4話
「例えば?俺の唇は?」
「お前の唇?」
「ありかなしか」
この唇以外興味はない。
「あんまり気にして見た事ないからなぁ」
「じゃあ見てみて、触っていいよ」
フリーズしてしまった俺の手を取り蓮は自分の顔の近くまで俺の手を持って行った。
「はい、触って」
人差し指で蓮の唇にそっと触れる。
やわらかい…少し湿ったような質感…指先から感じる蓮の体温と指にかかる息で心臓が高鳴る。
「そんな触り方でわかんの?」
蓮の声が聞こえて目に視線を移す。
蓮は俺の事をジッと見ていた。
唇に視線を戻して指を少し動かしてみる。
指の動きに合わせて蓮の唇が微妙に動く、その動きに興奮している自分がいる。
唇の奥に進入してみたい。
他の部分にも触れたい。
欲望が俺を狂わそうとする。
「もっもう大丈夫……ありがっ」
蓮が急に唇を開けて俺の指を甘噛みした。
全身の血が沸く。
感じた事のない感覚に心臓は早く脈打ち頭がジンジンと痺れ始め息苦しくなる。
「れっ………蓮…やめろバーカ」
なんとか平然を装って声をかける。
意地悪く口角を上げた後、俺の指は解放された。
「どう?」
脳が勝手にあの感覚をリピート再生する。
「俺も触ってみていい?」
俺の返事も聞かずに蓮の指が俺の唇に触れる。
俺とは違って頬に手を置いて親指で唇に触れる。
こんな距離で見つめられたらと思いながら蓮に視線を向けると蓮は唇ではなく俺の目を見ていた。
締め付けられる心臓。
真剣な顔がイケメンすぎてムカつく。
俺は蓮にされたように甘噛みして蓮の驚く顔を見てやろうと思った。
でも俺の作戦は失敗した。
「んっ」
俺が口を開く前に蓮の指が進入してきた。
俺の舌に絡める指、何も考えられない。
「気持ちいい?」
蓮の声で耳までジンジンする。
俺だけがこんなに興奮してるなんて腹が立つ。
ブー…ブー…ブー…
俺の携帯が着信を知らせる。
その音を聞いて蓮は俺の顔から手を離した。
「拓哉からじゃん」
蓮が画面を見て通話を押した。
「俺、うん、大丈夫だった、うん、はいはい」
すぐに通話は終わった。
俺は放心状態のままだ。
「大丈夫だったか?だって」
「…うん」
「ふっ、大丈夫じゃないか」
蓮を睨む。
なんでコイツは平気そうなんだよ。
「親は?」
「金曜から出張」
「じゃあ泊まろうかな」
「えっ!」
「えっ?嫌?」
嫌じゃないけど今あんな事があってお泊まり!別に変な事考えてるわけじゃない……から。
「寝巻き貸してね」
「えっあっうん」
「後で拓哉と塁にも連絡入れとくわ」
別に残念とか思ってない。
18時過ぎに拓哉と塁が家に来た。
「お前ら仲良くなってよかったわ」
塁が目を細めて俺を見る。
拓哉は呆れたような顔で俺らを交互に見た。
晩御飯を食べ終わりゲームをする。
交代でシャワーを浴びながら用事を済ませた。
「明日も学校だしそろそろ寝るか」
拓哉の声かけでみんな布団に入る。
喧嘩の理由をどっちか聞いてくるかと思ったけど誰も聞いてこなくて正直助かった。
俺の隣は蓮、俺の向かいが塁でその隣が拓哉だ。
部屋の電気を暗めにして眠りにつく。
…ッ……チュッ…
しばらくして聞き慣れない音がした。
ネズミと一瞬焦ったが音の正体に体が硬直する。
たぶん拓哉が塁の真横に居る。
塁も起きてるのか拓哉だけ起きてるのかわからないけどたぶん拓哉が塁にキスをした。
薄目で蓮の方を見たが蓮は寝ている。
どうしたらいいかわからず動けないでいるとしばらくして拓哉は自分の布団に戻って行った。
拓哉は塁が好き?両思い?片思い?知ってはいけない事を知ってしまったような気がして朝まで眠れなかった。
チュンチュン…チュンチュン…
「おはよう」
拓哉と目が合い平然を装う。
みんなで朝食を食べて家を出る。
いつもと変わらないみんなに合わせていつものフリをする俺、寝不足のせいか頭がボーッとする。
学校に着くとなんで一緒に登校してるの?って女が蓮に群がる。
俺の蓮に話しかけんな。
拓哉の事で頭がいっぱいなはずなのに蓮の事には反応するらしい。
蓮に群れる女を見たくなくて蓮の嘘を訂正しようとしたが蓮に止められた。
意味がわからない。
「後で」
蓮が俺にだけ聞こえるように話す。
どいつもこいつも隠し事ばっかり。
蓮なんか俺に隠し事されたって怒ってたくせに。




