんで、こんなコールセンター勤務なんだよ・・・・・・」

「それは人事に聞いてくれ。ま、あの手の相手は薬剤師資格を持つ、戸上でないとできんしな。薬効の話を出されると、ほかのスタッフでは対応できん。無資格者が説明すればご法度だしな」

「なら、なおの事、同じ資格持ちをあと3人はいれてくれよ。宇和島センター長殿」

「そこは、優秀な戸上副センター長殿を信頼している証拠さ」

ポンと、肩をたたきその場を後にする宇和島。

二人は同期入社であり、研修時から一緒の仲でもある。

「やれやれ。これも仕事と生活の糧を手に入れるためか・・・・・・・」

うんざりした表情になりつつ、再びヘッドフォンを装着し次の案件に対応する戸上だった。



数時間後。

「センター長。コール対応時間が終了です」

センター内でひっきりなしになっていた電話コールが終了する時間である。

「おう。了解した。各チーフは、集計後に戸上副センター長に日報提出後に退勤してよし。副センター長は、日報集計後に勤務表を提出してくれ。15日〆があるからな」

「了解しました。では、各班チーフは集計データをこちらに。特に、問題案件は別途形状で」

しばらくして、各班チーフが自身の班の日報をもってくる。

「おし、一斑から六班まで全部あるな。三班チーフ。申し訳ないが、各班の日報があるか目視確認を」

この会社全部署で行われている、エラーチェックを行う戸上。

「はい。大丈夫です。各班チーフのサイン入りです」

戸上と年齢の近い女性が確認した。

「お疲れ様。明日もよろしく」

その一言で、コールセンターから退勤するオペレーター達。

戸上も日報集計を済ませ、結果内容をプリントアウトしセンター長である宇和島のデスクに向かった。

「センター長。日報と勤務表です」

「お疲れさん。で、どんな感じだ」

「まあ、件数はぼちぼちですかね。ここ最近、新製品もあんまり出てないのでクレーム案件は多くないですね。ま、その分、クレーマーが目立ちますが」

「クレーマーか・・・・・・。こいつらは、春夏秋冬いつでもでるからな。それより戸上、ここ最近は帰りが遅いだろう。後はこっちでやっておく」

「すいませんセンター長」

「気にするな」

「では、明日は遅番なので午後に出勤します」

「おう、お疲れさん」

挨拶を交わして、職場を後にする戸上。

もっとも、戸上の勤めるXX社の敷地は広い。

おまけに、コールセンターのある建屋は敷地出入り口ゲートから歩いて15分の距離にある。

本来であれば、XX社の敷地には敷地内専用の移動巡回バスがあるが、どういったわけかコールセンターある建屋は経由しない。

おかげで、最寄の停留所まで日々あることになっている。

「つか、なんでいつもウォーキングなのかねぇ。ま、メタボ対策にはいいが」

愚痴をいいつつも、社内敷地巡回バスに乗りゲート前まで移動する。

そして、エントランスにIDをかざし、ゲートから社外に出て最寄りのバス停まで歩いていく戸上。

会社のある場所は、工場併設のため住宅街からも離れたエリアにあり、バスの利用者も戸上と同じ勤め先の人間しか利用してなかった。

また、帰宅時間からもずれていたため車内は閑散としており、バスの駆動音以外は何も聞こえない状況だった。

(ふうぅ、今日も終わったか。毎度毎度、見当違いの客を相手にするのはつかれる。だが、どこにいっても同じだろうな。このバスと同じように、いつも同じことが・・・・・・)

経験した人ならわかるだろうが、コールセンター業務はストレスがたまる。

本当に抜き差しならぬ状況で困っている相手なら、対応する側もまだ理解できるが実際は大半がクレームに近い内容である。

そして、クレームをいう側は相手が決して抵抗できないことを知っており、無理難題を突きつけてくる。

そのため、どの業界でもそうだがクレーム処理関連のコールセンタースタッフの定着率は非常に悪い。

戸上も元々は、大学卒業後に薬剤師免許を取得し、XX社の製薬開発部門に配属される予定だった。

しかし、就職当時は景気減速もあり、開発部門の増員は見送られかわりにコールセンターに配属となった。

一度は就職辞退も検討したが、不景気もあり、また将来は開発部門への転籍もあるとの口上を信じそのまま在籍したのである。

だが、現実は数年たった今もコールセンター勤務であり、転属申請も都度出すたびに却下されていた。

(せめて、品質管理部門とかにもで転属できればなぁ。そうすればそこから開発に転籍できる可能性も)

窓の外をぼんやりと眺めながら、そんな夢想をする戸上。

だが、本人にもわかっていた。

そのような希望がかなう可能性は低いことを。

就職時期にくらべ、景気は上向いているが低成長の時代である。

また、開発などの部門は新卒を除けば経験者でなければ採用はされない。

なぜなら、現場での開発業務に対応できないからだ。

どこの企業も、新卒を除けば経験のない人間を一から育成する余力はない。

かつてこの国であった、未曾有の経済危機の影響は半世紀近く経過した今もいまだに続いている。

(けど、まだ、幸せなのかな俺は。アレに比べれば)

再び窓の外を眺める戸上。

そこには、ガード下にたむろする浮浪者の一団がボランティア団体の炊き出し援助を受けていた。

景気が上向いているといっても、不景気時代に煽りを食らった連中の救済はない。

むしろ、社会からは完全に放逐されているといってもいい。

一時は、社会福祉制度もそれなりに充実していたこの国も、福祉受益者>納税者の構造が過大となりすべてを救済するのは不可能となっている。

そう考えると、まがりなりも自活できる戸上はまだ幸せな部類かもしれない。

たとえ、本人が希望する仕事とは別であっても。

(でも、やっぱり現実に不満を持つんだよなぁ。人間ってのは)

