2話
翌日、家を出ると蓮が立っている。
「尚、おはよう」
「おはよう」
「じゃあ行こっか」
「おう」
拓哉と塁の家は少し距離があってしばらくは2人きり。
「昨日濡れたけど風邪とか大丈夫?」
蓮の人を気遣える優しいところとか本当に好きだな。
「俺は大丈夫だったけど蓮は?」
「俺は少し熱っぽいかな」
「…マジで」
蓮に風邪をひかすなんて昨日の俺を殴りたい。
「おでこ触ってみて」
蓮の額に手を置く、んー…熱い…のか?
「どんどん熱くなってない?」
蓮に言われるけど俺とあんまりってゆうか全然違わない?まさか俺も熱があるとか?
「尚が触れたから熱が上がってるのかもね」
「ぬっ!はくぬ!」
動揺しまくった俺は日本語とは言えない返事をしながら急いで手を離した、少し口角を上げながら悪い顔をした蓮、顔が赤くなる前に向きを変えて歩き出す。
「ごめんごめん!」
「うざい」
最近思う、この手のイタズラが多くなった気がする。
俺が照れるのが面白いのか?普通こうゆうイタズラって…そう言えば蓮って好きな奴とかいたりするのか?
もし蓮に彼女ができたら俺は蓮の傍に居られなくなる、蓮が何か言ってる気がするけどそれどころじゃない。
蓮の好きなタイプってなんだ!?
長髪?短髪?スレンダー?ナイスバディ?高身長?頭良い子?色白?性格明るい子?全然わからない。
「尚?」
無意識に蓮を見つめていた。
「あのさぁ」
「ん?なに?」
聞きたい…けど答え次第で俺は絶望するかもしれない、今絶望したら俺はきっと立ち上がれない。
「なんでもない」
「えっ!なに!気になるじゃん!」
「なんでもないって」
「……話して」
「俺にはまだ早い…絶対早い」
「全然意味わかんないから」
「わかんなくていい」
2人と合流するまでずっとグチグチ言われたけど今は絶対に言わない聞かない。
「なんでアイツ機嫌悪いわけ?」
拓哉が俺に尋ねる。
「知らん」
「いや知らないわけないじゃん」
塁が目を細めながら俺の嘘を指摘する。
「尚が隠し事した…俺に…意味わからん」
拓哉と塁の冷たい視線が刺さる。
「してないから」
「はい嘘」
俺を見る事もなく蓮が答える。
「なんか知らんけど言えよ」
拓哉が呆れた顔で俺を見る。
「なんもないから」
「もういい」
俺たちの方を見る事もなく蓮は先に教室に向かった。
本気で怒らせてしまったかもしれない。
ガラガラガラ…
遅れて教室に入ると蓮はクラスの女子たちと楽しそうに話をしている、なんかむかつく。
「お前マジやったな!」
クラスの男子が話しかけてきた。
「なにが?」
「彼女できたって?」
「……は?」
「だから今日から一緒に登校しなくなったんだろ?アイツは女子から人気あるから女どもが彼女の座狙ってさっきからすごいのよ」
なにがどうなってる?困惑した顔で蓮を見る、一瞬だけ俺を見たがすぐに目を逸らした。
「まぁお前も女子から人気あったけど彼女が出来たって聞いたら流石に諦めるわな」
蓮が何をしたいのか意味がわからない、なんで俺に彼女?今日から一緒に登校しない?俺が言わなかったからって勝手にやりすぎだろ。
訂正するのも面倒だからそのまま放置した。
休憩時間になる度にアイツの席には女子が群がる、それを俺の席から眺める拓哉と塁。
「意味わからん」
「お前のせいだろ」
拓哉に責められる、確かに隠し事に間違いはないけど言えない事だってあるだろ、しかも本人には聞きにくい事とか………あっそうか。
「アイツあの中だとタイプどの子?」
ナチュラルに聞けて良いチャンスだと気づいた。
「あの中?んー…どれも違うんじゃない?」
塁が目を細めながらつぶやいた。
「あんなに人数いるのに?」
「蓮はキャーキャーうるさい人好きじゃないでしょ、あそこにいる奴らみんなうるさいじゃん」
確かに蓮は陽キャが苦手だ。
「じゃあ、あの子みたいな感じは?」
「そうゆう系でもないでしょ」
真面目な感じの女子でもないらしい。
「じゃあっ」
「なんで俺らに聞くんだよ」
「えっ」
「本人に聞きゃ早いだろ」
「……まぁ」
「ってか俺らお前のタイプもしらんし」
拓哉の正論に何も言い返せない。
「ってゆうかお前らお似合いなんじゃね?」
ガタン…ガン…ガンガンガン…
急に立ち上がった事で椅子が倒れた。
塁が急に変な事を言うから、そんな付き合うとか…
「ビックリしすぎでこっちがビックリだわ」
塁に白い目で見られる。
何気なく蓮を見ると蓮も俺を見ていた。
キーンコーンカーンコーン…
放課後になってもアイツは話しかけてこなかった。
そんな事よりアイツは今日1日中ずっと女子と楽しそうに喋っていた。
なんだあの笑顔、本当にむかつく。
「散らかしてんじゃねぇよ」
「俺?別に散らかしてねぇだろ」
前の席の奴を誤解させてしまった。
「帰るか」
気づくと隣に塁が居た。
「拓哉は?」
「蓮に声かけに行った」
「俺先に帰るから今日は3人に帰って」
「おい」
塁の声を無視して教室を出た。
久々に1人で帰る道は静かで物悲しい。
「アイツ女子と話してる時…楽しそうだったな」
ベッドの上で膝を抱えて座る。
「俺と全然話してないけどアイツは平気なのかな…俺がいなくてもアイツは生きていけるのかな…ってかアイツの中にもう俺は存在していない?」
さっきから苦しくて息ができない。
見上げる天井が歪む、泣くとか俺ダサすぎだろ。
泣き疲れてそのまま寝てしまった。




