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感情が禁じられた世界で、私を殺した怪異となんだかんだで旅してます!  作者: ポルチーニアツオ
2章 静寂の楽園

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8/19

同じ夜の中で

第8話です。


今回は少し落ち着いた回になります。


食事を通してのやり取りや、何気ない会話の中で、

二人の距離がほんの少しだけ変わります。


まだ分からないことばかりですが、

それでも進んでいく時間を書きました。


ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 崩れた建物の奥で、湯気が静かに立ち上っていた。


 「よしっ!できた」


 短くそう言って、ヨルが器を置くと、優実はすかさず身を乗り出した。


 「え、ちょっと待って、これ……うどん?」


 「そう見えるならそうだ」


 「いや作れるんだ!?めっちゃ普通に!?」


 驚いたまま覗き込むと、湯気の向こうに透き通った出汁と、手打ちらしい少し不揃いな麺、その上には肉と卵が乗っていて、香りがふわっと鼻に届いて、思わず喉が鳴った。


 「食うのか  食わないのか  どっちなんだい!!」


 「食べる!!」


 力強い優実の返事の後、三人で器を囲む。こんな場所なのに、不思議とその光景だけはどこか普通で、少しだけ現実に戻ったような感覚があった。


 まずは優実が箸を取って、一口。


 「……うま」


 思わず漏れる心からの声。


 優しい味だった。派手じゃないのに、じんわりと体に染みてくるような温かさがある。


 「普通だ」


 ヨルはそう言いながらも少し照れた顔を隠すと、淡々と食べ始める。


 その隣で、貞美が静かに箸を持った。


 すっと背筋が伸び、無駄のない動きで麺を持ち上げ、音も立てずに口へ運ぶ。


 「え?」


 優実は思わず手を止めた。


 「ちょっと待って、なにその食べ方」


 貞美は一瞬だけ視線を向ける。


 「別に...普通」


 「いや普通じゃないでしょ!?育ち良すぎでしょ!?」


 ぴたり、と動きが止まる。


 「うるさい」


 それだけ言って、また箸を動かす。


 ――が。


 次の瞬間、空気が変わった。


 さっきまでの丁寧な所作のまま、速度だけが明らかにおかしく、二人を置き去りにするかのように、静かに、しかし異様な速さで食べ進めていく。


 「え、ちょ」


 優実が呆然とする間に、貞美は、すでに食べ終わっていた。


 箸を揃え、器を持ち上げると、無言で、すっと差し出す。


 「……」


 「え?」


 貞美の無言の訴えにポカンとする優実とヨル。


 「おかわりってこと?」


 ヨルが聞くと、食い気味に小さく、こくりと頷く。


 「いや早すぎでしょ!?」


 ぶつぶつ言いながらも、優実もまた箸を動かす。


 しばらくの間、静かな時間が部屋の中に流れ、湯気と、かすかな食器の音だけが響く。


 食べ終えたあと、軽く片付けを済ませる。水で流す音が小さく響き、やがてそれも止むと、空気は一気に静けさを取り戻した。


 「ご飯食べたら、なんか眠くなってきちゃった」


 「食ったらそうなるさ」


 そう言いながら、優実はその場にごろんと寝転がる。


 「なんかしたら許さないかんね!このブラッキンバード!」


 「何もしねえよ!後変な名前で呼ぶな」


 呆れたように返しながら、ヨルは壁にもたれる。


 そしてそのまま、片足を軽く上げ、もう片方で立ったまま目を閉じた。


 「ん?...え?」


 優実は目を丸くする。


 「いや何その寝方!?」


 返事はなく、ヨルはもう寝ていた。


 「早っ」


 呆れたように笑いながら、視線を横に向けと、貞美は、まだ起きていた。


 静かに座ったまま、こちらをどこか優しい目で見ている。


 少しの間と共に、言葉を選ぶようにして、優実が重い口を開く。


 「あのさ」


 優実に返事はないが、それでも続ける。


 「なんで、ああなったの」


 静かな空間に、その声だけが落ちる。


 「きっと沢山人、殺してたよね」


 貞美の表情は変わらない。


 「あのアプリって何?あの戦いの時に出てた井戸は?なんで……あんなこと」


 少しだけ間があく。


 「…わからない」


 短く、それだけだった。


 「は?」


 思わず声が漏れる。


 「いやいや、わからないって……」


 「そうしていた」


 それ以上は出てこない。


 「なにそれ」


 理解できないまま、言葉が詰まり一瞬の静けさの後


 「……一度......こっちに来たことがある」


貞美が話し出す


 「え?」


 優実が顔を上げる。


 「でも、わからないまま戻された」


 「戻されたって誰に?どこから?」


 「知らない」


 それだけだった。


 「ここは前にあなたといた場所とは、違う」


 断片だけが落ちてくるが繋がらない、理解もできない。


 それでも、確かに何かがある。


 「そっか」


 優実は小さく息を吐くと、少しだけ考えてから、もう一度口を開く。


 「私正直さ、今何も分かんないのよ、この世界も、あんたのことも」


 目を閉じて、言葉を探す。


 「でもさ」


 ゆっくりと視線を貞美に向ける。


 「こんなわけわかんないとこでさ、一緒にいるってことはさ、多分、意味あると思うんだよね」


 貞美は何も言わない。それでも、優実から視線は外さない。


 「だからさ」


 少しだけ笑う。


 「もし貞美も何もなくて私と同様に本当にわからなくて、困ってるなら、一緒に来てよ!私なりの支えくらいにはなるからさ!」


 言い切ったあと、少しだけ恥ずかしくなって目を逸らす。


 静かな時間が流れる。


 その時ほんのわずかに、貞美の瞳が、揺れた。


 ほんの一瞬だけ、光を取り戻すように。


 けれどすぐに、いつもの静けさへ戻る。


 「……別に」


 短く返して、少しだけ間を置く。


 「……ついて行く」


 それだけだった。でも、それでも、優実は少しだけ安心したように息を吐く。


 「そっか」


 それ以上は何も言わない、言わなくても、少しだけ分かった気がした。


 やがて、ゆっくりと体を横にする。


 「じゃ...おやすみ」


 返事はない、それでも、もうそれでよかった。


 目を閉じると、意識がゆっくり沈んでいく。


 外は、やけに静かだった。

今回も読んでくださりありがとうございます!!

次回からもどんどん話が進んでいきます!!


少しでもキャラみんなを好きになってくれたら嬉しいな〜

なんて!笑


それでは次回で会いましょう!



感想等、評価、ブックマーク等お待ちしております!!

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― 新着の感想 ―
主人公と同じくらい私も分からないことだらけなので明かされるのが楽しみです。 取り敢えず獣人?さん?が何者なんですかね。
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