自分の中に、どうしても処理しきれない感情を抱えつつも車内をボーっと眺める。

おそらく他人がみれば、仕事に疲れた一人の男にしか見えず、記憶にもとどまらないだろう。

そんなときだった。

突然、車内で前触れもなく光が現れた。

最初、戸上は一種の立ちくらみかと思ったが現実は違った。

光はゆっくりと、だが確実に巨大化していった。

「な、なによ、こ、これ!」

「お、おいっ、これはやばいんじゃ!」

車内にいる乗客が口々に狼狽する。

「こ、こいつは一体・・・・・・・」

戸上も突然のことに、体も思考も硬直しそれ以上は何もできなかった。

そして、光は突然巨大化しバスを飲み込み消滅した。

あとには、日が落ちて申し訳程度の街灯がひび割れたアスファルトを照らしていた。

まるで、バスなど最初からなかったような光景がそこにあった。



背中にごつごつした感覚を感じ、戸上は意識を取り戻した。

「っう・・・・・・、ど、どこだここは。つか、なんで俺は地べたに・・・・・・・」

頭を振るい、意識をはっきりさせる。

そして、立ち上がると同時に体に異常がないか確かめる。

「どうやら、スーツに埃がついた以外はなんともなさそうだな。てか、ここはどこだ?」

当たりを見ると、それまでの郊外の工場団地エリアとは違った光景が広がっていた。

「な、なんだ、ここは・・・・・・・どこなんだ!」

戸上が狼狽するもの当然である。

目の前に広がっているのは、荒涼とした大地だった。

あちこちに、背丈の小さい潅木や下草が生えているが、おおよそ豊かとはいいがたい光景である。

しかも戸上のいる場所は、人里離れた場所の可能性があった。

まず、周囲に人家および人の住まう形跡が全く見られなかった。

ただ、戸上のいる小高い丘の下には、道らしきものがあり、そこには車輪の跡もあった。

「どうやら、近くでないにしろ人の生活している場所はありそうだな。最も、どれだけ離れているかが問題だが」

そういって再び周囲を見渡す戸上。

周囲には、バスの残骸らしきものが散乱していた。

そして、同じ場所に乗客らしき人の姿もあった。

「こ、こいつはひどいな・・・・・・・・」

近くに倒れている乗客を見る戸上。

正確には、それは人の残骸と形容できるものであった。

戸上が見ているのは、シートに座った乗客であった。

正確には、乗客の半身であった。

完全に体半分が、それこそ綺麗に真っ二つにされていた。

だが、どこを見ても残り半分は見当たらず、切断された断面からも血液が1滴もでていなかった。

不可思議なことに、断面部分を見るとまるで磨かれた鏡面のように黒く変色していた。

「いったい何が。炭化でもないぞこれは」

冷静に状態を分析する戸上。

「とりあえず、ほかの生存者もなさそうだな。けど、なぜ俺だけ無事なんだ?いや、詮索は後だ。とりあえず、手持ちのものを確認しよう」

そういって、普段持ち歩いている鞄の中身を確認。

「中身は・・・・・・。使えそうなのはこの程度か」

鞄の中身は、普段通勤途中で読んでいる書籍が2冊のほかは、傷薬に消毒薬と包帯それと解熱剤であった。

「やれやれ、こんなものか。サバイバルするには不安だな。とりあえず、何か使えるものがないか見てみるか」

周囲を再び見渡す戸上。

しかし、周囲にあるのは、バラバラになったバスの残骸と半分だけ残った乗客の遺体だけであった。

「こいつはヤバイな。せめて武器になるものだけでも。野生生物にでも逢ったら、素手じゃ対応できん。せめて、鉄パイプみたいなものでも・・・・・・・。おっ、あった!」

挿絵(By みてみん)

