5話
昼休みになり拓哉と塁が教室にやって来た。
「おっ、やっぱ2人揃ってねぇとな」
拓哉が俺と蓮を見て言った。
俺は不機嫌な顔をしながら蓮に背を向けた。
「は?また喧嘩?」
塁が目を細めながら呆れ顔で言う。
「俺が女の子にモテモテなのが嫌みたい」
「違う」
間違いではないけど。
「じゃあ理由は?」
拓哉が椅子に座りながら俺と蓮を交互に見る。
「俺が嘘ついてるからでしょ?」
「今日から一緒に登校してんのになんで俺にまだ彼女いるって設定解除しねぇんだよ」
「そのままでよくない?」
「はあ!?」
「だって彼女いるって事にしとけば女どもが狙わなくなるし尚もその方が楽でしょ?」
「彼女いなくても誰も狙わねぇわ」
「…………は?本気?」
蓮のワントーン下がった声に寒気がした。
恐る恐る蓮を見てみると真顔で俺を見ている。
「なっ、なんだよ」
表情ひとつ変えず蓮が話し出す。
「尚って自分が何て言われてるか知ってる?姫だよ?可愛いとかお姫様とか言われてんの知らないでしょ」
「……姫?嘘だろ!?」
「俺らがどんだけ尚の事守ってきたと思ってんだよ」
姫ってなんだよ…俺、男だぞ。
「正しくは俺らではなく蓮だけな」
拓哉が呆れた顔で蓮を見る。
「俺が何人の女子から尚を守ってきたか」
「守るってなにしたんだよ」
「獲物を狙う猛獣からの告白とか?」
「告白?された事ねぇけど」
「そりゃそうだろ俺が毎回阻止してたんだから」
「………はあ!?」
全然しらなかった、いつどこでそんな事が?
「まさか告白されたいとか?」
ワントーン低い蓮の声、実は好きだったりする。
「尚は昔から見た目可愛いくせに性格荒いからギャップに萌え?みたいな女子が多いよね」
塁が俺を見て蓮に視線を移した。
「でもそれを言うなら蓮は見た目がイケメンクールなのにやさ男だから女子がコロッと落ちるんだよな」
蓮は昔から女子に頻繁に呼び出される。
告白されてるのも知ってるし告白現場を見た事もある。
その度に胸が苦しくて死にそうになる。
「とにかく尚には彼女がいる、わかった?」
「はいはい」
拓哉が返事をした。
「俺は納得できん」
「は?さっきの話聞いてた?」
俺の事なんかどうでもいい。
このままだったら蓮に女子が群がったままになる、そんなの俺は我慢できないし許さない。
「あのさぁ」
隣の席のクラスで1番うるさい奴に声をかけた。
「尚?」
不思議そうな顔で俺を見る蓮。
「実はコイツも彼女できた」
「えっ!マジ!王子にも彼女できたって!」
教室中から悲鳴や歓声が聞こえる。
王子に彼女ができてショックを受ける女子、王子に彼女ができてチャンスがきたと喜ぶ男子。
って王子?蓮って王子って呼ばれてんの!?
「お前らなんなわけ」
拓哉と塁が呆れた顔で俺たちを見る。
蓮に目を向けるとなぜか笑っている。
「まぁこれで落ち着くならいんじゃね?」
拓哉が塁の肩に手を置いて話す。
「そっそう言えば、お前らは?」
「ん?何が?」
拓哉が不思議そうな顔で俺を見た。
「す、好きなタイプ、とか?」
「………は?」
凍りつく空気。
好きなタイプくらい聞いてもいいだろよ!
「なんだよ急に」
拓哉が真顔で俺を見ている、重い…空気が重すぎる。
「尚って俺らと恋バナしたかったみたいで俺らの喧嘩原因も尚が恋バナしようか迷っててそれを俺が隠し事してるって勘違いしたからだったんだよな」
「そっそうそう!」
蓮のフォローに拓哉が納得したようだ。
「俺は自分をもってる強い人かな」
塁が天井を見ながら答えた。
塁の好きなタイプがそれなら拓哉にも可能性はある。
もっと具体的に聞くべきなのか?でも髪の長い女子とか言い出したらそれこそ地獄だよな。
ってそもそも拓哉は塁の事が好きなんだよな?
「俺トイレ行ってくるわ」
拓哉が教室を出たと同時に蓮が俺を見た気がした。
友達に好きなタイプを聞くのっていけない事なのか?塁に目を向けると塁は窓の外をボーっと眺めている。
「なんか……ごめん」
気まずさから謝る俺。
「謝る必要ないでしょ」
窓の外から視線を変えず塁が話す。
休憩時間が終わり塁も教室を出て行った。
「蓮……あのさ…」
「ん?」
「拓哉って好きな人いたりする?」
ジッと俺の目を見る蓮、もしかして蓮も気づいてる?
「えっ!一緒にいんのに知らないの!?」
隣の席のうるさい奴が話に入ってきた。
何が言いたいのか気になり隣の席に目を向ける。
「アイツ彼女いるじゃん」
……は?………彼女?
口をパクパクさせながら蓮の方を見る。
「知らないの尚だけじゃない」
衝撃的な事実に頭が追いつかない。
じゃあ昨日のキスは?俺の勘違い?もしかしてキスじゃなかった?でもあれは絶対にキスだった!
まっまさか二股!?最っっっ低!!!
「尚、怖い顔してるよ」
どんな顔して拓哉に会えばいんだよ!




