貞美
今作を読んでいただきありがとうございます!
これからどんどん面白い作品にできるよう努力して行きますので是非楽しみに読んで頂けると嬉しいです!
薄暗い自室の空気が、重く淀んでいた。
はぁっ、はぁっ――
優実の荒く震える息だけが、狭い部屋の中でやけに大きく響く。
吐き出すたびに空気が濁っていくようで、耳の奥では自分の呼吸音と鼓動だけが異様に反響していた。
ガチャンッ!! ガチャンッ!!
本棚や物入れはひっくり返り、中身は床に散乱し、踏みつけられた物が鈍い音を立てる。その荒れ果てた光景だけで、優実がどれだけ取り乱していたかは一目で分かる。
「何で!!何で消えてくれないの!!このアプリ!!」
部屋の隅で、携帯を握りしめたまま画面を睨みつけていた。
手のひらは汗で濡れ、指は震え、視線は逃げ場を失ったようにそこへ縫い付けられている。
――“あと零日”
その文字を見た瞬間、喉がひゅっと鳴り、呼吸がうまくできなくなる。
「こんなの、おかしいって……!だって私は言われた通りにしたし、何で!!」
言葉を吐くたび胸が締め付けられ、ドクン、ドクン、と心臓の音がやけに大きく響く。それがまるで“終わり”を刻む音のように聞こえてしまい、優実は携帯をさらに強く握りしめた。
プツン――と、前触れもなく画面が落ちる。
「……え?」
一瞬、思考が止まる。
――来た。
「嫌……嫌、嫌ぁぁぁ!!」
崩れるようにその場に蹲り、携帯を胸に押し当てるように抱きしめながら、震える声で言葉を吐き出す。
「お願い……貞美様、許してください……ふざけて入れただけなんです、だから、だから……」
言葉がうまく繋がらず、歯が鳴り、視界が滲む。それでも止まれず、縋るように謝り続ける。
――ピコン。
携帯に電源が入り、画面が明るく光る。
「……っ」
息が詰まる。
「……嘘でしょ……」
次の瞬間、優実は携帯を床に叩きつけていた。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
何度も、何度も叩きつける。腕が壊れそうになるほど振り下ろし、爪が割れ皮が裂け血が滲んでも止められない。ただ“消えろ”という思いだけで叩き続ける。
「消えてよ!消えてよ!消えてよょ!!」
それでも、光は消えない。
ドクドクドクドク……と耳の奥で鳴る鼓動がどんどん速くなり、思考が押し潰されていく。
「やばい……やばいやばい……何とか、何とかしないと……」
その時だった
プルルル、プルルル。
部屋に響いた着信音に、優実の動きがぴたりと止まる。
震える手で、ゆっくりと画面を見る。
「……ともちゃん?」
表示された名前に、動揺を隠せないまま通話を取る。
「――まさみん!!」
ノイズ混じりの声が耳に飛び込む。
「ともちゃん?なんで」
「ねぇ、聞いて!!時間がないの」
ザーッ、と音が歪む。その奥で何かを引きずるような音が混ざる。
「そこにいるの……?」
「え?」
「ともちゃん、何言って――」
「違うの、これ……アプリじゃない!」
息が荒く、声が揺れる。
「“中”にいるのずっと……出られなくて」
ブツッ、と通話が切れる。
静寂。
――“中にいる”
その言葉だけが、異様に頭に残る。
意味を理解するより先に、背後に気配を感じた。
ゆっくりと振り返る。
――いた。
崩れた肌、折れ曲がった指、無数の傷。白い装束、床に届く黒髪。その奥から覗く目が、ギロリと優実を捉える。
「……貞美」
逃げられないと分かっているのに、それでも優実は叫び、飛びかかる。
「来ないでぇぇ!!」
指先が何かに触れるとソレをしっかりと、掴んだ。
長く冷たい髪が、ぬめるように絡みつき、振り払おうとしても離れない。
ボキィッ――と遅れて響く音。
それが何の音なのか分からないまま、同じ音が重なり、体のどこかが壊れていく感覚だけがじわじわと広がっていく。
「……ごめん、なさい」
淀んだ声が優実には聞こえてくる
それを最後に、優実の心臓は鼓動を止めた。
――優実は死んだ。
静まり返った部屋。
貞美はその死体を見下ろし、次の瞬間、優実の携帯へと溶けるように消えていく。
絡まったままの腕だけが残り、
気づけば――
部屋には何もなかった。
荒れた室内と、
ただ一つ、優実の携帯だけを残して。
画面が、ゆっくりと点灯する。
――“インストール完了”
読んでくださりありがとうございます!
第一話如何でしたでしょうか?
どこかで聞いたことあるような設定の貞美w
実に恐ろしい!!
ですが殺されてしまった優実はこのままで終わってしまうわけがありません!!
続きの話も是非読んでいただけたら嬉しいです!
少しでも気に入って頂けたらブックマークや評価、感想等々お待ちしております!!
ご愛読ありがとうございました!