少しして、金属の棒のようなものを拾うことができた。

武器としては、やや心ともないがないよりはましである。

そして、丘を降り街道にでる。

「問題はどっちが近いかだな」

腰を落とし、車輪のあとを眺める。

わだち状に刻まれた車輪跡をよく眺めると、一定の方向に向かって傾斜しているのが見て取れた。

「なるほど、向うにむかっているのか」

そういって、傾斜方向に歩き出す。

車輪跡が一定の方向に傾斜していることは、その方向に向かって何らかの物流が動いている証拠であり、その先には都市が存在する可能性が高い。

ただし、歩いていける距離かどうかは不明のままである。

だが、先ほどの場所に留まるよりはマシと考えた戸上はとりあえず歩くことにした。



どのくらいあるいただろうか。

ふと、戸上は立ち止まり違和感を覚えた。

すくなくとも、休憩を挟み数時間は歩いたはずだが、本来あるはずの変化がないことを感じた。

先ほどから、周囲の明るさが変わってないのである。

ここがどこであるにしろ、数時間も歩けば日は傾き夜になるはずである。

だが、周囲の明るさは一定であった。

いや、これは正確ではない。

空をみると、青空はなくただ灰色の雲が一面を覆っていた。

「おかしい。こいつはなんなんだ」

あきらかに、戸上の常識が通じない空間である。

一瞬、ここはあの世かと思ったが、すぐさまそれを否定した。

すくなくとも、死んでいるのなら疲労感を感じて休憩をすることはない。

よって、死後の世界といった状態ではないことは確かである。

「いったいここはどこなんだ。それに、この空はいったい・・・・・・」

そのときであった。

『パン!』

乾いた音が突然響いた。

「なっ!こ、こいつは銃声!?」

とっさに地面に伏せる戸上。

だが、戸上の周囲ではなく、その音は遠方から響いてきた。

最初の乾いた音を皮切りに、徐々に激しさを増す銃声。

そして厄介なことに、その音は徐々に近くなってきた。

「おいおいおい。冗談だろう・・・・・・・」

そして次の瞬間、目の前にある下り坂の道から2台のマイクロバスが飛び出してきた。

そのまま、一台は地面にバウンドしつつ着地したが、もう一台は着地に失敗してそのまま横倒しとなった。

「な、何事だ!」

余りことに硬直する戸上。

少しして、数台のジープのような車両が接近し、十数人の人間が武装した状態で降りてきた。

「おいおいおい!こいつはヤバイ!」

あわてて横倒しになったマイクロバスの陰に隠れながら、鉄パイプを握り締める。

緊張感で、両手にはアセがにじんできた。

直後、マイクロバスの窓からやはり武装した人が一人でてきた。

だが、ジープから降りてきた武装した人間に狙撃され、悲鳴を上げながら戸上のそばに落ちてきた。

「おい、お前!大丈夫か」

あわてて駆け寄り、鞄の中から傷薬と包帯を出す。

しかし、すぐさまその行為は無意味とわかった。

倒れてきたのは、おそらく戸上と年齢は変わらない男であった。

だが、男の胸には大きな穴が開いており、おびただしい出血が既に手の施しようのないことを物語っていた。

「グバァ・・・・・!кжа・・・・・・・」

「な、何をいっている・・・・・」

聞いたこともない言葉で話す男。

そのまま、男は二三言葉を発したあとに事切れた。

気がつくと、周囲では双方が激しい銃声を繰り広げていた。

「くそ、どうなってやがる!」

事態を理解できないものの、とりあえず事切れた男がもっていたライフル銃を拾う戸上。

そのとき、先ほど事切れた男と同じ服装をした男の近くにジープから降りてきたと思われる男が銃を構えていた。

とっさに、ライフルの銃口を向け引き金を引く戸上。

『パンッ!』

乾いた音がこだまし男は前のめりに倒れて事切れた。

そして狙われていた側の男は、戸上のほうを驚いた表情で見ていた。

「大丈夫か!?」

助けた相手に声をかける。

その直後、男は敵に向かって威嚇射撃をしつつ戸上のほうに走ってきた。

「Кто вы ?」

「す、すまん、お前らの言葉がわからん」

「Непостижимый?」

「だ、だから、何を言っている・・・・・・。聞いたこともない言葉だぞ」

「・・・・・!ага!」

やがて男は、戸上と言葉が通じてないことを理解したのか話すを止めた。

変わりに懐から、何か機械のようなものを取り出した。

それは、ブレスレット状の形をしていた。

そして、有無を言わさず戸上の手首につける。

「な、なんだこれは・・・・・っ!」

手首につけられた直後、針を刺すような痛みが全身を駆け抜けた。

「言葉がわかるか」

突然、目の前の男の言葉が戸上の使う言葉と同じになった。

「えっ、ああ、わかる。てか、お前、なんで・・・・・・・」

「話は後だ。銃は使えるな。なら、協力しろ。報酬は、この後のお前の安全と当面の生活の保障だ」

「ちょ、おい。お前」

「とにかく手をかせ。このままだと、お前も殺されるぞ」

「ちぃ、わかったよ」

釈然としないものの、生き残るためにライフルを構える戸上。

まず、狙ったのはジープの影に隠れ狙撃を行っている男であった。

銃口を相手に向け、的確に狙撃する。

引き金を引くと同時に、ジープの陰にいた男が仰け反りそのまま倒れた。

「・・・・・・一発で仕留めたのか」

戸上にブレスレットを渡した男が驚いていた。

だが、そんなことは気にも留めず、戸上は狙撃した場所から移動した。

そして続けざまに、三人の男を狙撃し確実にもの言わぬ存在へと変えていった。

ここにきて、襲撃を仕掛けてきた男たちも戸上の存在に気づきだした。

三人ほどの男たちが、戸上のほうに向かって銃を撃ちながら接近してきた。

しかし、それこそが戸上が狙っていたものであった。

襲撃を受けていた連中が、自分達への攻撃が薄くなったのを見計らい逆に一気に反撃に転じてきた。

あっというまに、数人の男が蜂の巣にされた。

一気に形勢を逆転され、うろたえる襲撃者達。

そして、形勢不利を悟りあわててジープに乗り込み逃げ出していった。

「ふぅ・・・・・・・終わったか・・・・・・・」

狙撃の構えを解き、一息つく戸上。

そこへ、先ほどの男がやってきた。

「助かった。礼をいう。それに、同胞の最後を看取ってくれたことを感謝する」

「いや、こっちこそ助かった。それに看取ったのは正しくないな。正直、言葉も理解できなかった」

「気にするな。あの場合は仕方ない。それとすまんが、横倒しになったバスを元に戻すのを手伝ってくれないか。乗客を街まで連れて行かないといけないのでな」

「ああ、いいぜ。こっちもどうせ街にいかないといけないしな」

「そうか。そうだ、自己紹介が遅れたな。俺は、アディール・ハルトマン。この先の街に拠点をもつ、傭兵団『ブラオウォルフ』のメンバーだ」

「傭兵団・・・・・・。あんた、傭兵なのか」

「うん?何を不思議に思って・・・・・・。ああ、そうかあんた・・・・・転移者(ムーバー)だな」

「転移者(ムーバー)?な、なんだ、それは・・・・・・」

「まあ、そいつは落ち着いたら話そう。それより、名前を教えてくれ」

「あっ、すまん。俺の名前は、戸上 彰男(アキオ)。彰男でいい」

「アキオか。改めて礼をいう。俺のことは、みんなアディと呼んでいる」

「そうかアディ。じゃ、とりあえずまずは」

「ああ、骨が折れるがやるか」

苦笑いしつつ、横倒しになったバスのところに行く二人。

既に、アディと同じ服装をした傭兵団のメンバーが横倒しになったマイクロバスかた乗客を降ろし元に戻す作業に取り掛かっていた。

「アディ。もう少しで元に戻せるぞ。って、そいつは」

一人の男がアディに話しかけてきた。

「俺の恩人で、ベルベルトの最後をみたやつだ」

「そうか。ベルベルトは死んだか」

「ああ、とりあえず・・・・・・・」

そのときだった。

「おい!何をいんたらやっている」

突然、後ろから怒鳴り声がした。

驚きつつも、声の方向を向く戸上。

そこにいたのは、戸上が驚愕する存在だった。

風体は確かに、戸上と同じような人間の形をしていた。

だが、その皮膚は青みがかり、普通の人間とは違い鱗状であった。

瞳も縦に割れており、まさにトカゲが人間化したような風体であった。

「落ち着いてくださいヴァリアージュさん」

どうやら雇い主なのか、怒鳴り声を上げた人物をなだめるアディ。

「ふん!こっちは金を払っているんだ。それにあの程度の襲撃に何をもたついていた。とっととお前らだけ留まり、撃退すればよかったではないか」

「先ほどもお話しましたが、その場合ですと万が一に相手の伏兵がいた場合はあなた方の安全は保障できませんよと」

「だが、実際は問題なかったではないか!こっちは取引に遅れることだけは絶対に避けねばならん。しかも、商品を載せた輸送車まで横転しているではないか」

(あれが輸送車かよ。どうみてもただのマイクロバスだが。しかも商品って、あのバスには人間しか乗っていないよな・・・・・・・)

雇い主(?)の無理難題を聞きつつ、状況を冷静に見ている戸上。

「とにかく、あれが故障して動かない場合は報酬から修理代をさっぴくからな!」

「一応、あれは動きますよ。むしろ、出発前にちゃんとした輸送車をレンタルするべきでは?あれを使うのを我々は反対しましたしね」

依頼主の傍若無人な態度に、やや苛立ちを見せるアディ。

「ったく、これだから低ランクの傭兵団は・・・・・・。とにかく!早急に出発できるように準備しろ」

捨て台詞をはき、自分の乗っていたマイクロバスに戻るヴァリアージュ。

「随分な依頼主だな」

「ま、こんな商売だからな。アキオ、とりあえずで申し訳ないが、お前さんも一応我々の傭兵団の一員として行動してほしい。まあ、そのほうがちょいと面倒なことにならなくていいのでな」

