まもると山野さん。
山野さんと会う日、私は新しい日々を送ろうと決めていた。
「どうしたの? 考え事?」
「あ、 いや。 別に……大丈夫です」
「友達からって事だけど、 やっぱり君が気になって。 改めて僕とのこれからを考えてくれないかな?」
「え……。 はい……」
これでいいんだ。これで。
お店に入り、お酒を飲みながらそんな話をした。
水色のカクテルが、グラスの中で揺れている。シュワッと炭酸の効いたカクテルを一口飲んだ。
「気になる相手、 いるんでしょ? お友達から聞いたよ。 でもそいつには彼女いるんだよね? やめちゃいなよ。 どうにもならない」
強めのお酒をぐっと飲み干し、山野さんは私に言った。
「全くもって、 笑い話ですよね」
「そんな事ないけど……」
カウンターに並んで座り、お互いの顔を見つめた。
この人なら、私は楽しい毎日を遅れるかも知れない。悩まなくても、きにしなくてもいい。
まもるとは、単なる友達のままでいられる……。
だけどさっきからやたら気になるまもるの事。この人を利用しているの?私は。
「とにかくさ。 今度出かけようよ。 何処行きたい?」
「そうですね。 考えておきます」
かたんとグラスをカウンターに置いた。
「瑠花‼︎ 何やってるんだよ。 こんな所で」
突然店に誰かが入って来て、私達の後ろに立ったので、驚いて後ろを振り返った。
「まもる……? やだ。 何?」
肩で息を切ったまもるが、ぐっとカウンターの椅子を握った。
「行くなって言ったはずだけど? 何でこんな事するのかね」
「何言ってるの? しかも何でここに?」
「ちょっとね……。 で? この人が彼氏候補?」
じっと山野さんを見て言った。
少しびっくりしていた山野さんだが、至って冷静に 「僕が彼氏候補の山野です。 瑠花さんとは前向きに話をしているから、 邪魔しないで欲しいんだ」
「ふーん。 前向きねぇ。 瑠花はオレと付き合う予定だけど?」
「勝手な事言わないでよ‼︎ あんたとはそんな話してない」
「まぁひとまず出ようか」
店内で騒ぐ事もできないし、私達はひとまず店を出た。
近くの公園に場所を移し、再び話を再開した。
「瑠花はオレと付き合う予定だから、 悪いけど手を引いて下さい」
「瑠花ちゃんは前向きに考えてくれているよ? それに君は彼女がいるんだよね?」
「今は関係ない」
「いや、 それが肝心だから……」
話は平行線と言うか、まもるも山野さんもお互い引かない。どうしよう。
「瑠花はいいの? 当てつけにこいつと付き合うの?」
「当てつけじゃない!」
「そうとしか思えないけど?」
違うもん……。そんなんじゃない。
けれどそうは言い切れない自分もいる。
新しい恋は、まもるへの当てつけなの?
「まあ、 収集つかないからまたメールして」
そう言うと山野さんが公園を後にした。
「私も帰る……」
「瑠花‼︎」
「お願いだから、 私の中に入ってこないで……」
公園からの帰り道、ぼんやり考えた。
結局まもるを断ち切れない私は、山野さんを利用しようとしているんだ。
ポツポツ涙が地面に落ちて、後から後から流れ出す。
ぐっと拭えど涙はとまらない。
まもるを好きな自分。諦め切れないのに、だけどまもるには彼女がいる。
「何で二股なのよ」
はっきりしないまもるに苛立つ。せっかく諦めようとしたのに。
でも誰かを利用しようとした……。
山野さんとも付き合えない。勿論まもるとも友達以外あり得ない。
冬のまん丸お月様。青白く光る。
手を伸ばしても届く訳ないのに、手を伸ばした。
「まもるとは、 これからも友達だ」
月明かりの下、私は歩き出した。