「よくわからんが、とりあえずあんたに従うよ。そうそう、お仲間の銃は返すよ」

「いや、そのまま持っていてくれ。街まで、まだ半日はかかる距離だ。再び襲撃があれば、アキオにも戦ってもらう。その狙撃の腕はたいしたもんだぜ」

「ま、ちょいと銃には触れる機会があってな・・・・・・。けど、やっぱり実戦は違う・・・・・・」

そういって、ややふらつく彰男。

「お、おい、大丈夫か」

「ああ、すまない。本職はちがうんでな」

「アキオ、お前は軍人や兵士じゃないのか?」

「ああ。本業はしがない労働者さ」

「とにかく、横転したバスも元に戻った。出発するので乗り込もう」

そういって、アディ達と彰男はマイクロバスに乗り込んだ。

バスの中は、座席の半分が撤去されており、様々な荷物が車内後部に積まれていた。

中の乗員は、さっきの依頼主を除けばアディと同じ服装をした傭兵が8人いた。

みな、車内に乗り込む彰男を一瞥した後は装備品の手入れを行っていた。

「そうだアキオ、さっきいていた本職は労働者というのはどういう意味だ」

バス乗り込み、座席に座るとアディが話しかけてきた。

「ああ、俺の本職はとある会社の労働者さ。で、副業ってわけではないが予備役軍人をしている」

戸上の住んでいる、皇国日本には正規の皇国日本軍のほかに普段は民間人だが有事の際には正規軍を支援する皇国予備役軍が存在する。

「なるほど。それで、銃の扱いもわかるわけか。納得したよ」

「なあ、それよりアディのいっていた転移者(ムーバー)とはなんなんだ?」

「そうだったな。アキオ、おそらく気がついているがここは君のいた世界じゃない」

「・・・・・・やはりそうか。で、ここはどこなんだ?」

「わからない」

「はっ、どういうことだ?」

「言葉の通りだ。この世界にいる人間は、元々この世界にいた人間じゃない。みんなどこからか、転送されてきたんだ」

「なっ、そんなファンタジーみたいな話があるか」

「じゃあ、聞くがアキオ。君は俺をみてどう思う」

「どうって・・・・・・」

改めてアディをみる戸上。

よく見ると、戸上と外見が同じようで細部は大きく異なっていた。

まず、首のところにエラのような器官が存在していた。

さらに、皮膚は先ほどのヴァリアージュほどでないにしろ鱗状のものがついていた。

「おまえ、それは一体・・・・・・」

「ま、人間族が俺たちをみて驚くは当然だな。おれの種族は魚人族だ。ま、もっとも陸上生活が長いせいで外見はほとんど人間族と変わらんよ。ただ、要所要所には硬い鱗がついているがな」

「そ、そうなのか・・・・・・。じゃあ、ほかの人も」

「ああ、魚人族のほかには銀狼族や地人族なんてのもいる」

「どんな人たちなんだそいつは」

「ま、ここにいるのは人間族か俺のような魚人族だけだ。これからいく街にはいるがな」

「なるほど。で、転移者(ムーバー)ってのはなんだ?」

「そのままさ。どこかほかの世界からここに転移させられてきた人をそう呼んでいる。誰が呼んだかはしらんがね」

「じゃあ、あんたもその転移者なのか?」

「いや、俺はその子孫ってやつだな。数世代前の祖先ってやつがそうらしい」

「うん?ってことは、この世界は少なくとも500年以上前から転移者がいるのか?」

「さあ、その辺はわからんが・・・・・・。だが、100年以上前は不正確だな。もし、おれの祖先が始めての転移者なら、少なくとも2000年以上は経過していることになる」

「なっ、どういうことだ。人の寿命はせいぜい100年程度だぞ。5・6世代と仮定して計算があわないだろう」

「ああ、そうかなるほどな」

少し嬉しそうな表情になるアディ。

「おい。なんで笑う」

アディと対象に憮然とした表情になる戸上。

「いや、すまんすまん。そういや人間族はせいぜい寿命は100年だったな。俺たち、魚人族の寿命は200~400年なんだ。だから、かりに5世代前とすれば最大で2000年の計算になる」

「お、お前らの種族は長寿命なのか・・・・・・。うらやましい限りだぜ」

「そうでもないぜ。寿命が長い分、面倒ごとも比例して大きくなる。人間族の寿命は適当な長さだと思うぜ」

「それは、寿命が長い種族がそういえるだけだ」

「かもな」

「とりあえず転移者については理解できたか」

「ああ、だが一つわからんことがある」

「なんだ?」

「なんで、俺は転移させられた。誰がやった」

「その質問には答えられないな」

「何か知っているのか」

睨みつけるようにアディをみる戸上。

「ああ。すまんすまん。そう睨むな。答えられないというのは、理由を知らないからだ」

「どういうことだ?」

「つまりだ。転移者がなぜここの世界に連れてこられるか。正直なところ誰も知らないのだよ。だから答えられない」

「・・・・・・そういうことか」

呆れつつも、手詰まり感をぬぐえない気分になる戸上。

「まだ質問してもいいか」

「ああ」

「あんたら武装しているが、警察か軍隊なのか?」

「いや違う。俺たちは傭兵ギルド所属の傭兵団だ」

「傭兵団?」

聞きなれぬ言葉である。

「ま、一応この世界でも国家なり政府ってヤツはあるが。まあ、総じてたいした力はもってない。おまけに国境なんてもの曖昧だ。なんせ、この世界がどうなっているのか誰も知らないしな」

「それと傭兵団にどんな関係があるんだ」

「ようするに、国家や政府が管理しているく区域は連中自前の軍事組織なんかで対応できる。けど、ここのようにそうった政府組織が事実上機能してない地区は、さっきのような野盗が跋扈している。で、俺らのような傭兵団がこういった商隊の都市間移動を警護しているわけさ」

「なるほど。俺の世界にあるPMCみたいなものか」

「PMC?」

「民間軍事会社って意味だ。ま、やっていることはお宅らとかわらんよ」

「どの世界でも俺らのような存在はいるわけか」

肩をすくめながら納得するアディ。

「別の質問だが、この腕輪はなんだ?こいつをつけてからお前さんと会話でるのだが」

「そいつは言語リング(ラグンウェッジ・リング)だ。異なる種族間でも会話ができるアイテムだ。もっとも、実際には意訳に近いようだが」

「じゃあお前さんの言葉は、俺の使っている言葉だが実際は違うってことか」

「まあ、そうらしい。正直、こいつもどういった理屈なのか俺にもわからん」

「言葉が通じるならいいさ」

それ以上の質問は無意味なので打ち切ることにする。

「あんまり多く質問しても理解できないので次で最後にする。この集団はどこにむかっているんだ?」

「この近く・・・・・・といっても、もう半日はかかるが鉱山都市ウィンヒトラに向かっている。後ろのバスにいるのは、その都市に向かっている連中さ」

「まさか、奴隷なのか!」

驚く戸上。

「違う違う。みんな、地方の寒村出身の連中さ。地元じゃ、仕事もないんでね。で、あのトカゲ野郎・・・・・・ヴァリアージュのおっさんがたまにああやって寒村をまわって仕事を斡旋しているのさ」

「口入れ屋か。どこにでもいるんだな」

「お前さんの世界にもあるのか」

「まあな。ついでにいうと、奴隷労働の象徴なんていうやつもいる。まあ、見方次第だと思うがな」

「そうか・・・・・・。世界が変わればと思ったが、どうやらどこも同じようだな・・・・・・・」

そういって、窓のにある荒涼とした景色を眺めるアディ。

車列は、そのまま何事もなく荒野に駆動音を響かせつつ目的地へと向かっていった。



どのくらいたっただろうか。

いつの間にか、戸上は座席の上で眠りこけていた。

「・・・・・・っう。いつの間にか眠っていたか」

そして周囲を見渡す。

どうやら、1名を除き傭兵団のメンバーもみな座席で眠りこけていた。

「そりゃあ、疲れれば寝るよな。魚人も同じか」

そういつつ、自分の考えに呆れる。

車内でおきているのは、運転手役の傭兵を除けばおそらく警戒役が一名だけだった。

やがて、警戒役の傭兵が戸上のところにやってきた。

ただ、鼻から下はマフラーなのかスカーフなのかで隠しており表情は窺い知れなかった。

「起きたのか」

「ああ。よく眠れたってわけではないが、少なくとも緊張はとけたよ」

「そうか。それより、戦友の最期を看取ってくれたんだってな。感謝する」

頭を下げる傭兵。

「いや、礼をいわれることはないよ。それに、今際の言葉は理解できなかった」

「転移者(ムーバー)なら仕方ない。大事なのは、最後が孤独でなかった。それが重要だ。こんな商売だ、最後は誰にも看取られないなんてザラにある。そうでなかっただけでも幸せさ。まして、死んだ後も自分の使っていた銃が戦友を救った。この上ない最後さ」

「そういうもんかね」

「そういうもんさ」

そういって、目じりを下げ笑みを浮かべる傭兵。

そして、窓の外に目線を送った。

「見張りか?」

「ああ。まだ、街までもう少しかかる。おまけにここは見通しがいい。襲撃するには絶好の場所だ」

「なるほど。じゃ、反対側を見ておくか」

「いいのか」

そういつつも、窓の外への警戒は怠らない傭兵。

「まあな。それに襲撃されるのはこっちも御免だ」

「給料はでないぞ」

「とりあえず、安全な場所まで送ってくれればそれでいいよ」

同じく目線を窓に送りつつ、軽口で答える戸上。

しばらくは、無言のまま外を警戒しつづけることになった。



それから戸上の感覚で2時間ぐらい経過したころであった。

ふと、戸上の目線に何かが飛び込んできた。

「うん?」

「どうした」

戸上の異変に気がつく傭兵。

「なぁ、ここって砂嵐でもあるのか?」

「砂嵐?いや、ここいら一帯は荒涼としているが比較的気候は安定している。嵐なんかめったに起きないぞ」

「そうか。双眼鏡を貸してくれ」

「ああ」

そういって双眼鏡を戸上に渡す傭兵。

すぐさま、異変のあった場所を覗き込む。

「チッ!やはりか。おい、みんなを起こしてくれ。お客さんだ」

「敵か!?」

「ああ。さっきのと同じ小型車両が5・・・・・・いや、6台だ。1台に4人は乗っている。小隊規模の戦力!」

「同じ連中か。懲りずにまたきたか!おい、みんな起きろ!敵襲だ!」

怒鳴るようにみんなを起こす傭兵。

その言葉に、全員が打たれたように起き上がった。

「アキオ。どうした!」

アディが起きるなり、あわてて駆け寄ってきた。

「お客さんさ。数は車両6を目視確認。人数は少なくても24・5人」

「さっきの連中か?」

「わからんが、すくなくともさっきのと同じ車種に見えた」

「そうか。おい、誰か地図を」

一人の傭兵が付近の地図をもってきた。

「現在位置はこの辺か。もう少しでウィンヒトラなのに」

「どうするアディ」

「・・・・・・このまま走りぬける。後ろのバスにそう伝えろ。下車応戦でも突破される」

「だな。了解した」

そういって、一人の傭兵が運転席に設置してある通信機で後方のバスと連絡を取り合うことにした。

「このまま進むのか」

「ああ。もう少しで街だ。それに街への道は一本道だ。そこまでいけば・・・・・・・」

『ズドン!』

そのときだった。

猛烈な衝撃音が後方から響いてきた。

「な、なんだ!?」

「アディ大変だ!後ろのバスがやられた。グレネードだ!」

「後ろに動けるか確認しろ」

「了解。後ろのバス。動けるか」

『だ、ダメだ・・・・・・。完全にやられた。動けない!」

「どうするアディ」

「・・・・・・やむえん。後ろのバスは放棄。こっちに収容する。収容後に、そのまま街まで走り抜けてくれ」

「だが、全員は乗れんぞ」

「俺らはここで足止めだ。車を横付けしろ。一秒でも早く収容できるようにするんだ」

「了解」

そういって、バスを横付けする運転手。

ドアを開け、傭兵達が降りると同時に動けなくなったバスから乗客があわてた様子で乗り込んでいった。

「お、おいっ!どうするつもりなんだ」

そこへヴァリアージュが、怒鳴り声を上げながらやってきた。

「乗客を乗せ変えたらすぐに出発しますよ」

「な、なら早くしろ!」

「既にやっています。それより、あなたも早く乗り込んでください。このまま、街まで走り・・・・・・・」

『ズドーン!』

そのとき、強烈な衝撃が襲い掛かってきた。

「な、なんだ、状況を報告しろ」

『アディ。こちらドライバー!こっちの車両の後部車輪がやられた。動けない』

「な、なんだと・・・・・・」

「アディ、奴らが接近してくる。射程に入るまで、もう数分もないぞ!」

「くそっ!どうする・・・・・・」

苦悶しつつも、考えをまとめようとするアディ。

「なぁ、アディ」

そのとき、戸上が話しかけてきた。

「なんだアキオ」

「状況を察するに、こっちは完全に足を失った。だが、このバスは装甲が強化されたやつだろう。なら、乗客はここに非難させて、後は俺たちが敵を撃退するしかないだろう」

「アキオ、簡単にいうがこっちは8人。相手は24人以上だ。3倍の戦力差は・・・・・・」

「だが、動かなくなったバスは使える。野戦陣地代わりにして、救援を求めるべきだ。通信機は使えるんだろう」

「あ、ああ・・・・・・」

「なら、増援を呼べばいい。とりあえず、敵が来るまでまだ少し時間がある。誰か、観測手をやってくれ。狙撃で少しでも減らす」

「お、俺がやろう」

一人の傭兵がおそるおそる手を上げた。

「じゃ、よろしく頼む。アディ、時間を稼ぐ。その間に陣地を構築してくれ。それと、望遠スコープはあるか」

「そんなに性能はよくないが一つある。おい、急いで倒れたバスから壁になりそうなのを出すんだ。2名は敵への警戒!急げ!」

スコープを渡しつつ即座に指示をだし、その指示に従い動き出す傭兵たち。

一方、戸上は狙撃姿勢を取り照準を合わせていた。

「相手との距離は?」

「おおよそ800m。まっすぐこっちにきている」

「800m?よく、そんな距離でグレネードが着弾したな」

「ああ。あんた転移者だったな。こっちの世界にはスマートグレネードって便利なもんがあるのさ。最大射程1500mの優れものさ。ま、狙われる側にはたまったものではないが」

「なるほどね。よし、まずは1台目を補足。風向きは?」

「北西の風。風速は3m」

「了解」

そういって、先頭のジープ運転手に照準を合わせる。

次の瞬間、引き金を引くと同時に乾いた音が荒野に木霊した。

間髪いれず、先頭のジープに乗っている運転手の眉間に赤黒い穴が開き、コントロールを失ったジープは少し後ろを走っているもう一台を巻き込んで横転した。

「おおっ、一度に2台か。やるな!」

「だが、ここまでだ。連中、下車しやがった。ここから移動するぞ。銃撃戦になる」

「ここで、狙撃したほうがいいのでは?」

「ダメだ。遮蔽物が少ないから回り込まれる危険性がある。それにこいつは元々、狙撃用のライフルじゃない」

そういって、アディ達のつくった野戦陣地に向かう。

「アキオ、2台やったのか」

「ああ。だが、炎上してない。単に1台の運転手をやったときにもう1台巻き込んだだけだ。たぶん、運転手含めて3人死んでいれば御の字だ」

「そうか、まだ相手は20人ぐらいいるか。各員、個別に迎撃」

「援軍要請の通信は繋がったのか?」

「なんとかな。ただ、最低でも30分はかかるようだ」

「30分か。アラモ砦の戦いを体験するとはな」

「アラモ砦?」

「なに、こっちの世界の話さ。それより来るぞ!」

ライフルを構える戸上。

野盗たちも、ジープから下車し戸上たちを取り囲むように展開した。

「包囲戦か。やってくれる」

「連中のなかには、俺らのような傭兵くずれもいる」

「単なる盗人ってわけではないってことか。厄介だな」

直後、3方向から銃撃の嵐が襲ってきた。

「チィ!好き勝手撃ちやがって」

「反撃しろ!とにかく時間を稼げ!」

アディが全員に向けて叫んだ。

そして、各人が野盗に向けて銃撃を開始する。

だが、劣勢なのは明らかだった。

「アディ、右翼から敵が8人ほどきている。3人じゃ支えられん!」

「左翼も同じ数が来ている!いや、10人だ!誰か一人でいい。こっちに」

「無茶言うな。正面だって敵がいる」

「ちぃくしょ!こんなところで死ん・・・・・・」

そのとき、右側を担当していた仲間の傭兵の一人が突然、糸のきれた人形のように倒れた。

「マーシュ!」

あわてて、倒れた仲間に駆け寄る傭兵。

その動きを狙っていたか、野盗の一人が駆け寄った傭兵に銃撃を仕掛けた。

「ぐあっ!」

一瞬にして、数発の銃弾が傭兵を貫き体は朱に染まった。

「ヘイドリング!くそっがぁ!」

右側に残った最後の一人が、半ば狂気に刈られたように銃撃を行った。

だが、一人が出来ることは限られている。

あっという間に、野盗の接近を許し、挙句に被弾までした。

「ぐっ!くそが・・・・・・このまま死ねるかよ」

「ボルン!無理はするな」

銃撃を行いつつ、仲間を案じるアディ。

「だ、大丈夫・・・・・・。こんなところで死ねるかよ」

だが、口からも血を流し、お世辞にも無事とはいえない状態であった。

ふらふらになりつつも、傭兵の矜持なのか銃撃を続ける。

左側に陣取っている傭兵仲間も、一人が負傷し地面にうずくまっていた。

「アディ、しばらく正面の敵の注意を引き付けられるか?」

「どうしたアキオ。何をするんだ?」

「右側を担当している、ボルンさんだっけ?あのままだとあの人は死ぬぞ」

「それはわかっている。だが、どうにもできんぞ。ここに医者がいるわけじゃ」

「すくなくとも、応急キッドがあるのはさっきみた。そして、ちょうどここにある」

そういって、救急キッドを見せる戸上。

「いつの間に・・・・・・。だか、使えるのか?」

「正直、何が書いているかはわからん。だが、どの世界であれこの手のやることは決まっている。俺に任せろ」

「わかった。だが、引き付けられるのは少しだぞ。二人で弾幕を張っているのを、一人になればすぐにばれる」

「ああ。2分あれば十分だ」

「よし。30秒間の一斉射撃の後にいけ」

「了解」

そういって、銃口を並べ野盗に向けて一斉射撃をする二人。

銃撃は激しく、弾装が空になるまで撃ち続けた。

「いけ、アキオ!」

足元にあった別のライフルを構え、銃撃を再開するアディ。

その言葉を合図に、一気に駆け出す戸上。

すぐさま、右翼で孤軍奮闘しているボルンの元にたどり着いた。

「お、お前・・・・・・な、何をしに・・・・・・」

「とりあえず、威嚇でいいので射撃をしていろ。手当てをする」

「ば、バカヤロウ。そんなことよりお前は逃げろ。ここにいちゃ死ぬぞ」

「この状況じゃ、逃げることもできんよ。後ろから撃たれるだけだ」

話をしつつも、救急キッドを空け中身を確認し、すぐさま止血を始める。

「少ししみるぞ」

そして、消毒スプレーと思われるスプレー缶を使い傷口を消毒する。

そのまま、傷口を半ば無理やり縫合してガーゼを当てる。

「よし、こいつでとりあえず応急処理ができた」

数箇所あった傷口を同じように治療を施す。

そして、ライフルの弾装を交換し銃撃を再開した。

戸上の手当てで、痛みと出血が収まったボルモも銃撃に加わった。

だが、既に仲間の半数が戦死もしくは負傷し、戦力差は歴然であった。

「アディ!やばいぞどうする」

なんとか、無傷の傭兵が銃撃しつつアディに話しかけた。

「どうするもこうするも、最後まで戦え!刺し違えても依頼を達成しろ!」

「だ、だか、このままで・・・・・・ぐあぁ!」

次の瞬間、左側に激しい銃撃が轟き3人の傭兵達がハチの巣にされた。

そして、銃撃が終わったときには3人の傭兵は完全に沈黙していた。

だが、不思議なことに次の攻撃がなかった。

「くそっ!どういうことだ」

遮蔽物に隠れつつ、ライフルに弾装をこめるアディ。

「アディ生きているか?」

「ああ。そっちはどうだ?」

「俺とボルンさんもまだ奇跡的に生きている。ほかにいきているのは?」

「残念だがいない。それより連中、なんで攻撃を止めた」

「わからん。だが、向うもこっちの攻撃でだいぶ被害がでているはずだ」

「だといいが・・・・・・」

『聞こえるか傭兵共!』

そのとき、野盗側のほうから声が響いてきた。

『お前らはよく戦った。正直、こっちも被害がデカイ。そこでどうだ、お前らの命は保障する。さらに、武器ももったままでここを去ってもいい。だが、そのバスに乗っている連中はこっちに渡せ。積荷もだ!』

野盗のリーダーらしき男が交渉を持ちかけてきた。

『こちらとしては、破格の条件だと思う。どうだ!3分時間をやる。それまでに決断しろ!その間はこっちは攻撃を控える』

そして、部下を少し下がらせる野盗のリーダー。

「どうやら、目的は乗客と積荷のようだな。しかし、なぜだ?」

「なるほど。あいつら奴隷商人と吊るんでいやがるな」

さげすんだ表情を浮かべるアディ。

「この世界は奴隷を認めているのか?」

「全部が認めているわけじゃない。だが、奴隷制を認めている国もある。そしてそういった国では奴隷は高値で売れる。そしてこういった、寒村をめぐって労働者を都市に送る集団はよく狙われるのさ」

「なるほどね。確かに商品調達には便利なわけだな。で、どうする?」

「アキオ、お前はここから逃げろ。俺は最後まで戦う。それが傭兵の仕事だ」

「そうだ。お前には・・・・・・この戦いは関係ない・・・・・・とっとと逃げろ」

口から血を流しながら話すボルン。

「残念だが、その申し出は断る。俺も戦友を見捨てる気はないのでな」

「・・・・・・アキオ、お前長生きできないぞ」

呆れたような表情を浮かべ応対するアディ。

「お互いにな。それより、援軍はいつくる」

「たぶん、もうすぐだと思う。あいつら(野盗)も、こっちに交渉を持ちかけたのはそれが理由だろう」

「なら、あと少し持ちこたえればいいわけだ」

「そういうことだが。問題はどうやって凌ぐかだ・・・・・・」

「それについては考えがある。まあ、博打要素だがやるか?」

「この際、博打でもなんでもやるさ。ボルンは?」

「異論は・・・ないぜ。で、どうするんだ転移者(ムーバー)さんよ」

「連中との間は、約400mといったところだ。で、間に遮蔽物はほとんどない。迂回するには時間がかかる。連中としては、こっちの人数が少なくなったからには後は正面突破を仕掛けてくる」

地面に、簡単な絵を書きながら説明する戸上。

「そいつはわかる。だが、こっちはどうするんだ?」

「簡単だよアディ。連中の頭を叩く。おそらく、200mぐらいまでは正面から接近するはずだ。そのあと、散開して俺たちを取り囲むはずだ。だから、やつらに接近させて狙撃する」

「今の距離から狙撃はできんのか?」

「残念だが、無理だ。こいつは元々は狙撃用のライフルじゃない。動きが一定なら、800mでも狙撃はできるが、今度はジグザグに動くはず。そうなると射軸がブレてあたらない。200mまで接近しないとだめだ」

「なるほどな。しかしアキオ、よくその銃の性能が理解できたな」

「どの世界でも、ある程度の法則は同じってことだろう。なら、見たことないライフルでもおおむね用途や特徴はわかるさ」

「お前さんの元の世界での仕事が気になるよ」

「生き残ったら話すさ。それより時間だぜ大将」

ポンとアディの肩を叩く戸上。

『時間だ!返答を聞こう!』

「返事はこうだ!」

そういって、数発の弾丸を野盗に向けて放つアディ。

銃声を聞き、あわててジープの陰に隠れる野盗のリーダー。

『それが答えか!なら地獄で後悔しろ!野郎共、このまま正面から押しつぶすぞ!』

その号令を合図に、ジープの陰からいっせいに飛び出す野盗達。

「来たぞアキオ!」

「ああ。アディ、やつらの親玉はどこにいる?」

「目視概算で300m」

「まだか。なんとしても、こっちに引きずりだすぞ」

そして、3人は野盗に向けて銃撃を開始した。

野盗側も、やや連携が取れてないが各人がジグザグに動き、銃撃を回避しつつ接近してきた。

だが、何人かは立ち止まり、アディ達に反撃するものもいた。

しかし、開けた土地でその行為は無謀であった。

すぐざま、戸上やアディが見逃さず銃撃を行い例外なく蜂の巣にされた。

「バカヤロウ!こんなところで立ち止まって攻撃するな!」

部下のふがいない行動に呆れる野盗リーダー。

「ボス、どうしやす」

「前進は止めるな。野郎ども、ジグザグに動きつつ進め!」

そして、再びジグザグに動きなら前進する野盗たち。

リーダー自身も、ジグザグに動きつつ戸上たちに接近してきた。

「アキオ、射程内にきたぞ」

「ああ。確認した。だが、もう少し引き付ける。ヤツを挑発してくれ」

「了解した。おい、そこの間抜け!数はいるが、どうやらお前を含め使えない連中ばかりだな!」

そういって、わざと足元付近に銃撃をする。

「バ、バカにしやがって!野郎共、このまま突っ込むぞ!」

『オオッ!』

野盗リーダーに煽られ、さらに前進をする野盗達。

リーダーも、怒り心頭なのか無防備に銃を乱射しながら接近してきた。

しかし、銃撃をしながら接近するというのは思った以上に速度が出ないものである。

映画などでは、銃撃しながら相手を倒していくシーンがあるが実際は違う。

まず、動くことは射軸が常にブレており狙いが定まらない状態にある。

そのため、走りながらの銃撃で弾があたることはまずない。

むしろ、敵を倒すよりは相手に対する威嚇が目的である。

だが、野盗達はアディの挑発にまんまんと乗り完全に我を忘れて、威嚇というよりは威圧目的で銃撃しつつ接近していた。

「バカな連中だ。あんなんで弾があたるかよ!」

そして、挑発に乗って突っ込んでくる野盗に向けて銃撃をするアディ。

数回引き金を引き、二人の野盗が地面に倒れた。

「ちくしょう!なんでこっちの射撃はあたらねぇんだよ!」

「知るか!だが、接近して囲めばこっちのもんだ!」

仲間が倒れつつも、地面の起伏を利用して接近し続ける野盗達。

「頭、どうしやす。何人かやられちまった!」

「粘りやがるな傭兵共め!おい、お前ら!少し回りこんで攻撃しろ。連中の注意を引き付けろ!その隙に、残りの人間で正面から接近する」

「了解しやした」

二・三名の野盗が戸上たちの側面に回りだした。

「アキオ、このままでは囲まれる!」

「そうか。なら、こっちのものだな」

「・・・!?」

「とにかく、その回り込む連中にも攻撃してくれ。でないと怪しまれる」

「なら、俺がやる。二、三人なら負傷している俺でも引き付けることはできる」

負傷した体を引きずりつつ、野盗が回り込んでいる方向に移動するボルン。

「大丈夫かボルン」

「ああ。そこの転移者(ムーバー)の手当てのおかげで出血も止まった。もっとも血が少々足りんが」

そういつつ、回り込んだ野盗達に射撃を開始する。

野盗連中も、地面の起伏を盾にして反撃するが所詮は烏合の衆である。

数が多ければ、下手な射撃も効果があるが二・三人では効果が効果は察する程度である。

だが、ボルンが正面の攻撃から外れたことは、正面に対処する銃火が減ることになり野盗達にとって有利に働く結果となった。

「よし、傭兵共は一人回りこんだやつのほうに向かったぞ!野郎共、このまま一気にいくぞ」

そういって、身を隠していた起伏から勢いよく乗り出す野盗のリーダー。

そして、次の瞬間、男の頭から一筋の鮮血が流れた。

「えっ!?」

額にかすかに感じる、何かが流れ落ちる感覚を感じ、そのまま地面にゆっくりと野盗のリーダーは倒れこんだ。

「か、頭!?ば、バカな。何が起き」

突然のことに、銃撃を止め自分達のリーダーの死体を眺める野盗達。

「お、おい、どうする!」

「ど、どうするもこうするも・・・・・・」

指揮する人間を失い、野盗達には狼狽の空気が広がっていた。

「ち、ちくしょう!おい、みんなこのまま引き下がるわけにはいかねぇ!このまま一気に・・・・・・」

だが、その言葉はそのまま続くことはなかった。

突然、野盗達のいる場所に側面から銃弾の嵐が襲いかかってきた。

成す術もなく、銃火の前に倒れていく野盗達。

ほんのわずかの間に荒野には、物言わぬ存在が晒されることになった。

「な、何事だ」

突然のことに呆然とする戸上。

「や、やっときたか・・・・・・。仲間だよアキオ」

そういって、銃弾の飛んできた方向をみるアディ。

そこには、数台のジープとアディと同じデザインの戦闘服をきた武装した男達の集団がいた。

そして、その集団の中から背丈の大きい男が数人の傭兵を従えて近づいてきた。

「アディ無事か」

「はい団長。けど、生存者はボルンだけです」

「そうか。依頼主はどこにいる」

「バスの中にいます。自分らのバスは、簡易とはいえ装甲がありますので安全と思い乗客と一緒に中に避難していただきました」

「そうか。で、こっちの人は誰だ?見たところ、ヴァリアージュのやつが連れてきた労働者でもなさそうだが」

「彼は転移者(ムーバー)です」

「ほう。彼がか・・・・・・。なるほどな」

そういって、戸上を眺める団長。

正直、戸上も余りいい気分ではなかった。

なにせ、背丈が2メートル近くあるような大男で、しかも筋骨隆々である。

「助成感謝する。私は、傭兵団『ブラオウォルフ』団長、ベルンハルト・シュテリンガーだ」

「戸上彰男だ。アキオでいい」

「そうか。では、以後はアキオと呼ばせてもらう。そして、改めて感謝する。部下が生き残れたのは君のおかげだ」

「こっちも生存するために手を貸しただけだ。感謝しているよ」

「なるほどな。ところでアディ。依頼人のヴァリアージュはどこにいる?」

「ああ、依頼主なら・・・・・・」

「おい、どうなっている!」

突然、戸上達の背後から金切り声が聞こえてきた。

挿絵(By みてみん)

そこには、全身を真っ赤に変色させたヴァリアージュが仁王立ちしていた!

「ああヴァリアージュさん、ご無事で何よりです」

「ご無事だと!これのどこがご無事だ!」

「少なくとも、あなたとあなたの連れて行く労働者は無事のようですが」

「だが、私の輸送用のバスは滅茶苦茶だ!どうしてくれる」

「どうしてくれると言われましても。この依頼をあなたから聞いたときに、我々は警告しましたよね。最近、野盗の活動が活発になっている。少数の護衛で移動するのは危険だと」

「だ、だが、お前達は傭兵だろう。なら、我々を警護するのが仕事だ!だがこれは・・・・・・・」

「ヴァリアージュさん!」

強い口調でベルンハルトが、ヴァリアージュの言葉を遮った。

「今回の依頼の際に私はいいましたよね。今までとは違い、多くの集落を回るといってましたね」

「あ、ああ、そうだ」

「で、私は事前のミーティングで、多くの集落を回れば野盗に嗅ぎ付けられる。なので、通常の護衛任務の倍。つまり、2個小隊分の戦力が必要と説明しました。しかし、あなたは1個小隊分でいいと言い張った。結果、襲撃が発生した。何故かわかりますか!」

「そ、そんなの私がわかるわけないだろう」

「おそらくですが、野盗連中はどこかの集落であなたが鉱山都市への労働者募集をかぎつけたのでしょう。で、護衛の戦力を見て少数と判断した。移動距離の長い商隊で少数の護衛。襲撃する側にとっては格好の獲物ですよ」

「む、むぅ!」

「まあ、今回の件はギルドにも報告させていただきます。依頼の基準以下の護衛戦力で、損害が出た場合は報告義務があるのでね」

「ま、待ってくれ!それをされると、私が次にギルドに依頼をするときに費用が・・・・・・」

「こっちも報告を怠れば処罰されます。まあ、不確定要素があったという部分はいれておくことも可能ですが・・・・・・」

「わ、わかった。そっちで任務に使用したバスの修理代はこっちが出そう。そ、それで勘弁してくれ」

いつのまにか、皮膚の色が青くなりしょぼくれた表情になっていた。

「ええ。それならこちらも報告書に『事実』を記載できます。では、向うで我が傭兵団のトラックがあります。それで先に移動してください」

「あ、ああ・・・・・・」

そういって、重い足取りでトラックに向かうヴァリアージュ。

「団長、あれでいいんですか」

呆れた表情をヴァリアージュに向けつつアディが問いただしてきた。

「ああ。あれでいいのさ。あいつはこの界隈では大口の客だ。どこかで妥協しておかんとこっちの商売にも響く。それより遺体と装備を回収。動けない車両は操縦系を殺しておけ。燃料は抜き取っておけ」

『了解!』

数名の傭兵が、命令を受け即座に行動を開始した。

「まるで正規軍だな」

傭兵達の動きに関心する戸上。

「そういってもらえると嬉しいよ。さてと我々も移動しようか」

「そいつに異論はないな」

そういって、近くにあったジープに乗り込む二人。

「よし。各員、乗車したか!使用できない装備の破壊はすんだか」

「問題ありません団長!」

作業を統括した傭兵が報告してきた。

「よし。では、鉱山都市ウィンヒトラに向けて移動する。各車、警戒を厳にせよ!」

そして、仲間を救出した傭兵団は護衛対象を警護しつつ、目的地の鉱山都市ウィンヒトラに向けて移動を開始した。

先日、某MMORPGで懇意にしていただいているもとめ様より画像をいただきました。

もとめ様、画像ありがとうございます。

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